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夏に読みたい小説10選

 

今回は夏に読みたい本を紹介したいと思います。

ジャンルはエンターテイメント、ホラー、サスペンス、純愛などいろいろなものを選んでみました。書籍の概要は、Amazonの商品の説明より引用しています。

 

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目次

1.オーデュボンの祈り/伊坂幸太郎

コンビニ強盗に失敗した伊藤は、警察に追われる途中で意識を失い、見知らぬ島で目を覚ます。仙台沖に浮かぶその島は150年もの間、外部との交流を持たない孤島だという。そこで人間たちに崇拝されているのは、言葉を話し、未来を予知するというカカシ「優午」だった。しかしある夜、何者かによって優午が「殺害」される。なぜカカシは、自分の死を予測できなかったのか。「オーデュボンの話を聞きなさい」という優午からの最後のメッセージを手掛かりに、伊藤は、その死の真相に迫っていく。

伊坂幸太郎さんの小説は何冊か読みましたが、これがいちばん好きですね。こんなすばらしい小説がデビュー作だとは、さすが伊坂さんです。

書籍の概要にあるように、この小説の軸になるのは未来を予測できるカカシである「優午」でしょう。彼?は未来が予測できるはずなのに、「殺害」されてしまうんですね。それだけでも、読みたくなりませんか?

ほかにも個性豊かなキャラクターがたくさん出てきます。とくに、記憶に残っているのが「桜」ですね。島のなかで人を殺すことを許された男。彼が非常にクールなんですね。なんともかっこいい。

わたしは小説を読みながら、実写化するなら小栗旬さんかな~と思ってました。みなさんなら、誰にするでしょうか?

 

 

2.どくとるマンボウ航海記/北杜夫

水産庁の漁業調査船に船医として五か月の航海に出た著者が、航海生活や寄港したアジア、ヨーロッパ、アフリカの風景や文化をめぐり、卓抜したユーモアとユニークな文明批評を織りこんでつづった型やぶりの航海記。日本人の対西欧コンプレックスのない自由で気ばらない旅行記としてたちまちベストセラーとなった。年月を経て今なお新しい、旅行記ものの先駆的作品。

北杜夫のどくとるマンボウ航海記は有名な作品なので、読んだことがある人も多いと思います。

わたしのなかでは、沢木幸太郎さんの『深夜特急シリーズ』とならぶ旅行(紀行)小説ですね。世界地図を見ながら、航程を追うとさらにおもしろいですよ。

 

 

3.砂の女/安部公房

砂丘へ昆虫採集に出かけた男が、砂穴の底に埋もれていく一軒家に閉じ込められる。考えつく限りの方法で脱出を試みる男。家を守るために、男を穴の中にひきとめておこうとする女。そして、穴の上から男の逃亡を妨害し、二人の生活を眺める村の人々。ドキュメンタルな手法、サスペンスあふれる展開のうちに、人間存在の極限の姿を追求した長編。20数ヶ国語に翻訳されている。読売文学賞受賞作。

おそらく生きていたらノーベル文学賞を受賞していたであろうと思われる作家、安部公房の作品です。有名ですから、説明は要らないかもしれませんね。

安部公房の作品は非常に哲学的なので、なかなか解釈が難しいです。エンターテイメント小説が好きな人は、あんまり好みではないかもしれません。

この作品のなかでも、砂や村の人々などがなにかを象徴したもののとして描かれていると思うのですが、わたしの未熟な知能では、なかなか理解できません。

哲学が好きな人は読んでみてはいかがでしょうか?

『砂……………砂のがわに立てば、形あるものは、すべて虚しい。確実なのは、ただ、一切の形を否定する砂の流動だけである。』

 

 

4.Another/綾辻行人

その「呪い」は26年前、ある「善意」から生まれた―。1998年、春。夜見山北中学に転校してきた榊原恒一(15歳)は、何かに怯えているようなクラスの雰囲気に違和感を覚える。不思議な存在感を放つ美少女ミサキ・メイに惹かれ、接触を試みる恒一だが、いっそう謎は深まるばかり。そんな中、クラス委員長の桜木ゆかりが凄惨な死を遂げた!この“世界”ではいったい、何が起こっているのか?秘密を探るべく動きはじめた恒一を、さらなる謎と恐怖が待ち受ける…。

これはホラーですね。橋本愛さん主演で映画化もされたので、知っている人も多いのではないでしょうか。

わたしとしては、「映画を先に見るべからず」ですね。この作品は、本で読んだほうが100%いいと思っています。映画をさきに見てしまうと、おもしろみが半減してしまうでしょう。

 

 

5.キツネ山の夏休み/富安陽子

夏の輝きを描いたファンタジー。108ぴきの伝説のキツネたちに守られている稲荷山の町。その町ですごした弥の夏は、光と風と不思議でいっぱい。著者自らが挿絵も手がけた作品。大切な夏休みのひとときの思い出。

児童書ですが、わたしの好きな作品のひとつです。小学生のときに、読んだ人もいるのではないでしょうか。

主人公の弥は、夏休みのあいだ祖母の家で過ごすことになります。そこで、起こるキツネたちとのファンタスティックであり、ノスタルジックな夏。文章がとても柔らかくて、心地いいんです。

小学生のお子さんがいるのなら、おすすめされてみてはいかがでしょうか?

 

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6.しずかな日々/椰月美智子

おじいさんの家で過ごした日々。それは、ぼくにとって唯一無二の帰る場所だ。ぼくは時おり、あの頃のことを丁寧に思い出す。ぼくはいつだって戻ることができる。あの、はじまりの夏に―。おとなになってゆく少年の姿をやさしくすこやかに描きあげ、野間児童文芸賞、坪田譲治文学賞をダブル受賞した感動作。

タイトルにあるように、大きな事件が起こるわけでもない「しずかな日々」を描いています。最後にある『人生は劇的ではない。ぼくはこれからも生きていく』に、集約されているような気がします。

 

 

7.海賊とよばれた男/百田尚樹

一九四五年八月十五日、敗戦で全てを失った日本で一人の男が立ち上がる。男の名は国岡鐡造。出勤簿もなく、定年もない、異端の石油会社「国岡商店」の店主だ。一代かけて築き上げた会社資産の殆どを失い、借金を負いつつも、店員の一人も馘首せず、再起を図る。石油を武器に世界との新たな戦いが始まる。

「永遠の0」などを代表作で有名な百田尚樹さんの作品です。V6の岡田准一さんで実写化されたので、知っている人も多いと思います。

ガソリンスタンドで有名な出光(イデミツ)の創業者である出光佐三がモデル(主人公)の作品です。戦後の混乱期に、日本人の矜持をもって、世界に挑んだ熱い作品になっています。

 

人を動かしているのは、愛情でも、人情でも、義理でも、思いやりでもありません。利益です。

人は利益のために生きているのです。このことについては『性利説』に書いています。

その利益ひとつとっても、美醜があると思います。人を欺き、私腹を肥やすために生きているのは醜い利益でしょう。

しかし、家族や社員、ひいては国家のために生きていくという美しい利益もあります。それを体現しているのが、本書の主人公である国岡鐡造(出光佐三)ではないかと思うのです。

国岡は小説のなかでこう言っています。

『五十年は長い時間であるが、私自身は自分の五十年を一言で言いあらわせる。すなわち、誘惑に惑わず、妥協を排し、人間尊重の信念を貫きとおした五十年であった、と。』 

 

 

8.海と毒薬/遠藤周作

戦争末期の恐るべき出来事――九州の大学付属病院における米軍捕虜の生体解剖事件を小説化、著者の念頭から絶えて離れることのない問い「日本人とはいかなる人間か」を追究する。解剖に参加した者は単なる異常者だったのか? どんな倫理的真空がこのような残虐行為に駆りたてたのか? 神なき日本人の“罪の意識”の不在の無気味さを描き、今なお背筋を凍らせる問題作。

これは実際に1945年におきた「九州大学生体解剖事件」をモデルにしています。

じつは、この本の主張はタイトルに隠されています。簡単に説明しますと、「海」(本書にて多用される「黒い海」)とは未知であり、どうなるか解らない「運命」を表しています。

そして、「毒薬」というのは、「運命(=海)に翻弄される破片(=自分)が、良心・罪への呵責を失うこと」を表しているようです。

 

たとえば、主人公の勝呂医師が、解剖実験に参加するとき、その参加を断ろうと思えば断れたのです。しかし、勝呂医師は周囲の人々の「流れ(空気)=マジョリティー(多数派)」に乗せられてしまいます。知らぬうちに「みんながするのであれば」という気持ちが勝呂医師に働いたのであろうと推測できるわけです。

これこそ、『良心・罪への呵責』の麻痺状態、つまり毒薬に侵されたことなのではないかということです

現代においてもそんなことはよくありますね。その流れ(マジョリティー)に乗らないと、みんなから「自己チュー(自己中心的)」と非難されてしまう。そしてマジョリティーになるために、「非難・罪」を侵してしまうことも厭わないのが『日本人』であると、作者は言っているのではないでしょうか?

『どうでもいい。俺が解剖を引き受けたのはあの青白い炭火のためかもしれない。戸田の煙草のためかもしれない、あれでもそれでも、どうでもいいことだ、考えぬこと。眠ること。考えても仕方のないこと。俺一人ではどうにもならぬ世の中なのだ。眠っては眼があき、眼があくとまたうとうとと勝呂は眠った。夢の中で彼は黒い海に破片のように押し流される自分の姿を見た。』

 

 

9.潮騒/三島由紀夫

文明から孤絶した、海青い南の小島――潮騒と磯の香りと明るい太陽の下に、海神の恩寵あつい若くたくましい漁夫と、美しい乙女が奏でる清純で官能的な恋の牧歌。人間生活と自然の神秘的な美との完全な一致をたもちえていた古代ギリシア的人間像に対する憧れが、著者を新たな冒険へと駆りたて、裸の肉体と肉体がぶつかり合う端整な美しさに輝く名作が生れた。

三島由紀夫の作品でもっとも有名かもしれませんね。純愛を描いた小説であり、なんども映画化されています。非常にドキドキするようなシーンもあり、古い作品ですけども非常に読みやすいです。

『あれは「未知」であった。未知を遠くに見ていたあいだ、彼の心には平和があったが、一度未知に乗組んで出帆すると、不安と絶望と混乱と悲嘆とが、相携えて押し寄せて来たのである。』

 

 

10.向日葵の咲かない夏/道尾秀介

夏休みを迎える終業式の日。先生に頼まれ、欠席した級友の家を訪れた。きい、きい。妙な音が聞こえる。S君は首を吊って死んでいた。だがその衝撃もつかの間、彼の死体は忽然と消えてしまう。一週間後、S君はあるものに姿を変えて現れた。「僕は殺されたんだ」と訴えながら。僕は妹のミカと、彼の無念を晴らすため、事件を追いはじめた。あなたの目の前に広がる、もう一つの夏休み。

わたしは好きなのですが、非常に賛否がわかれる作品です。後味が悪いという人もいます。あと、読解力が乏しいと最後のシーンの意味が分からないという作品でもあります。

わたしはこの小説を読んで泣きましたね。主人公である「僕」の、いままでの苦しさ、これからの辛さを想うと泣けてきたのです。

たしかに気味がわるいという面もあるのですが、主人公のことを想うとやるせなくなりますね。ぜひ、読んでみてください。

 

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