忙しい人のための要約
    顔を見て名前をあてるのは当てずっぽうよりも正答率が高いことが報告されています。名前が容姿に影響しているのは文化や心理的なものが関わっているかもしれません。ハリケーンの名前が女性だと死者が増えることも報告されており、名前は予想以上に影響があるのかもしれません。

     

     

    ◆名前と容姿についての報告

    2017年のZwebnerらの興味ぶかい報告があります(1)。名前と容姿の関係についてのもので、紹介していきましょう。

     

    1.顔を見ると名前がわかる

    資料(1)より引用

     

    上の写真は実験で用いられたものです。被験者に写真を見せて、この人の名前は4つ(ヤコブ・ダン・ヨセフ・ネタネル)のどれでしょう? という問題をだします。

     

    適当に答えた場合、当たる確率は1/4(25%)になります。結果としては、偶然をこえて約30%の正答率があったとのこと。

     

     

    2.文化が影響している?

    この報告では、外国人の場合にも同様の結果が得られるのかを検討しています。つまり、フランス人がイスラエル人の写真と名前をみてもわかるのか? その逆もまたしかりです。

     

    資料(1)参照作成

     

    結果としては、外国人の写真と名前は正答率は偶然を下まわりました。つまり、文化が影響している可能性があるということですね。

     

    そりゃそうでしょうと思います。たとえば、中国人やアメリカ人の写真を見せられて、この人の名前はなんでしょう? と訊かれてもわかりませんよね。フランス人とかイスラエル人になるとほんとにわかりません。

     

     

    3.コンピュータも名前がわかるよう

    この報告では、さらにコンピュータに94000枚の画像データを学習させ、おなじように写真から名前がわかるか実験しました。

     

    さきほどと異なるのは、コンピュータの場合は2択になっているということです。つまり、偶然の場合の正答率は1/2(50%)になります。

     

    さて、結果は59%という正答率を出しました。つまり、偶然よりも高い確率で正しい答えを選んだということですね。

     

    資料(1)より引用

     

    さらにコンピュータで分析したところ、コンピュータが選択するさいに重要な因子だったのは、口と目であることがわかりました。口と目というのは、笑顔をしめしたり、社会的にも重要な部分ですから、そういうのも関係していそうですね(参考:知ってはいけない!?論文から導く笑顔のストレス軽減の効果)。

     

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    ◆自己成就予言(ラベリング)の影響

    名前と容姿が関連しているというのは、なかなかおもしろいですよね。これは自己成就予言といったものが関わっているのかもしれません。

     

    自己成就予言というのは、根拠のない予言(=噂や思い込み)であっても、人々がその予言を信じて行動することによって、結果として予言通りの現実がつくられるという現象のことです。自己成就予言の一種に、ラベリングというものがあります。以下『思考のトラップ』より引用します。

     

    社会心理学で言うラベリングは自己成就予言の一種であり、こういう人間だと他者から見なされる(ラベルを貼られる)ことで、人はその期待に沿った行動をとるようになることを示している。

    『思考のトラップ』P346

     

    たとえば、武(たけし)と洋一(よういち)という男性の人がいたとします。武のほうがなんとなく男らしい感じがしませんでしょうか。すると、武は周りからそういう目で見られることが増えて、その期待(男らしさ)に応えようとするかもしれません。

     

     

    ◆ラベリングとハリケーンの死者数の関係

    そんなもん関係ねぇよと思う人もいるでしょう。しかし、ラベリングにかんして非常に興味深い報告があります。

     

    メリカでは、ハリケーンに人の名前をつけます。べつにハリケーンの強さに応じて名前が決められるわけではなく、いかなる名前であろうと、それによってハリケーンの威力に差が生じることはありません。

     

    しかし、実際は女性の名前がついているハリケーンのほうが多くの死傷者を出すことがわかっています(2)。

     

    資料(2)参照作成

     

    論文から引用しましょう。

     

    For example, a hurricane with a relatively masculine name (MFI = 3) is estimated to cause 15.15 deaths, whereas a hurricane with a relatively feminine name (MFI = 9) is estimated to cause 41.84 deaths.

    In other words, our model suggests that changing a severe hurricane’s name from Charley (MFI = 2.889, 14.87 deaths) to Eloise (MFI = 8.944, 41.45 deaths) could nearly triple its death toll.

     

    意訳すると、『たとえば、比較的男性的な名前(MFI=3)を持つハリケーンは15.15人の死亡を引き起こすと推定され、比較的女性的な名前(MFI=9)を持つハリケーンは41.84人の死亡を引き起こすと推定されます。

    言い換えれば、このモデルでは、ハリケーンの重大な名前をCharley(MFI=2.889、14.87死亡)からEloise(MFI=8.944、41.45死亡)に変更すると、その死者数がほぼ3倍になる可能性があります』

     

    こんなことがなぜ起こるのか?

     

    理由は単純で、女性の名前だと「優しい」感じがして、危険性を低く見積もってしまい、ハリケーンへの対策を怠ってしまうからです。

     

    たかが名前、されど名前なんですね。

     

    【資料】

    (1)We look like our names: The manifestation of name stereotypes in facial appearance.[PMID:28240942]

    (2)Female hurricanes are deadlier than male hurricanes.[PMID:24889620]

    (3)思考のトラップ、デイヴィッド・マクレイニー、二見書房、2014

    (4)ココロの盲点 完全版、池谷裕二、講談社、2016

     

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