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私は音楽を聴くと鳥肌がたちます。
気にもしなかったのですが、実は音楽で鳥肌がたつというのは、脳の構造が大きく影響しているようなのです。
今回はそんなことも含めて、音楽の効果について紹介したいと思います。
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◆音楽で鳥肌が立つのは脳の構造による!?
2016年のSachsらの報告によると、音楽で鳥肌がたつというのは、脳の構造の違いが影響しているとのこと(1)。
Sachsらは、学生20人を鳥肌が立つ10人と音楽では鳥肌がたたない10人のグループにわけ、自分のお気にいり曲を研究室に持ちこんでもらいました。
そして、音楽を聴いているときの脳の状態をMRIで調べて、それぞれのグループで音楽を聴いたときの脳の状態を分析しました。
Sachsらは以下のように報告しています(下線は筆者による)。
Results from diffusion tensor imaging show that white matter connectivity between auditory perceptual regions (pSTG) and regions of the brain important for emotional and social processing (aIns, mPFC) reflect individual differences in the tendency to experience chills from music.(中略)
Furthermore the volume of white matter connectivity was significantly correlated with a participant’s tendency to experience chills: the more frequently a person reports experiencing chills, the larger the volume of white matter connectivity among these three regions of the brain.
聴覚知覚領域(pSTG)と感情的および社会的処理(aIns、mPFC)にとって重要な脳の領域との間の白質の接続性が、音楽からの鳥肌を経験する傾向の個人差を反映することを示している。(中略)
さらに、白質のつながりの量は、参加者の鳥肌を経験する傾向と有意に相関していた。人が鳥肌を感じる頻度が高いほど、脳のこれらの3つの領域間の白質結合の量が大きくなる。
『Brain connectivity reflects human aesthetic responses to music.』
つまり、音楽で鳥肌が立つ人は、脳における聴覚領域と感情・社会的領域の繊維のつながりが多いということですね。ちなみにこれが先天的なものなのか後天的なものなのかは不明とのことです。
◆鳥肌がたつの意味も変えたほうがよい?
そもそも「鳥肌がたつ」や「粟立つ」というのは、寒さや恐怖などによって、皮膚の筋肉(立毛筋)が収縮していることを指しています。
厳密にいえば、感動によって鳥肌が立つというのは誤用なんですね。
しかし、さきほどの論文で示されているように、鳥肌は審美的反応として起こることが判明していますので、誤用ともいえないような気がします。
ぜひ、今後は寒さや恐怖のあとに「美」もつけ加えてほしいものです。
◆音楽の力はすごい
2017年に出たコクランレビューでは、アルツハイマー病をのぞく後天性脳損傷(外傷や脳卒中など)のリハビリテーションにおける音楽療法の効果を報告しています(2)。
ちなみに、音楽の介入は以下のようなものがあります。
Specific treatments may include using rhythm to aid movement and walking; playing music instruments to improve movement; singing to improve speaking and voice quality; listening to music to improve pain management, mood, or thinking; and playing and composing music to improve a sense of well-being.
具体的な音楽療法には、動きと歩行を助けるためにリズムを使用すること、動きを改善するために楽器を演奏する、話すことや声の質を向上させる歌唱、痛みの管理、気分、または思考を改善するための音楽鑑賞、幸福感を向上させるための演奏や作曲などがある。
『Music interventions for acquired brain injury.』
775人の参加者をふくむ29件の研究から、以下のような効果が認められました。
・歩行速度の改善(11.34m/分の増加)
・障害側の歩幅の改善(0.12m)
・動的歩行指数(Dynamic Gait Index)の改善
・歩数の増加(10.77歩/分の増加)
・Wolf Motor Function Testにおける腕の動作速度の改善
・失語の回復度合いが向上
・QOLの改善
報告の結論としては、以下のように書かれています。
Music interventions may be beneficial for gait, the timing of upper extremity function, communication outcomes, and quality of life after stroke. These results are encouraging, but more high-quality randomised controlled trials are needed on all outcomes before recommendations can be made for clinical practice.
音楽介入は、歩行、上肢機能のタイミング、コミュニケーションの成果、脳卒中後の生活の質に有益であり得る。 これらの結果は奨励されていますが、臨床実践のための勧告が出される前に、すべての成果に対してより質の高いランダム化比較試験が必要です。
『Music interventions for acquired brain injury.』
まだ発展途上というところでしょうか。
◆音楽療法の実践例
(1)病気による不快な気分を和らげる
220人を対象にして、薬局の待合室にBGMを流すことで、気分の悪化が緩和・軽減しました(3)。
曲目は以下のもの。
資料(3)より引用
論文では以下のように書かれています。
本研究でもあまり体調がよくない患者でBGMが疲労感の軽減と活気の向上に寄与したことから、BGMは直接気分に作用するのではなく、むしろ体調の悪さが気分に与える影響を緩和・軽減し、その人の気分を本来の気分状態に戻すようなものであると考えられた。『薬局待合室におけるBGM聴取が患者の気分に与える影響』
落ち込みやすい人、患者さんがいるような機関では、音楽ひとつの選択も重要なリハビリテーションの一環になるかもしれませんね。
(2)覚醒をアップさせる
155人を対象にした研究では、ヴィヴァルディの春やホルストの火星を聴かせると覚醒がアップすることが報告されています(4)。
ちなみに、サン-サーンスの白鳥やバーバーの弦楽のためのアダージョなどは覚醒が低下すると報告されています。
それにしても音楽というのは力がありますね。明日からリハビリテーション室にどんな音楽をかけるか迷うところですね(笑)
【資料】
(1)Brain connectivity reflects human aesthetic responses to music.[PMID:26966157]
(2)Music interventions for acquired brain injury.[PMID:28103638]
(3)吉田 智大・吉永 真理、薬局待合室におけるBGM聴取が患者の気分に与える影響:薬学雑誌;2014年134巻 8号p.901-908
(4)Happy creativity: Listening to happy music facilitates divergent thinking.[PMID:28877176]
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