2017年も年末になり、今年は約100冊(専門書は除く)ほど読みました。ですので今回は今年読んだ本の中から11冊を厳選して紹介したいと思います。ひとつくらい気になるものがあれば幸いです。
ジャンルは人文・ビジネス・哲学(思想)で、医療系の本は除外しました。ちなみに順番は読み終えた順番なので、最初がとくにおススメというわけではありません。
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1.タモリ学/戸部田誠
タモリさんの言葉や実体験などから「タモリ」について思索するというコンセプトの本。一種の思想哲学、たとえば老荘思想、禅的思想に通ずるものを感じました。
タモリさんといえばいいともの司会者で好々爺といったイメージがあるかもしれませんが(四か国語麻雀とか知ってる人すくないですよね)、その深い見識に触れてみるとタモリさんを見る目が変わるかもしれません。
『「人間にとって一番恥ずかしいことは、立派になるということです。僕にダンディズムがあるとすれば、このへんですね」』(P225)
2.実験医学序説/クロード・ベルナール
医療系に近い本ですが、これは科学哲学といってもよいかなと思います。約150年前に書かれたとは思えないほど、すばらしい内容で翻訳も名訳です。
科学は主観的・経験的なものから脱し、生理学といったデテルミニスム(原因と結果が一致しており例外のない絶対的原則)に基づくべきと主張しています。科学に携わるものすべての人に読んでもらいたい本ですね。
『科学的医学は生理学の基礎の上に建設されなければならない』(P14)
3.私を変えた一言/原田宗典
私のいちばん好きな作家である原田宗典さんのエッセイです。タイトルを見るかぎり、やや重い内容なのかなと思われるかもしれませんがそんなことはありません。ところどころクスリとさせられる面白いエッセイ集です。
誰かが発した何気ない一言を取り上げているのですが、そのメンツは多種多様です。しょっぱなに緒方貞子さん、次は原田さんの祖父、批評家の大家小林秀雄、レンタルビデオ店の店員うんぬんとなっており、こうざっとあげても、絵の具をぶちまけたキャンバスのごとくです。何気ない一言からここまで書き上げる原田さんの文才に脱帽。
『「ALL YOU NEED IS LOVE」を、「愛こそすべて」と訳したのでは、分かったような分からないような感じになるだけだが、「大切なのはすごく大切にすること」と訳すと、鈍感な私たちにも、何か見えてきそうな気がするではないか』(P82)
4.快楽主義の哲学/澁澤龍彦
論理的に飛躍していて納得できないところや知識として誤っているところ(P205でアタラクシアをストア哲学者のもののように書いてあるが、実際はエピクロス派の言葉)がありますが、それを差し引いても面白く読める本でした。
世の中の常識や道徳といったものを、小馬鹿にできるくらいが楽しく生きていく秘訣なのかなぁと思いました。
『自分で味わってみなければ、何もわかりません。新しい快楽は、自分で味わい、自分で発見すべきものだということです』(P222)
5.ひろさちやと読む歎異抄/ひろさちや
「歎異抄」というのは浄土真宗の宗祖親鸞の弟子である唯円が書いたといわれている本で、「善人なほもて往生をとぐ、いはんや悪人をや」(悪人正機説)などで有名ですね。非常に難解な内容をひろさちやさんが易しく解説してくれています。
私としては親鸞がいう他力本願を全肯定はできないけれど、自力本願だけに依存してしまうのも怖いなぁと思います。自力で頑張れるところは頑張る。でも、自力ではどうにもならないこともあるということを意識する必要があると思います。
自立して生きている人なんていない。人は誰かに依存して、依存されて、誰かに迷惑をかけて、迷惑をかけられながら生きているのだから。いろいろと考えさせてくれる良書でした。
『「南無阿弥陀仏」のお念仏は、感謝の念仏なのだ』(P76-77)
6.人の心は読めるか?‐本音と誤解の心理学/ニコラス・エプリー
本書では、いかに我々が人の気持ちを理解できていないかというのをエビデンス(科学的知見)をもとに分析しています。交際期間が短いカップルと長いカップルではどちらがパートナーの心を読めると思いますか?研究では長いカップルのほうが心を読めないのです。不思議ですよね。そういうメカニズムについても説明されています。
また本著にある『人間の知恵とは、自分の限界を知り、それを矯正することで得られるのだ』(P248)というのは非常に大切な視点であるなぁと思いました。人間というのは、自信過剰であり、人の気持ちも少しは分かるがそれはほんのわずか。しっかり、相手の話を訊くのが大切。まぁ、それでも気持ちを理解するには不十分なようです。
人の気持ちはわからないけど、少しでも分かるように努力して、謙虚にいることが大事だということを再認識させてくれました。
『まず何よりも、相手を正しく理解するには、あなたの判断が間違っているかもしれないこと、あるいは、あなたが考える以上に間違っているかもしれないことを自覚しなければならない』(P69)
7.できない脳ほど自信過剰/池谷裕二
科学的知見にもとづくエッセイみたいな感じです。参考資料も掲載してあり、なおかつ内容もおもしろい。雑誌に掲載されていたものをまとめたようで、ややタイムラグ(2013-2014年頃)があるのが惜しいところですが、ひとつひとつの話が2~3ページなので、本を読むのが苦手な人でも取っつきやすいのではないでしょうか。
『脳を持ってしまった生物は、少なくとも数量の上では、紛れもなく敗者です。もちろん、いまだに絶滅していないとこを見れば、脳を持つことが絶望的に不利だったわけではないことも、また確かです。つまり、脳は単なる不良在庫ではありません』(P4)
8.不都合な相手と話す技術‐フィンランド式「対話力」入門/北川達夫
なかなか勉強になる本でした。対話というのは、なかなか深いもので、今の日本人には不足している要素であるような気がします。著者は外務省に勤めていた経歴があり、海外のコミュニケーション(対話)の要諦を易しく書いてくれています。
『すべてに疑問を持ち、解決していかなければならない。対話は主張や説得ではなく、疑問によって成り立っているのである』(P249)
9.史上最強の哲学入門/飲茶
初学者のわたしでも楽しんで読み進めることができ、哲学は面白いものだと改めて気づかせてくれました。
ほかの哲学入門書は各哲学者の主張を独立(切り離)して紹介することが多く、今一つ読んでいても理解しにくい感じがありました。しかし本著では、時系列にそって哲学者たちの主張が説明されていて、かつ専門用語も最低限になっており、それが理解を助けてくれたように思います。哲学って難しそうでイヤみたいな人にいいかもしれません。ちなみに上の赤いほうが西洋哲学、下の青いほうが東洋哲学を扱っています。
『現代社会において「哲学する」ということが、あるいは「無意味との声もあるでしょう!しかしすべてを賭けて真理を追究する哲学者の人生の―己の論理が通じず敗北を受け入れる哲学者の苦悩の―傷つきひらめきを手にしたときの哲学者の表情の―そのどれもが我々の『何か』を動かさずにはおきませんッッ!」』(あとがき)
10.世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?経営における「アート」と「サイエンス」/山口周
非常に面白く読め、かつ示唆深い本でした。外部への価値判断から内部への価値判断への移行、つまり「美意識」の高めることが大切であるとのこと。仏教でいわれる「空」の概念にも類似しているように感じました。
今年は大企業の不正がニュースになりましたが、そのことについても触れられており、慧眼に恐れ入りました。
『システムの内部にいて、これに最適化しながらも、システムそのものへの懐疑は失わない。そして、システムの有り様に対して発言力や影響力を発揮できるだけの権力を獲得するためにしたたかに動き回りながら、理想的な社会の実現に向けて、システムの改変を試みる』(P238)
11.残酷すぎる成功法則 9割まちがえる「その常識」を科学する/エリック・バーカー
ちまたにあふれる成功法則(たとえば引き寄せの法則など)を科学的な知見から効果の有無を分析しています。これからは成功、つまり幸福になるためにも科学的なアプローチが欠かせないことがわかる一冊です。
『目標の達成のために不可欠な要素として世間一般で広く信じられてきたことの多くは、手堅くて正論だが、今や完全に間違っている』(P17)
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一冊くらいは気になる書籍があったでしょうか?年末年始なにしようかなぁなんて考えている人は、ぜひ手にとって読んでもらえたらなぁと思います。
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