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◆プロローグ
太郎くんがおばあちゃんの立ちあがりを手伝っています。
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◆立ちあがりに必要な2つのコツ
立ちあがりに必要なことはいろいろあります。
筋力も必要ですし、バイオメカニクスを考慮することも重要です。全部を書くことはできませんので、今回はふたつ取りあげたいと思います。
それは、骨盤前傾(股関節屈曲)と目線です。
◆骨盤前傾で重心を前方移動させる
立ちあがりを誘導するさいに、太郎くんのように「お辞儀するように」という説明をする人もいると思います。
立ちあがりは、重心を前方に移すことからはじまります。ですから、お辞儀するようにというのは理にかなっていると思います。
しかし、「お辞儀するように」だけだと、脊柱(胸腰椎移行部)だけ屈曲してしまう患者さんがいます。とくに高齢者では、そういう人が多い印象です。
それだと、重心は後方に残ったままなので、なかなか立ちあがることができません。
重心を前方に移すには、骨盤を後傾から前傾へ変えていく必要があります。
つまり、脊柱を曲げるのではなく、骨盤前傾(股関節屈曲)というお辞儀を教育する必要があるのです。
◆復習「対称性緊張性頚反射」
医療系の職に就かれている方なら、「対称性緊張性頚反射」を知っているとおもいます。
聞いたことあるけど、どんな反射?って訊かれると、うやむやという人もいるのではないでしょうか?このあと必要になってくる知識ですので、さきに復習をしておきます。
対称性緊張性頚反射(以下STNR:symmetric(-al) tonic neck reflex)とは、新生児期以降にみられる原始反射のひとつです。
原始反射というのは、特定の刺激にたいして決まったパターンの反応をしめすものです。赤ちゃんのように、中枢神経系が未熟なときにみられます。STNR は生後4~6か月で出現し、8~12か月で統合(消失)されます。
反応は以下のようになります。
反応としては、頚の屈曲時に、上肢で屈曲優位・下肢で伸展優位になります。逆に頚を伸展すると、上肢で伸展優位・下肢で屈曲優位になります。
◆立ちあがるときは視線に注意する
立ちあがろうとするとき、「前をむいて」や「上をむいて」と声かけする人もいるかもしれません。
「前をむく」・「上をむく」というのは、頚部を伸展させる動作になります。
さきほどのSTNRを見てみましょう。
頚部を伸展すると、右側の上肢伸展・下肢屈曲の動作が誘導されることになります。
この反応を出さないようにするために、大脳皮質から中脳や脳幹へSTNRを抑制する信号をだす必要があります。わたしたちは、この抑制信号があるため、反応がでないようになっているわけです。
しかし、リハビリテーションの対象になっている患者さんでは、これはわずらわしいものです。視線別に検証してみてみましょう。
①視線を上にむけた状態
視線を上にむけた状態だと、STNRにより下肢が屈曲方向へ誘導されます。
つまり、立ちあがるために必要な下肢伸展とは逆の動きが誘導されてしまうわけですね。これは、患者さんに無用な力を強いることになりますし、非効率的な動作を学習してしまう可能性があります。
②視線を下にむけた状態
では、視線を下にむけるとどうなるでしょうか?
視線を下にむけると、STNRにより下肢は伸展方向に誘導されます。
つまり、立ちあがるために必要な下肢伸展を誘導することになるわけですね。
こちらのほうが患者さんは楽に立ち上がれる可能性が高まりますよね。
◆STNRを利用して楽に立ちあがろう
人間は視覚に頼っていきています。立ちあがるときも、頚部を伸展させ、前を見ようとします。それは安心感を得るためなのかもしれません。
しかし、その安心感と引きかえにして、非効率で、楽ではない動作をしている可能性があります。
顔を上方にむけるのをやめてみるのも、ひとつの策です。
視線が下方(頭部正中~軽度屈曲)になるようにしましょう。
そうすると下肢は伸展方向に誘導され、STNRを抑制するという余計なひと手間がなくなります。
ぜひ、参考にしてもらえたらと思います。
【資料】
(1)アウェアネス介助論(下巻)、澤口裕二、シーニュ、2011
(2)介助にいかすバイオメカニクス、勝平純司ら、医学書院、2011
(3)こどもの理学療法第2版、千住秀明監修、神陵文庫、2007
(4)基礎運動学第4版、中村隆一ら著、医歯薬出版株式会社、2003
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