◆はじめに
腰痛を生じたときに、安静にするのは百害あって一利なしというのは、周知の事実であると思います。
安静にしていると、痛みの改善や職場復帰が遅延するという報告もあります。
しかし、なぜ安静にしていても腰痛は改善しないのでしょうか?
今回は、ひとつの仮説を紹介したいと思います。
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◆安静による椎間板の変化
ベッド上で安静にしていると、浸透圧の変動により、椎間板に水分が流入することがわかっています(1)。
また、32時間をこえてベッド上で安静にしていると、脊柱に長さが増加しているという報告もあります(2)。
つまり、安静により椎間板に水分が流入し、脊柱の長さが増加するということですね。
負荷がかからない安静臥床と同じような状況といえば、宇宙飛行士ですね。
長期間にわたる宇宙旅行(無重力状態=負荷のない状態)の後には、椎骨内のミネラルが増加することが分かっています。ちなみに、ほかの骨のミネラルは低下していました(3)。
これは、さきほどの椎間板の水分流入が関係していると考えられます。つまり、椎間板の水分流入による脊椎への高い負荷による刺激が、骨形成を促していると考えられます。
まとめると、
腰痛発症
→ベッド上安静
→椎間板への水分流入(脊柱の長さ増加)
→骨への負荷(刺激)が増加
→骨形成促進(ミネラルの増加)
→刺激を介在しての痛み?
ということですね。
まあ、骨への負荷が直接的に腰痛にどのように関係しているかはわかりませんが、なにかしらの影響はあると思われます。
もちろん、それだけではなく、筋肉の循環不良や活動量減少による筋肉の硬化なども、関与している可能性があるとも思います。
◆安静はメリットなし、動くことが回復を促進
コクラン・レビューでは、「急性・亜急性の非特異的腰痛は、ベッドで安静しているよりも活動性を維持したほうがよく、激痛で動けなくても(安静臥床を強いられても)、できるだけはやく普段通りの生活へ戻しましょう」と結論づけています(4・5)
コクラン・レビューというのは、医学論文のシステマティック・レビューをおこなうコクラン共同計画(国際的団体)が作成している、質の高いシステマティック・ レビューです。
つまり、信頼性が高いエビデンスということですね。
安静は廃用症候群も引きおこしますし、気をつけたいところですね。
【関連記事】
ダラススタディ(DBRTS)によれば、3週間の安静は40年分の加齢に匹敵するかもしれません。安静によるメリットはないという報告もあります。なるべく活動量を増やし、廃用を予防することが重要です。
【資料】
(1)Studies of spinal shrinkage to evaluate low-back loading in the workplace.[PMID:8851075]
(2)Changes in spine height throughout 32 hours of bedrest.[PMID:8857889]
(3)The state of human bone tissue during space flight.[PMID:11537114]
(4)Advice to stay active as a single treatment for low back pain and sciatica.[PMID:12076492]
(5)Bed rest for acute low-back pain and sciatica.[PMID:15495012]
(6)腰痛、小山貴之ら監訳、ナップ、2017
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