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◆ミオスタチンとサルコペニア(筋肉減少)
ミオスタチンというのは、サルコペニア、つまり筋肉減少に関わっているタンパク質です(参照:サルコペニアの原因と確認のための指輪っかテスト)。
ミオスタチンの濃度が、加齢によるサルコペニア(筋肉減少)の指標になるのではないかという報告もあります(1)。
ミオスタチン(myostatin /別名 GDF-8 :Growth Differentiation Factor-8)とは1997年にMcPherronらによって発見された、TGF-βスーパーファミリに属する26kDaの糖タンパク質であり、筋肉増殖の負の制御因子としての機能を担っています。
ミオスタチンは主に骨格筋で合成され、骨格筋の増殖を抑制します。ミオスタチン発現レベルの低下は筋肉量の増加と体脂肪減少、ミオスタチン発現レベル上昇は、筋肉量の減少/消耗をもたらします。
ミオスタチンが増えると筋肉量が減り、ミオスタチンが減ると筋肉量が増える。つまり、このミオスタチンを減らすことができれば、筋肉量を増やしやすくなるのではないかということですね。
実際、動物実験ですけどもミオスタチンを研究した報告があります。
マウスにおいてミオスタチンの機能をブロックさせると、野生型のマウスとくらべて筋肉量が45~115%増える、また高脂肪食を摂取しても血糖値、体脂肪、インスリン感受性が維持されることが報告されています(2)。
ちなみに野生型のマウスは高脂肪食で、脂肪量がブロックしたマウスとくらべて170〜214%多く、耐糖能異常およびインスリン抵抗性を発症しました。
また、ミオスタチン遺伝子に生まれつき変異があるベルジアンブルーという品種の牛は、ミオスタチンが働かないため下の写真のようにムキムキになってしまうとのこと。
Wikipedia『Myostatin』より引用
ミオスタチンを減らすのは、筋肉を維持・増強するためにも重要であると思われます。そこで、ミオスタチンを減らす方法を調べてみました。
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◆ミオスタチンを減らす方法
1.運動(エクササイズ)
筋トレや有酸素運動をおこなうことで、ミオスタチンが減少したという報告があります。
・男性(18~45歳)に高強度の筋トレ(1RMの80%)を反復しておこなうと、ミオスタチンが20.3%減少、筋力が30%増加、筋肉量は12%増加(3)
・中年男性(平均53歳)に中等度の有酸素運動(最大酸素摂取量40~55%・6か月)をおこなったところ、血漿中のミオスタチン濃度が約20%低下、インスリン感受性が40%改善(4)
・ミオスタチンは有酸素運動後に減少し、ミオスタチンの減少は筋肉内の脂肪組織浸潤の減少と関連していた。ミオスタチンおよび筋肉内の脂肪組織の減少は、有酸素運動後の運動能力、筋のサイズおよび機能の増加と同時におこった(5)
筋トレ、有酸素運動がよいみたいですが、まだあまり多くの研究はされていないようです。
2.ビタミンD
ビタミンDもミオスタチンに関わっていそうです。筋細胞にビタミンDの処理をおこなうと、IGF-IIとフォリスタチンの発現が増加し、ミオスタチンの発現が減少しました(6)。フォリスタチンは、ミオスタチンの機能を阻害するのではないかと研究が進んでいるとのことです(→Wikipedia:Follistatin)。
ほかにも、以下のような報告がありました。
・ビタミンDはミオスタチンの発現を抑制する(7)
・若年者と高齢者を対象にしたRCTがあり、ビタミンD(1980IU)+カルシウム(800mg)とプラセボ+カルシウムを投与した。ビタミンDを与えた群では、高齢者のほうはミオスタチンの発現に差はなかったが、若年者では有意にミオスタチンの発現が減少した(8)
ビタミンDが筋肉増強に関わっているかもしれないということは、『ビタミンDと骨粗鬆症の骨折、転倒、筋力のエビデンス』に書きました。ミオスタチンの減少は筋肉増強が関わっているのかもしれませんが、まだエビデンスが少ないので、なんともいえませんといった感じです。
3.クレアチン
27人の若年男性を対象にした研究があります(9)。
対照群、筋トレ+プラセボ、筋トレ+クレアチンの3群にわけて、評価をおこないました。結果は筋トレはミオスタチンを減少させ、さらにクレアチンの群は有意にその減少が大きかったとのこと。理由としてはクレアチンが筋肉量を増やすためだろうとしています。
クレアチンの投与が、筋力の向上に役だつという報告がいくつかあります(10.11)。
また、今年(2018年)の8月になってでた国際スポーツ栄養学会(International Society Of Sports Nutrition:ISSN)の報告では、クレアチンは筋肥大とトレーニングのパフォーマンスを高めるサプリメントとして、エビデンスAの評価がなされています(12)。エビデンスAというのは、「効果を裏づける強いエビデンスがあり明らかに安全である(Strong Evidence to Support Efficacy and Apparently Safe)」と定義されています。
クレアチン投与→筋トレなど→筋肥大効果アップ(脂肪減少)→ミオスタチン低下といった感じなんでしょうか。
4.MYO‐X
『4 Keys to Muscle Growth』によると、MHP社がつくっているMYO‐Xというサプリメントが、ミオスタチンを減少させるとのこと。原典となる論文を探してみましたが、見つかりませんでした(笑)。まぁ、こういうのもあるということで。
◆まとめ
ミオスタチンを抑制・減少するためには、運動によって筋肉を増やす・脂肪を減らすというのが重要のようです。筋肉を減らす作用があるタンパク質には、筋肉を増やす(脂肪を減らす)ことで対抗するという感じでしょうか?
運動(筋トレや有酸素運動)にくわえてビタミンDやクレアチニンなどの栄養を投与して、効率的に筋肉を増やすという手もあるといった感じですかね。
【資料】
(1)Serum myostatin-immunoreactive protein is increased in 60-92 year old women and men with muscle wasting.[PMID:12474026]
(2)Transgenic expression of myostatin propeptide prevents diet-induced obesity and insulin resistance.[PMID:16182246]
(3)Resistance training alters plasma myostatin but not IGF-1 in healthy men.[PMID:15126711]
(4)Myostatin decreases with aerobic exercise and associates with insulin resistance.[PMID:20386333]
(5)Relationship between Intermuscular Adipose Tissue Infiltration and Myostatin before and after Aerobic Exercise Training.[PMID:29718700]
(6)1,25(OH)2vitamin D3 stimulates myogenic differentiation by inhibiting cell proliferation and modulating the expression of promyogenic growth factors and myostatin in C2C12 skeletal muscle cells.[PMID:21673099]
(7)Muscular effects of vitamin D in young athletes and non-athletes and in the elderly.[PMID:28222403]
(8)Does vitamin-D intake during resistance training improve the skeletal muscle hypertrophic and strength response in young and elderly men? – a randomized controlled trial.[PMID:26430465]
(9)Effects of oral creatine and resistance training on serum myostatin and GASP-1.[PMID:20026378]
(10)Creatine supplementation enhances isometric strength and body composition improvements following strength exercise training in older adults.[PMID:12560406]
(11)Effects of oral creatine supplementation on muscular strength and body composition.[PMID:10731009]
(12)ISSN exercise & sports nutrition review update: research & recommendations.[PMID:30068354]
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