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◆痛風(高尿酸)の原因として食べ物の影響は小さい
2018年10月、BMJに『Evaluation of the diet wide contribution to serum urate levels: meta-analysis of population based cohorts.』というタイトルの報告がでました(1)。
これは、アメリカ人1万6760人(男性8414人、女性8346人)を対象にしたもので、尿酸値にたいする食品の影響について5つのコホート研究をメタ分析したものです。
報告によれば、以下の7つの食品が尿酸値上昇に関連していました。
・ビール
・リキュール
・ワイン
・ジャガイモ
・ 家禽(鶏、七面鳥、アヒル、ガチョウなどのこと)
・清涼飲料水
・肉(牛、豚、ラム)
たいして、以下8つの食品が尿酸値の低下に関連していました。
・卵
・ピーナッツ
・コールドシリアル
・スキムミルク(脱脂乳)
・チーズ
・ブラウンブレッド(ライ麦パン、黒糖パン。胚芽パンなども含めた褐色のパンの総称)
・マーガリン
・非柑橘系の果物
そして、論文ではそれらの食品の尿酸値への影響(変動の説明)が、1%未満であると書かれています(『However, each of these established foods explained less than 1% of variation in serum urate levels within the full cohort.』)。
つまり、食品が尿酸値にあたえる影響は非常に小さいということですね。
◆肥満であればあるほど痛風のリスクが大きくなる
尿酸値の変動は、遺伝の影響が大きいことがわかっていますが、ほかにも原因が考えられます。今回は、インスリンの影響について書いていきます。
さて、アメリカにおいて、4万7150人の男性医療関係者を対象にした報告があります(2)。
12年間の前向き調査をおこない、体重の変化(BMI)と痛風発症の相対危険度を検討しており、結果は以下のようになりました(21~22.9を基準としている)。
資料(2)より作成
つまり、BMIが高ければ高いほど痛風のリスクが高まるということです。
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◆痛風にはインスリンが関与している
なぜ肥満になると痛風になってしまうのでしょうか?
先に結論をいえば、尿酸が高くなる原因として、インスリン抵抗性と高インスリン血症が関わっています。両者は肥満(BMI)やメタボリックシンドロームと関係があるのは、自明ですね。
嶺尾の報告には、インスリンと尿酸の関係性について、以下のような記載があります(3)。読みやすくするため、括弧などを割愛しています。
インスリン抵抗性下では膵β細胞の代償機構により高インスリン血症を呈するが、インスリン抵抗性のない腎尿細管ではインスリン作用が亢進し、結果的に尿酸排泄が障害されると考えられている。(中略)
内臓脂肪蓄積に基づく肝でのインスリン抵抗性によって解糖系が障害されペントースリン酸経路は活性化される結果、de novoのプリン合成が促進され、併せてトリグリセリド合成も亢進するという仮説も提唱されている。
図で見るとわかりやすいでしょう。
資料(3)より引用
まとめると、インスリン抵抗性により尿酸が過剰に産生、高インスリン血症により尿酸排泄が低下し、果たして高尿酸血症になり、痛風につながるということですね。
◆インスリンと高尿酸血症の悪循環
また、尿酸自体が血管内皮の一酸化窒素産生低下を通じて、インスリン抵抗性を惹起することも示唆されており、インスリン抵抗性・高インスリン血症と高尿酸血症の悪循環には、注意をしたほうがいいかもしれません。
資料(3)参照作成
◆高尿酸血症にはコーヒーが効く!かもしれない
高尿酸血症(インスリン抵抗性や高インスリン血症)を改善するには、生活習慣の是正などがありますが、今回はコーヒーが効くかもねというものを紹介したいと思います。
コーヒーにはインスリン感受性促進作用があるといわれています(4)。実際、コーヒー(カフェインレスでも)を1日に4~5杯以上のむ人は、尿酸値が低く、痛風の発症がすくないことが報告されています(5・6)
外国人と日本人では違うんじゃないの?と思う方もいるかもしれませんが、日本人でもコーヒーの摂取により、インスリン抵抗性が低下していることを確認している報告があります(7)。
また、『高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン(第2版)』でも、コーヒーの摂取が多いと痛風になりにくいは推奨度B(言い切れる根拠がある)になっています。
なぜコーヒーを摂取すると、尿酸が低くなるのでしょうか?
日本人労働者(男性:2554人、女性:763人)を対象にした研究によれば、コーヒーの摂取量は、アディポネクチンと有意な正の相関を認めました(8)。
脂肪細胞から分泌される生理活性物質をアディポサイトカインといいますが、そのなかにアディポネクチンは含まれています。
アディポネクチンは、インスリン感受性を高め、かつ血管壁に直接作用して抗動脈硬化作用を発揮することが報告されています(9)。
つまり、コーヒー摂取→アディポネクチン増加→インスリン感受性アップ・抗動脈硬化作用→インスリン抵抗性・高インスリン血症改善→尿酸低下といった感じでしょうか。
尿酸値が高い人は、コーヒーを摂取してみるのもいいかもしれませんね。
【資料】
(1)Evaluation of the diet wide contribution to serum urate levels: meta-analysis of population based cohorts.[PMID:30305269]
(2)Obesity, weight change, hypertension, diuretic use, and risk of gout in men: the health professionals follow-up study.[PMID:15824292]
(3)嶺尾郁夫:メタボリックシンドロームにおける高尿酸血症の病態意義:歴史的経緯から最近の知見まで.痛風と核酸代謝32:121-132、2008.
(4)Coffee consumption and insulin sensitivity.[PMID:15010440]
(5)Coffee, tea, and caffeine consumption and serum uric acid level: the third national health and nutrition examination survey.[PMID:17530681]
(6)Coffee consumption and risk of incident gout in men: a prospective study.[PMID:17530645]
(7)Coffee and green tea consumption is associated with insulin resistance in Japanese adults.[PMID:24342074]
(8)Association of coffee consumption with serum adiponectin, leptin, inflammation and metabolic markers in Japanese workers: a cross-sectional study.[PMID:23169586]
(9)Adiponectin: a key adipocytokine in metabolic syndrome.[PMID:16464169]
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