忙しい人のための要約
    ・科学的好奇心が弱いと信念と異なるものに反発し偏向を強める。
    ・独善的な人は科学的好奇心が弱いのかもしれない。
    ・ミーハーが大切なのかも。

     

     

    ◆独善になる人の特徴とは

    「理学療法士は経験をもとに独善的になりやすい」なんていう話題を見聞きします。

     

    こういう独善的になりやすい人っていうのは、どういう特徴があるんでしょうか?

     

    2017年の興味ぶかい論文があります(1)。

     

    この論文によれば、独善的になりやすい人の特徴は「科学に対する好奇心(興味)の弱さ」でした。

     

    ざっと研究内容を紹介します。

    研究者たちは対象者の科学的好奇心を、バイアスをなるべく排除するためにマーケティング調査という体裁で調べました。科学的好奇心を調査したあと、対象者に気候変動といった科学的な内容が含まれる映像を見せて、好奇心が強い人と弱い人で、科学的な情報を得ようとする姿勢に違いがあるのかを研究したのです。

     

    結果は、
    ・科学的好奇心が高まるにつれて、対象者は気候変動リスクに対する評価が二極化するのではなく、むしろ一様に調整された。
    ・科学的好奇心の高い対象者は、驚くべき情報、すなわち、利用可能な最善の証拠の現状についての彼らの期待に反した情報を好む傾向が顕著であった。

     

    つまり、科学的好奇心が強い人は、ビデオの内容が自分の信念と異なっていても、新しい科学的情報を得ることを受けいれ、偏向が弱まっていきました。
    たいして、科学的好奇心が弱い人は、自分の信念と異なる新しい科学的情報に反発し、偏向を強めていきました。

     

    知的好奇心 長所 短所

     

    論文では以下のように書かれています。

    In this view, individuals who have an appetite to be surprised by scientific information—who find it pleasurable to discover that the world does not work as they expected—do not turn this feature of their personality off when they engage political information but rather indulge it in that setting as well, exposing themselves more readily to information that defies their expectations about facts on contested issues.
    The result is that these citizens, unlike their less curious counterparts, react more open mindedly and respond more uniformly across the political spectrum to the best available evidence.

    この見方では、科学的情報に驚かされる欲求を持っている人、つまり世界が期待どおりに動いていないことを発見するのが楽しいと思う人は、政治的な情報に触れるときに、この特徴を消してしまうのではなく、むしろそのような状況下でもその特徴を享受し、争点となっている事実についての自分の予想を覆すような情報に容易に触れることになる。
    その結果、これらの市民は、あまり好奇心がない相手とは異なり、よりオープンな心で反応し、政治的に入手可能な最善の証拠に対して、より均一に反応するようになったのである。

     

    これは政治的な事柄を対象にした研究ですが、少し飛躍的に解釈すると、経験に固執するあまり独善的になってしまう理学療法士は、科学的好奇心が弱いといえるのかもしれません。

     

    とくに職人や専門家(スペシャリスト)になればなるほど、変に固執してしまいがちな気がします。専門性って視野が狭くなる側面があるように思いますから。

     

    多くの専門家は、たとえ間違った結果を前にしても、自分の判断に本質的な欠陥があるとは決して認めない。一方で、予測が当たったら、それは完全に自分の実力であり、専門的な能力によって世界を解明できたと言う。(中略)勝利は完全な勝利で、負けはちょっと運が悪かっただけ。専門家はしょっちゅう間違えるのに、負け知らずだ。-RANGE P303-

     

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    ◆矢沢永吉から学ぶミーハーの重要さ

    先日、関ジャムという番組で矢沢永吉さんがインタビューを受けていました。

     

    矢沢さんは若く尖っていたときに、サディスティックミカバンドに憧れたとのこと。それを聞いて、古田新太さんが「ミーハーは悪いという考え方は捨てる」とコメントしていました。

     

    自分がよいと思うものを大切にすることが重要であるけれど、それに固執してしまい、新しいモノを受けいれられず、排除してしまうのはよろしくないんだなぁと再認識しました。

     

    矢沢さんが長らくファンに愛され、新しい音楽を発信できるのは、自分の音楽だけに固執するのではなく、良い意味でのミーハーさ(寛容さ・受容さ)があるからなのかもしれません。

     

    特定のモノに固執せず、ひとまず受け入れてみようというミーハーな気持ちが大切なのかもしれませんね。

     

    【参考文献】
    (1)Kahan, Dan M., et al. “Science curiosity and political information processing.” Political Psychology 38 (2017): 179-199.

     

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