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◆医療者の説明の仕方で痛みが変わったという論文
2001年の報告です(1)。
慢性腰痛の患者さん50人を対象にしたRCT(ランダム化比較試験)です。平均年齢は41歳で、痛みは6.1(NRS)でした。
さて、この患者さんたちに機器を使って、膝の屈曲運動をしてもらいます。機器っていうのは、こんな感じのものです。
資料(1)より引用
大腿部はベルトで固定されていて、下腿だけが動くようになっています。そして、器機の抵抗に抗して、膝の屈曲をおこなうというわけです。この屈曲運動をおこなってもらうときに、以下のように2通りの説明をします。
①対照群:この運動は腰痛に影響はなく、痛みが悪化することもありません。(The movement will not influence your back pain and will not lead to any increase of your pain.)
②介入群:この運動はすこしだけ痛みの増加につながる可能性がありますが、それは危険なものではありません。(The movement may lead to a slight but short increase of your back pain, but it will not be harmful.)
説明の違いによって、痛みや恐怖感に違いがでるのかどうか調べたというわけです。
結果は以下のようになりました。
資料(1)より作成
その差は一目瞭然って感じですね。いわゆるノセボ効果(プラセボ効果の逆バージョン)なんでしょうね。同じ運動をするにしても、説明のしかたひとつで、患者さんの痛みや恐怖感が増減してしまうわけです。
とくに運動するしない以前に、説明するだけでも痛みや恐怖感に差が出てくるのは、なかなか興味深いですね。
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◆患者さんにどう説明するかはなかなか難しい
この結果をみて、「そうか、患者さんへ伝えるときにマイナスの情報は言わないほうがいいのか」と思う人もいるかもしれません。
たしかにそういう側面もあるとは思いますが、がんの告知も本人にするような時代です。なにかトラブルがあったときに、過失を問われる可能性もあります(参考:リハビリにおける事故・訴訟・裁判に関わる法知識)。
また、倫理的にどうなんだろうという問題もありますし、どこまで伝えるか、伝えないかっていう線引きは、なかなか難しいところだなぁという感じです。
大切なのは、医療者の言葉かけひとつで、患者さんの体調を良くも悪くもしてしまうということを意識しておくということではないかと思います。
以前、腰痛患者を慢性化させてしまう治療家の特徴についての記事をアップしました(参照:急性腰痛と危険因子ガイド~慢性化させる治療家の特徴~)。
このなかで、患者さんに誤った信念を信じ込ませるのがよくないということに触れました。なんとなく、今回紹介していることと似通っている問題のようにも思えます。
患者さんの不利益にならぬよう、そして、医療者が責任を問われないよう、バランスよく説明するのが大切なんでしょう。なかなか技術がいりますね。。。
【資料】
(1)Pfingsten, Michael, et al. “Fear-avoidance behavior and anticipation of pain in patients with chronic low back pain: a randomized controlled study.” Pain medicine 2.4 (2001): 259-266.
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