◆はじめに
さて、下のふたりの女性。どちらが若く見えますでしょうか?
資料(1)より引用
この若く見える、老けて見えるというのが、とても重要なんです。
今回は、見た目の年齢と寿命の関連や栄養などについて書いていこうと思います。
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◆きっかけはTwitter
Twitterで『美肌とビタミンC』の記事のリンクを貼っていると、窪田さんがリツイートしてくれました(ありがとうございます ^^)。
90代で元気な人は、見た目がやっぱり若い。
肌は健康のパロメーターなのかもしれませんね。
肌年齢と血管年齢も関係してるらしいですし。 https://t.co/3PNi48pSNV— KUBOTA@トレーニングを語るセラピスト (@19936524) September 22, 2017
窪田さんのコメントで、はじめて肌年齢と血管年齢が関係しているらしいということを知り、すこし調べてみることにしました。
◆見た目年齢が若いと長生きする
2009年に南デンマーク大学のKaare Christensen教授らがBMJに発表した論文があります(1)。この報告によると、「見た目年齢が老化の強力なバイオマーカー(指標)になる」と結論づけられています。
教授らは、デンマークに住む70歳以上の同性の双子1826人の顔写真の撮影をおこない、2001年から2008年まで経過を観察しました。
そして、握力などの身体機能やMMSEなどの認知機能検査、白血球のテロメアの長さ(老化の指標)などもあわせて評価しました。調査が終了したときには、675人(37%)の方が亡くなっていました。
教授らは、看護師20人(女性25~46歳)、若年男性10人(22~37歳)、高齢女性11人(70~87歳)に、双子の顔写真を見てもらい、年齢を推測してもらいました。もちろん、双子の年齢などは知りませんし、先入観を避けるため日を変えて写真を見せたりしています。
結果は、見た目年齢と死亡率には有意な相関が認められました。また、双子の実年齢が見た目年齢とかけ離れているほど、より年老いているほうが先に亡くなる可能性が高いこともわかりました。
これは年齢を推測した人の専門性や年齢、性別に関係なく、さらに双子の育った環境や身体・認知機能で補正しても、関連性は変わりませんでした。
さらに、身体機能や認知機能、テロメアの長さなども見た目年齢と相関がみられました。テロメアというのは、染色体の末端粒子のことで、若年者のほうが高齢者より長く、老化との関連が指摘されています。
つまり、見た目年齢が高いと身体機能や認知機能が悪化し、テロメアの長さも短くなっていました。
資料(1)より引用
さて、「はじめに」に出てきた写真です。どちらが若く見えますでしょうか?
もうお分かりだと思いますが、このふたりの女性は双子なのでどちらも同じ年齢(70歳)です。しかし、左の女性のほうが若く見えるのではないでしょうか?
実際、左側の女性の推測された年齢は57~69歳でした。たいして、老けてみる右側の女性は推定された年齢が70~78歳でした。この写真でいえば、右側の老けた女性のほうが死亡リスクが高いということになります。
ほかにも類似した報告があり、2012年には『顔から死亡率を予測する(Predicting mortality from human faces.)』という論文もあります。この報告によると、見た目年齢は客観的に評価された健康状態や認知能力以上に、高齢者の死亡リスクを予測する重要な因子になっていると結論されています(2)。
2015年には『死亡率は顔に刻まれる(Mortality is Written on the Face.)』という映画のタイトルみたいな論文も報告されていて、見た目年齢は髪の毛や服よりも全体的な顔の印象が重要であると結論されています(3)。
◆見た目年齢=肌年齢である
見た目年齢にかかわる因子は、髪の毛や服ではなさそうということが示唆されています(3)。
では、なにが見た目年齢に関わっているのでしょうか?それを導きだすヒントを見つけました。
2012年にI&S BBDOが資生堂と協力して、「お肌に対する意識調査」というインタビュー調査を実施しています。
内容は20~30代の男女に下のサンプル画像を見てもらい、何歳に見えるか訊くという単純なものです。
「Rakuten Infoseek News」より引用
結果は、肌の透明感が見た目年齢に強く関係していることがわかりました。
「いちばん左の透明感が高いサンプル画像(S)」と「いちばん右の透明感が低いサンプル画像(Q)」では、平均11歳もの差がつき、肌の透明感が低いと老けて見られました。
◆コラーゲンは肌にも血管にも必要
まあ、この調査は学術的なものではないので根拠としては弱いです。
しかし、実際に透明感が高いほうが若く見えるように思いますね。透明感が高いとはどういうことかといわれると定義は難しいのですが、若い人の肌を考えてみると美白であったり、湿潤があったり、弾力があったりということが考えられます。
月並みに言えば、プルンプルンな肌とでもいえましょうか(笑)
肌の構成成分として大きいのがコラーゲンですね(真皮の約70%)。コラーゲンは人間のからだを構成している全タンパク質の約30%を占めていて、肌だけでなく血管の成分としても重要なものです。
つまり、コラーゲンを中心に考えると「肌年齢が悪い=血管年齢が悪い」というのは、非常に理にかなった考えですよね。
この場合の血管年齢が悪いというのは、血管の弾力性が失われた状態、つまり動脈硬化ということですね。血管年齢が悪いと、血液の流れが悪くなることも予測されますし、また心血管や脳血管疾患を引き起こすことも考えれますよね。
すこしまとめます。
・見た目年齢が悪い(老けて見られる)人は死亡率が高い。
・見た目年齢に関わる因子は、肌年齢(肌の透明感)。
・肌年齢にはコラーゲンが関わっていると予測される。
・コラーゲンは血管にも重要なもので、肌年齢が悪い=血管年齢が悪い(動脈硬化)と予測できる。
◆コラーゲン(見た目年齢)に関わる栄養
コラーゲンにかかわる栄養について簡単に紹介していきます。
1.タンパク質
コラーゲンはタンパク質ですから、タンパク質の摂取不足は非常に問題になります。建築でいえば木材がないのと同じことになります。
コラーゲンに関わるタンパク質は、おもにグリシン・リシン・プロリンなどですね。リシンは必須アミノ酸(体内でつくれない)ですから、食事から摂取しなければなりません。
なるべく良質なタンパク質を摂るように心がけましょう。
2.糖質(AGE)
糖質を摂取すると、糖質とタンパク質の間で糖化という反応がおこります。糖化が起こるとタンパク質が劣化するだけでなく、AGE(Advanced Glycation End-products:終末糖化産物)がつくられます。
ちなみに糖尿病の血液検査指標として用いられるHbA1cは、この糖化の状態を見てるわけです。つまりHbA1cの値が高いというのは、糖化がたくさん起こっているというわけですね。
このAGEがコラーゲンを劣化させて、弾力性をなくすことがわかっています。つまり、肌は荒れてたるみ、血管は柔軟性がなくなり硬くなるということですね。
3.ビタミンC
ビタミンCはコラーゲンを合成するときに欠かせない栄養素です。
壊血病による点状出血:資料(4)より引用
ビタミンCが不足するとコラーゲンがつくれないため、肌や血管がボロボロになっていきます。これが悪化したのが「壊血病」になります(写真)。
ビタミンCは水溶性で、体内に貯蔵することができません。つまり、食事で定期的に摂取しなければなりません。偏った食事をしてる方は注意が必要ですね。
4.鉄
資料(5)より引用
上のイラストは、コラーゲンのつくられる過程をあらわしたものです。
鉄もコラーゲンを合成するときに欠かせない栄養素で、イラストにあるFeというのが鉄のことです。鉄が不足するとあの反応が起きなくなるわけですね。
女性の大半は鉄不足であることは、つねづね指摘してきました。女性が肌荒れで悩むのは鉄不足が影響しているかもしれませんね。なんせコラーゲンが合成できないのですから。
コラーゲンが整わない状態で、肌の上からクリームや液をつけてもあまり意味がないのは想像に難くないですね。
◆補足
もちろん栄養というのは、原因のほんの一部を紹介したにすぎません。若いときに活動的だったとか(紫外線を受ける量が多い)、ストレス、喫煙、睡眠なども関与していると思います。
いずれにせよ、見た目年齢は体内のコンディションを如実に反映している鏡ともいえます。体内のコンディションが良ければ若く見えて、コンディションが悪ければ老けてみるということですね。
医療の診察技術のなかには視診というものがあります。担当した患者さんの見た目年齢が実年齢よりたかく見える場合は、体内のコンディションが悪いのかもなぁと考えることもできますね。
【資料】
(1)Perceived age as clinically useful biomarker of ageing: cohort study.[PMID:20008378]
(2)Predicting mortality from human faces.[PMID:22753633]
(3)Mortality is Written on the Face.[PMID:26265730]
(4)Scurvy is still present in developed countries.[PMID:18459013]
(5)Chronic iron deficiency as an emerging risk factor for osteoporosis: a hypothesis.[PMID:25849944]
(6)長生きの統計学、川田浩志、2017、文響社
(7)老けたくないなら「AGE」を減らしなさい、牧田善二、ソフトバンク新書、2012
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