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◆アルブミンとは
アルブミンは、総タンパクの約50~65%を占めるタンパク質です。アルブミンは、摂取したアミノ酸をもとに肝臓で合成されつくられます。
資料(1)参照作成
おもなアルブミンの働きは、血液の浸透圧を一定にたもち、血液の水分量を調節することです。また、血液に溶けにくい物質を運ぶためにも働いています。
◆アルブミンの基準値・理想値
基準値:3.5~5.3
理想値:4.0以上
※基準値は施設によっても差があります。うえの基準値は資料(2)(3)(4)をもとに決定しており、理想値は分子整合栄養医学の考えに則っています。
◆アルブミン=栄養指標ではない
わが国では、血清アルブミン値は栄養状態の指標とされています。つまり、アルブミン値が高ければ栄養状態がいい、低ければ栄養状態が悪いということです。
しかし、アメリカやヨーロッパという先進国のあいだでは、このアルブミン値=栄養指標というとらえ方はされていません。
つまり、アルブミンを栄養指標として使っていないのです。しかも、栄養指標として使っていたのは30年も前のことです。
アメリカの栄養学の教科書にはこう記載があります(改行は筆者による・引用文献は割愛)。
負の急性期タンパク質、血清アルブミン、プレアルブミン、トランスフェリンの減少は、炎症過程と組織傷害の重症度を反映する。これらの臨床検査値は、現在の食事摂取や、タンパク質状態を反映するものではない。
アルブミン、プレアルブミン、トランスフェリン値の改善は、タンパク質とエネルギー摂取の増加よりも、体液の状態の変化を最もよく反映すると考えられる。
(栄養学と食事療法大辞典)
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◆アルブミンは炎症(感染症)の指標
炎症の急性期反応を増減はこうなります。
資料(4)参照作成
つまり、体に炎症があるとアルブミン値は下がってしまうということです。
これは炎症時にでてくるサイトカインという物質が、アルブミンの合成を抑制し、分解を促進するからです。すなわち、アルブミンを作れず、どんどん破壊してしまうということです。
また、炎症がおこると血管の透過性が亢進(増加)します。そのため、血管の外にアルブミンが漏れだしてしまうのも、アルブミンが低下する原因のひとつです。
◆アルブミンとCRPはセットで見る
アルブミンを栄養指標として使用する場合には、炎症のマーカーであるCRPも同時に見ておく必要があるということです。
アルブミンとCRPの大まかな関係を図にすると以下のようになります。
このようにアルブミンとCRPは相反する動きをみせます。そのため、アルブミンだけを見てしまうのは、非常に危険であると思います。
つまり、アルブミンだけを見て、「栄養状態が悪い!」となってはいけません。
CRPが基準値より低ければ、そこではじめて栄養状態が悪化しているかもしれないと予測できるわけです。
◆アルブミンとCRPの4タイプ
がん治療の世界では、Glasgow Prognostic Score(GPS)という評価ツールがあります。これはアルブミンとCRPをスコアリングし、がん患者の予後といったアウトカムとして使用されています。
資料(6)より引用
三木誓雄医師は、このGPSを日本人向けに修正しています。アルブミンは3.5g/㎗、CRPは0.5㎎/㎗をカットオフ値として、4タイプに分けています。
資料(7)参照作成
これはがん患者の栄養状態を見るための指標ですが、がん以外の疾患でも役にたつとおもいます。
◆高齢者はアルブミンが低いと死亡リスクが高まる
健康長寿医療センター研究所の新開省二医師は、アルブミン値と累積生存率(どれだけの人が生き残ったか)を8年間追跡し、分析しました。調査の対象は東京都と秋田県に住んでいる65歳以上の高齢者約1150名です。
対象をアルブミン値から4つのグループにわけています。
低い:男3.8以下・女3.9以下
やや低い:男3.9~4.0・女4.0~4.1
やや高い:男4.1~4.2・女4.2~4.3
高い:男4.3以上・女4.4以上
結果は以下のようになりました。
資料(9)より引用
アルブミンが低いグループ、つまり男3.8以下・女3.9以下のグループだけが、生存率が顕著に低くなっていました。
炎症の有無などに言及がないのでそのあたりのバックグラウンドはわかりませんが、アルブミンが生存率に関わっている可能性はありそうですね。
◆アルブミン神話から迷信へ
「アルブミン=栄養指標」というアルブミン神話は過去のものです。
なにも考えずにアルブミンは栄養指標だと思いこんでしまうのは、思考停止であり、アルブミン神話を助長してしまいます。
まずは、アルブミンは炎症の指標であり、CRPとあわせて確認します。CRPが正常値(0.5㎎/㎗以下)ならば、アルブミンを栄養状態の指標のひとつとして、目安にしましょう。
もちろん、身体のアセスメント(評価)なども、合わせて実施することが望ましいと思います。
「アルブミンだけを栄養指標」とする神話を迷信に変えていくのは、臨床に携わっている医療者ひとりひとりの意識にかかっているのかもしれません。
【資料】
(1)ボディセラピーのためのトートラ標準解剖生理学、伊藤正裕ら監訳、丸善、2011
(2)検査の参考書、中京東部医師会、2007
(3)からだの検査数値、高久史麿監修、ニュートンプレス、2014
(4)栄養学と食事療法大辞典、キャスリーン・マハンら(香川靖雄ら監修)、ガイアブックス、2015
(5)よくわかる栄養学の基本としくみ、中屋豊、秀和システム、2009
(6)Prognostic Role of Glasgow Prognostic Score in Patients With Hepatocellular Carcinoma: A Systematic Review and Meta-Analysis.[PMID:26656342]
(7)日経メディカル「特集 悪液質への介入―浮上した炎症制御の重要性がん緩和最後の課題」
(8)50歳を過ぎたら「粗食」はやめなさい!、新開省二、草思社、2011
(9)地方独立行政法人 東京都健康長寿医療センター研究所(東京都老人総合研究所)「食生活に要注意ー高齢者の低栄養はキケンー」
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