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感度と特異度を鑑別診断(リハビリ評価)に活用する

◆はじめに

検査には感度や特異度というものがあります。

 

わたしは統計が苦手で、この感度や特異度もいまひとつ理解できていなかったので、調べてみました。

 

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目次

◆感度の定義と概要

まずは感度の定義から。

 

ある疾患を持つ人のうち、検査で陽性と正しく判断される割合です。(中略)感度が高いということは、「陽性の者を陽性と正しく判定する可能性が高い」ということになります。

(日本理学療法士学会)

 

定義の説明にあるように、感度が高い検査は、その疾患がある場合は陽性になりやすくなります。

 

たとえば、ヘルニアの患者さんがやってきたとします。ヘルニアでよく用いられる検査には、SLR(下肢伸展挙上)があります。

 

ヘルニアのガイドラインでは、SLRの感度は85%(0.85)となっています。なかなか高いですね。

 

SLRをして陽性の場合は、ヘルニアの確率が高くなるということですけど、逆にいえば陽性になりやすいSLRで陰性になれば、ヘルニアの可能性はすごく低くなるということですね。

 

ゆえに、感度が高い検査は、除外診断に用いられることがあります(便宜上、診断という言葉を用いてますが、理学療法士は診断することはできませんので、ご注意ください)。

 

まとめますと、

感度が高い検査

→陽性になりやすい

→陰性になる

→疾患を除外できる

→スクリーニングしやすい

ということですね。

 

 

◆感度の高い検査を組みあわせる

さきほどのSLRは、感度が85%でしたが、15%の人は間違えてヘルニアだと判断してしまう可能性があるわけです。

 

しかし、感度の高い検査を組みあわせることで、その間違える確率を低くすることができます。

 

たとえば、さきほどのSLRに、アキレス腱の腱反射テストを加えてみたらどうなるかを考えてみます。L5-S1のヘルニアの場合、アキレス腱反射減弱の感度が87%(0.87)という報告があります(3)。

 

SLRだけだと、診断ミスする可能性が15%です。しかし、検査を2つおこなうと、診断ミスする可能性は1.95%(0.15×0.13=0.0195)に下がりますね。

 

【診断ミスの確率】

・SLRのみ→15%

・SLR+腱反射→1.95%

 

つまり、SLRもアキレス腱反射も陰性の場合は、かぎりなくヘルニア(L5-S1)の可能性は低い、ということになります。

 

注意しないといけないのは、同じような種類の検査ではダメということですね。

 

SLRテストとおなじような、坐骨神経にたいする検査(ラセーグテストやブラガードテストなど)ではなく、関連性の少ない検査を取り合わせる必要があります。

 

たとえば、SLRであれば、腱反射や感覚テスト、筋力テストなどを組みあわせるのがいいと思われます。

 

さきほどのSLR+腱反射に、デルマトームに沿った痛みを加えてみます。デルマトームに沿った痛みは感度が89%(0.89)という報告があります(4)。

 

 

資料(5)より引用

 

検査を3つおこなうと、診断ミスする可能性は0.2%(0.15×0.13×0.11=0.00215)と、さらに下がります。

 

【診断ミスの確率】

・SLRのみ→15%

・SLR+腱反射→1.95%

・SLR+腱反射+痛み→0.2%

 

この検査のすべてが陰性の場合、L1-S1のヘルニアの可能性はほぼないといえますね。

 

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◆特異度の定義と概要

まずは特異度の定義から。

 

ある疾患を持たない人のうち、検査で陰性と正しく判定される割合です。(中略)特異度が高いということは、「陰性の者を陰性と正しく判定する可能性が高い」ということになります。

(日本理学療法士学会)

 

特異度が高い検査は、陰性になりやすい検査といえますね。その検査で陽性になるということは、その疾患がある可能性が高いということです。ゆえに特異度が高い検査は、確定診断に用いることができます。

 

さきほどと同じように、ヘルニアを例に考えてみます。ヘルニアの検査で、特異度が高いものに「交差性下肢伸展挙上(cross SLR:CSLR)」があります。

 

CSLRというのは、健側のSLRをおこなうというものです。患側の下肢に症状が出現した場合が陽性になります。

 

CSLRの感度は29%(0.29)、特異度は88%(0.88)という報告があります(6)。ちなみに、診断オッズ比は4.39です。

 

CSLRは特異度が高いので、このテストが陽性であれば、ヘルニアの可能性が非常に高くなります

 

特異度は陰性になりやすい検査ですから、その検査で陽性になるということは、「おそらくヘルニアでしょう」と考えることができるわけです。

 

全体的な流れとしては、

「複数の感度の高い検査で除外診断(スクリーニング)」→「除外できなかったら、特異度の高い検査で確定診断」となります。

 

 

 

◆感度・特異度のまとめ

【感度が高い検査】

・陽性になりやすい。

・除外診断にもちいる。

・感度の高い検査を組みあわせることで、診断ミスの可能性が低くなる。

 

【特異度の高い検査】

・陰性になりやすい。

・確定診断にもちいる。

 

 

◆実際に鑑別してみよう!

あなたの病院に下肢症状を訴える患者さんがやってきたとします。ヘルニアの可能性があるので、検査を実施します。

 

1.除外診断(スクリーニング)

ひとまず、さきほど説明したSLRとアキレス腱の腱反射をおこなうことにしました。

 

①両方とも陰性の場合

感度の高い検査(SLRと腱反射)は、陽性にでやすくなっています。

そのため、そのテストで両方とも陰性の場合は、おそらくヘルニア(L5-S1)ではないと考えられます。

もちろん、L4-L5の可能性もあるので、そこは別の検査を組みあわせて判断する必要があります。

 

②一方または両方陽性の場合

こうなるとヘルニアの可能性が出てきますね。

しかし、感度の高い検査には、ヘルニアじゃない人も含まれている可能性があります。ですので、つぎは特異度の高い検査で確定診断を行っていきます。

 

 

2.確定診断

特異度の高いCSLR(交差性下肢伸展挙上)を実施することにしました。

 

①CSLR陰性の場合

CSLR陰性の場合は、ヘルニアだと確定することはできません。

しかし、完全にヘルニアの可能性を除外できるわけではないので、ほかの検査を実施するなどして、さらなる検討が必要になります。

 

②CSLR陽性の場合

ほぼヘルニアであると確定診断できます。

さらに精度を高めたい場合は、ほかの特異度の高い検査をおこなってもいいですね。

 

 

◆おわりに

簡単に感度と特異度の用い方について書きました。ぜひ臨床でご活用してください。

 

本記事については、いろいろと資料をもとに書きましたので、大きな間違いはないと思います。しかし、わたしは、きちんと統計を学んだことがないので、もし誤りがあれば連絡いただけたらと思います。

 

また、冒頭でも述べましたが理学療法士は診断できませんので、第三者に伝える際にはご注意ください。第三者に伝える際に、理解度をあげるコツ(注意点)については『リスク・リテラシーを学ぶ~確率ではなく自然頻度で考える』をご参照ください。

 

【資料】

(1)日本理学療法士学会ホームページ(EBPT用語集・EBPTチュートリアル)

(2)腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン(改訂第2版)

(3)The value of accurate clinical assessment in the surgical management of the lumbar disc protrusion.[PMID:3346682

(4)Diagnostic value of history and physical examination in patients suspected of lumbosacral nerve root compression.[PMID:11971050]

(5)デルマトーム図、下津浦 宏之・井上 聖啓、脊髄外科:26 巻 (2012) 2 号 147-161

(6)The test of Lasègue: systematic review of the accuracy in diagnosing herniated discs.[PMID:10788860]

(7)study channel「感度と特異度

(8)湘南鎌倉総合病院「感度、特異度 尤度比のまとめ

(9)理学療法士たなはらの勉強部屋「5.感度・特異度の考え方。

(10)カリスマ鍼灸師養成講座「鍼灸院で感度・特異度を使って鑑別診をする方法

 

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