忙しい人のための要約
    ・日本人が論文撤回ランキングの上位を占めている。
    ・論文不正の温床を作っているのは緊縮政策。
    ・日本の科学力再興のために政府支出を増やすことが重要。

     

     

    ◆科学界では論文不正が問題視されている

    エビデンスが重視されるようになって久しいですが、科学界は根幹が揺らいでいます。

     

    論文の不正や捏造、研究自体の不備などによって、エビデンスが信頼に足るものではないのではないか?と多くの研究や調査から指摘されているからです。

     

    最近(2020年11月初旬)でも、まともな査読過程や編集過程を経ることなく、そのままオープンアクセスで出版する学術誌、いわゆるハゲタカジャーナルに『中国のある都市のCOVID-19拡大と、ポケモンのズバットを食べる事は関係ある』というデタラメ論文が掲載されるということがありました。

     

    また、そのデタラメ論文がほかの学術論文に引用されてしまうという事態にまで発展。。。くわしくはこの方が解説しているので、ぜひ読んでみてください。

     

     

    ◆日本人の論文不正は上位4割を占める

    科学界が心配している論文不正ですが、悲しいことに日本人が多いのです。

     

    論文監視サイト『Retraction Watch』に、研究者の論文撤回数ランキングがあります。それによれば、上位10人のうち4人が日本人なのです。つまり、上位4割を占めていると。

    論文 不正 ランキング サイト

     

     

    ◆有名学術誌『Nature』・『Science』も日本の研究不正に警鐘

    日本人の研究不正について、有名な学術誌もとり上げています。

    ・Nature『What universities can learn from one of science’s biggest frauds
    ・Science『Researcher at the center of an epic fraud remains an enigma to those who exposed him

     

    スポンサーリンク

     

    ◆論文不正の原因は緊縮政策

    日本で論文不正が行われる理由とはなんでしょうか。

     

    簡単にいえば緊縮政策であると思います。

     

    日本の科学競争力はどんどん低下しており、『Nature Index 2017 Japan』にて指摘されています。科学競争力衰退の原因として、政府の学術界への投資(政府支出)が少ないことを挙げています。

    日本政府の研究開発支出額は、世界で依然としてトップクラスであるものの、2001年以降ほぼ横ばいです。一方で、ドイツ、中国、韓国など他の国々は研究開発への支出を大幅に増やしています。この間に日本の政府は、大学が職員の給与に充てる補助金を削減しました。国立大学協会によると、その結果、各大学は長期雇用の職位数を減らし、研究者を短期契約で雇用する方向へと変化したのです。

     

    2004年、論文業績のカナメである国立大学法人が独立法人化されました。『国立大学の能力低下、法人化は失敗だったのか? NFIからの提言(10)「法人化」を言い訳にする残念な人々』によれば、学問の自由とお金、どっちを取りますか?といった選択だったようです。

    文部科学省も財務省も、真意はともかく、法人化を奨励した。その場合、大学の組織や人事については自由化し、大学の主体性を尊重する。これまで、予算は支出費目を指定されていたが、法人化後は使途を指定しない運営費交付金として付与する。ただし、大学自身で内部の効率化を図ることができるし、競争的研究資金を含め外部資金の導入も認められることから、運営費交付金に関しては毎年1%削減することとされた。

     

    まぁ、緊縮思想の常套手段に騙されてしまったという感じがしますね。

     

    学問の自由だの、主体性だの、効率化だの言ってますけど、要は運営交付金を減らしたいだけなんです。そこがスタートになって、もろもろは後づけしてるだけなんですよね。

     

     

    ◆学術界の不正は産業界の不正と類似した構造

    学問っていうのは地道な作業なわけです。また、思わぬところから偉大な発見が生まれるような側面がつよく、『選択と集中』なんてことは相容れぬしろものです。

     

    そこに「お金は削るぞ!経営や効率を考えろ!(短期的)成果は出せ!」と無理難題な圧力がかかるわけです。論文不正に手を出してしまうのは、必然的な側面があるといっても過言ではないかと思うわけです。

     

    環境構造を無視して無理難題を押しつけてきて不正に走るというのは、日本の大企業のコンプライアンス違反と似ている構造だなと思いました。

     

    山口周さんが『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』で、大企業がコンプライアンス違反に至る経緯を指摘しています。

    新しいビジョンや戦略を与えないままに、マジメで実直な人たちに高い目標値を課して達成し続けることを強く求めれば、行き着く先は一つしかありません。イカサマです。ー世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? P81ー

     

    産業界と学術界の不正(コンプライアンス違反)の類似構造をまとめます。

    産業界:緊縮(政府支出を減らしたい)→増税や政府支出の削減→デフレ(低成長)→貯蓄志向の上昇(紙幣価値の上昇)・消費量の低下→企業の目標達成困難(経営悪化)→粉飾決算・データ偽装などの不正(コンプライアンス違反)

    学術界:緊縮(政府支出を減らしたい)→国立大学法人が独立法人化など予算削減→研究資金の不足や短期的成果の重視→目標達成困難(業績悪化)→論文不正

     

    不正はダメです。注意しなければならないのは、不正をした人のせいだみたいに個人の責任に帰してしまうことです。個人の道徳心なんてものは脆弱です。易きに流されてしまうものです。

     

    ハンス・ロスリングさんの著書『ファクトフルネス』でも、犯人ではなく原因を探すことが大切であると指摘しています。

    物事がうまく行かないときに、責めるべき人やグループを捜してはいけない。誰かがわざと仕掛けなくても、悪いことは起きる。絡み合った複数の原因やシステムを理解することに力を注ぐべきだ。-ファクトフルネス P283-

     

    こういう苦しい構造を脱するためには、緊縮をやめて政府支出を増やし、学術にお金を注ぐ。これが最低限やらねばならないことです。

     

    財源はどうするか? そんなものは国債発行でいいんです。税金で集める必要なんてありません。税金は税源ではありませんから。

     

    日本の科学再興のために、政府は支出を増やしましょう。

     

    スポンサーリンク

     

    Pocket
    LINEで送る