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ALT・AST・MCV・LDHからビタミンB不足を確認しよう

忙しい人のための要約
血液検査のALT(GPT)・AST(GOT)からビタミンB6の不足を、MCVからビタミンB12・葉酸(ビタミンB9)の不足を、LDHからナイアシン(ビタミンB3)の不足を確認しましょう。

 

 

◆はじめに

ビタミンB群は、人体にとって必要不可欠な栄養素です。

 

とくに、エネルギーを産生するTCA回路には欠かせません。

逆にいえば、ビタミンB群が不足すると、TCA回路が回らなくなり、エネルギー不足になる可能性がたかいということです。

 

では、ビタミンB群が足りているのかどうか、どうすれば判断できるのでしょうか。血液検査からビタミンB群の不足を確認してみましょう。

 

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目次

◆基準値と理想値

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ALT・ASTの差が2以下が望ましいとされています。

※一般的な基準値とは異なっています。分子整合栄養医学を軸にした理想値ですので、目安程度にお考えください。

 

 

 

◆AST(GOT)・ALT(GPT)でビタミンB6を確認

1.ALTとASTの名称・役割

①名称

名称についてまとめておこうと思います。

 

・AST:aspartate amino transferase(アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ)

・GOT:glutamic oxaloacetic transaminase(グルタミン酸オキサロ酢酸トランスアミナーゼ)

・ALT:alanine amino transferase(アラニンアミノトランスフェラーゼ)

・GPT:glutamic pyruvic transaminase(グルタミン酸ピルビン酸トランスアミナーゼ)

 

 

従来は「GOT・GPT」が用いられていましたが、生化学者が「AST・ALT」に変更しました。

 

ALT・ASTのほうが国際的な標準になりつつあります。名前が異なるだけで、単位などもまったく同じです。

 

②役割:肝機能の指標

ALT(GPT)もAST(GOT)も、肝臓の細胞のなかにある酵素です。

 

肝臓が炎症などで破壊されると、血液中に漏れだしてきます(γ-GTPとおなじ逸脱酵素)。

 

ゆえに、ALT(GPT)とAST(GOT)は、一般的に肝機能の指標として用いられています。

 

 

2.ALT(GPT)について

ALT(GPT)は、L-アラニンのアミノ基を、α-ケトグルタル酸に転移させて、L-グルタミン酸とピルビン酸を産生するアミノ基転移酵素です。

 

 

 

ALTは、肝臓の細胞質に多くふくまれていて、ほかの臓器・組織にはすくないので、ASTより肝特異性が高くなっています。

 

つまり、ALT値がたかくなっている場合は、まず肝障害を疑うということですね。

 

ALTの半減期(血中の濃度が半分になる時間)は、41時間(40~50時間)と考えられていて、ASTより値がたかい場合は、慢性肝炎や過栄養性脂肪肝の可能性があります。

 

 

3.AST(GOT)について

AST(GOT)は、L-アスパラギン酸のアミノ基を、αーケトグルタル酸に転移させて、L-グルタミン酸とオキサロ酢酸を産生するアミノ基転移酵素です。

 

 

ASTはALTと異なり、肝臓だけでなく、心臓や腎臓・肺・脳・筋肉・赤血球などにもふくまれているため、肝特異性は低くなっています。

 

ASTの半減期(血中の濃度が半分になる時間)は、11~15時間と考えられていて、ALTより値がたかい場合は、肝硬変やアルコール性脂肪肝の可能性があります。

 

 

4.ビタミンB6について

ALT・ASTは、ビタミンB6を必要とするピリドキサルリン酸を補酵素とするので、ピリドキサルリン酸が欠乏すると、ALT・ASTは低値になります。

 

つまり、ビタミンB6が不足していると、ALT・ASTは値が低くなるということです。

 

【まとめ】

ALT・AST→ピリドキサルリン酸が必要

ピリドキサルリン酸→ビタミンB6が必要

AST・ALT→ビタミンB6の不足

 

 

実際に、65歳以上の高齢者765名を対象にした研究においても、ALTとピリドキシン欠乏との相関が報告されています(1)。

 

さて、ビタミンB6とは、ピリドキシンの誘導体の総称です(ほかにもピリドキサールとピリドキサミンも含む)。

 

ビタミンB6は、体のなかでリン酸化されて、タンパク質(アミノ酸)の代謝や神経伝達物質、グリコーゲン、ヘム、ステロイドなどの代謝にも関与しています。

とくに、重要な代謝であるアミノ基転移反応については、さきほど説明しました。

 

アミノ基転移反応は、TCA回路をしっかり回すためにも欠かせないものです。ビタミンB6が関係する代謝を取りあげると、以下のようになります。

 

 

ビタミンB6が不足すると、黄色い矢印の代謝がうまくいかないため、TCA回路が回らなくなるわけですね。

 

TCA回路が回らないということは、エネルギー源であるATPが作られないことになりますから、疲れやすくなったり不調が生じる可能性があります。

 

 

5.ALT・ASTのバランスから分析する

もうすこし、ALTとASTの検査結果について、細かくみていこうと思います。

 

① ALT(GPT)≒ AST(GOT)

数値が20~22程度で、両方の差が2以下のばあいが理想的です。

理想的な数値の場合、ビタミンB群がしっかりと摂れていると思われます(※ALT・ASTはビタミンB6の指標ですが、ビタミンB群の大半は個別にとることはないので、ビタミンB6が不足しているということは、ビタミンB全体が不足している可能性があるということで、ビタミンB群と表記しています)。

 

② AST(GOT)> ALT(GPT)

ビタミンB6が必要な酵素で、もっとも体内に多いのがASTです。

ですので、「理想値以下」・「ASTとALTの差が2以上あり、ASTのほうが多い」場合は、ビタミンB群(とくにB6)が不足している可能性が大といえます。

 

③ AST(GOT)< ALT(GPT)

「理想値以下」で、「ALTが高くなる」場合は、脂肪肝やウイルス性肝炎といった疾患がある可能性が高いといえます。理由としては、ALTは肝特異性が高いからですね。

 

 

 

◆MCVでビタミンB12・葉酸を確認

ALT・ASTでビタミンB群の低下が疑われたら、MCVを確認してみましょう。

 

MCVというのは、平均赤血球容積のことです。つまり、赤血球の大きさを計測したものです。

 

MCVの数値から、ビタミンB群の不足がわかりますが、その話をするまえに、MCVと貧血の分類についてまとめておきます。

 

1.MCVと貧血の分類

簡単にまとめると、以下のようになります。

 

 

貧血があることを前提として、MCVが80以下だと小球性貧血、80~100だと正常性貧血、100以上だと大球性貧血になります。

 

このなかでビタミンB群が関わってくるのが、大球性貧血になります。大球性貧血のなかの巨赤芽急性貧血は、ビタミンB12と葉酸(ビタミンB9)の不足でおこります。

 

ちなみに、アルコール依存症での巨赤芽球性貧血を予測する報告があります(2)。それによれば、以下のようになっています。

 

MCVが100以上:感度66、特異度68、LR +2.0、LR -0.5

MCVが110以上:感度27、特異度98、LR+11、LR-0.8

 

MCVが110以上あると、高確率で巨赤芽球性貧血であるということですね。

 

巨赤芽球性貧血(Wikipedia)より引用

 

 

2.ビタミンB12

 

①ビタミンB12(コバラミン)とは

ビタミンB12は、分子内にコバルトをふくむ特殊な化合物で、コバラミンともよばれています。

 

ビタミンB12の主な作用は、タンパク質の合成とDNA(核酸)の合成です。

 

したがって、どちらかが不足しても、DNAの合成が阻害されます。DNAの合成が阻害されるということは、細胞分裂ができなくなるということです。

 

分裂できなくなった結果、おおきな赤血球がみられるようになるわけですね。その結果として、MCV(赤血球の容積)が大きくなるわけです。

 

 

②ビタミンB12とピロリ菌の関係

とある報告によると、66歳以上の15%にビタミンB12の不足が認められているとのことです(3)。

 

高齢者のビタミンB12吸収不良は、胃の萎縮(萎縮性胃炎)によるものと考えられていて、その萎縮はピロリ菌が原因であるといわれています。

 

 

実際、ピロリ菌感染患者のビタミンB12濃度は、非感染患者よりも有意に低かったという報告もあります(4)。

 

そのほかピロリ菌については、以前まとめましたので、そちらの記事を参照にしてください。

 

 

 

 

3.葉酸

巨赤芽球性貧血患者の95%は、さきほどのビタミンB12または葉酸の欠乏が原因であるといわれています。

 

葉酸もビタミンB群の仲間で、ビタミンB9です。しかし、ビタミンB9と呼ばれることはほぼありません。

 

葉酸は、ホウレンソウなどの緑黄色野菜におおくふくまれており、ラテン語のホウレンソウ(folium)から葉酸(folic acid)と名づけられました。

 

さて、葉酸もビタミンB12とおなじく、不足すると核酸の合成ができなくなりますので、MCVが高くなります。

 

 

4.MCVは鉄欠乏で理想値になる

MCVと貧血の分類を見てください。もし、ビタミンB群と鉄欠乏があった場合は、どうなるでしょうか?

 

大と小のあいだ、つまり正常になってしまう可能性があるのです。女性の鉄欠乏が多いことは、以前にも記事でも紹介しました。

 

 

つまり、鉄欠乏があるとビタミンB群が不足していても、MCVが正常値に見えてしまう可能性があります。ゆえに、ほかの検査項目もふくめて、総合的に判断する必要があります。

 

 

5.まとめ

まとめておきますと、ビタミンB群(B12・葉酸)が不足すると、細胞分裂がおこなわれなくなり、巨大な赤血球があらわれます。それを確認するにはMCVの値をみるのがよいということですね。

 

そして、このMCVが高値になっているということは、ビタミンB群の不足が疑われるということです。

 

しかし、鉄欠乏があると、MCVが正常値にあるように見えてしまうので、注意が必要です。

 

 

 

◆LDH(LD)でナイアシンを確認

1.LDH・ナイアシンとは

LDH(LD)というのは、lacate dehydrogenaseの略で、乳酸脱水素酵素または乳酸デヒドロゲナーゼなどと訳されています。

 

LDHは、TCA回路にはいる直前の代謝産物である、ピルビン酸と乳酸の変換をおこなう酵素です。

 

 

このLDHには、ナイアシン(ビタミンB3)が必要です。ナイアシンというのは、ニコチンアミドとニコチン酸の総称です。

 

つまり、LDHが低値になるということは、ナイアシンの欠乏の可能性が疑われるということですね。

 

ちなみにニコチン酸は、タバコのニコチンとはまったく別物です。混同しないために、「ナイアシン」という呼び方をしています。

 

さて、ナイアシンは、ビタミンB6とおなじように、TCA回路をまわすために、必要不可欠な栄養素でもあります。

 

 

ナイアシンが不足すると、黄色い矢印の代謝がうまくいかないため、TCA回路が回らなくなるわけですね。

 

 

2.ナイアシン欠乏の症状

ナイアシンが欠乏すると、LDHが少なくなって、乳酸を分解することができなくなり、結果として乳酸がたまります。

 

ピルビン酸と乳酸については「乳酸は疲労の原因ではないの嘘」に、くわしく書いてありますが、乳酸は間接的に疲労の原因になる可能性があります。

疲れやすい人は、とくに注目してみてもいいかもしれません。

 

LDHの基準値は90~280IU/l と幅広いのですが、200代前半でも疲れやすくなり、140以下になるとナイアシンの欠乏が深刻であるともいわれています。

 

ナイアシンが欠乏すると、ペラグラという病気になります。ペラグラは「荒れた皮膚」を意味するイタリア語で、激しい皮膚炎、慢性の下痢、さらには脳障害から認知症にいたる病です。くわしくは「ビタミンの歴史~五大欠乏症~」に書いています。

 

LDHをみるときの注意としては、LDHは肝疾患・胆膵疾患・心疾患・肺疾患・腎疾患・筋疾患・感染症・悪性腫瘍など、多くの病気で上昇します。LDHが高いといっても、他の疾患による可能性があることを、心にとどめておく必要があります。

 

 

 

◆目安程度にとらえましょう

ALT・ASTについては、肝機能の低下があったりすると、ビタミンBの指標としては、不適になります。

 

また、MCVについても、鉄欠乏などで正確な指標にならない場合もあり、LDHも同様です。

 

目安程度に考えておくのが大切だとおもいます。

 

 

【資料】

(1)Low Alanine Aminotransferase Levels in the Elderly: Frailty, Disability, Sarcopenia and Reduced Survival.[PMID:28633440

(2)Anemia in alcoholics.[PMID:3747828]

(3)Clinical aspects of cobalamin deficiency in elderly patients. Epidemiology, causes, clinical manifestations, and treatment with special focus on oral cobalamin therapy.[PMID:17822656]

(4)Helicobacter pylori, a causative agent of vitamin B12 deficiency.[PMID:19745500]

(5)生化学辞典第4版、今堀和友ら監修、東京化学同人、2007

(6)検査の参考書、中京東部医師会、2007

(7)からだの検査数値、高久史麿監修、ニュートンプレス、2014

(8)最新臨床検査のABC、橋本信也監修・編集、日本医師会、2006

(9)医師が選択した驚異の『栄養療法』、溝口徹、文芸社、2001

(10)心療内科に行く前に食事を変えなさい、姫野友美、青春出版社、2010

 

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