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    忙しい人のための要約
    体罰はいかなる理由があっても、容認されてはいけないものです。体罰には多くのデメリットがあることがわかっています。体罰に頼らない環境づくり(ルールの明確化など)や指導能力を育むことが大切なのかもしれません。

     

     

    ◆はじめに

    トランペット奏者の日野皓正さんが、ビンタをおこない「体罰じゃないか?」ということが騒動になりました。

     

    わたしは、この事件をきっかけに、「場合によっては体罰も必要なんだ」とか「愛情や教育のための体罰は認めるべき」みたいな風潮が、生まれることを危惧しています。

     

    体罰はいかなる理由があろうと許されるものではありません。

     

    そのことについて書いていこうと思います。

     

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    ◆体罰とはなにか?(定義)

    そもそも体罰とはなんでしょうか?

     

    このことについては、「学校と体罰とルール」に書きましたが、復習がてら、書いておこうと思います。

     

    肉体に直接苦痛を与える罰。教育現場では,教育指導の効果を上げることを目的に教師が児童生徒の体に加える罰をいう。

    (ブリタニカ国際大百科事典)

     

    肉体に害を加えると、体罰になります。

     

    もちろん、体罰は学校教育法11条で禁止されています。そして、これは日本だけでなく、世界50か国以上が法的に全面禁止にしています。

     

    国際的な流れからみても、「体罰は必要だ」なんて言ってるのは、とても遅れた発想であるということですね。

     

    そもそも体罰というのは、ルールを守らせるためにおこなうわけです。体罰をしている人は、ルールを守らせるために自身がルールを破っていることに気づいていません。滑稽ですね。

     

    あと、体罰を実施するべきだといって教師にそれを促すのは、教唆(他人をそそのかして犯罪実行の決意を生じさせること)になりますから、責任をもって発言しましょう。

     

     

    ◆体罰のデメリット

    体罰にメリットはありませんが、デメリットについては、多くの報告があります。

     

    1.身体・脳の発達への悪影響

    資料(1)より引用

     

    ・厳しい体罰により、前頭前野の容積が19.1%減少(2)。

    ・言葉の暴力によって、聴覚野が変形(2)。

    ・体罰を受けている子どもは、暴行され重症を受けるリスクが7倍もある(4)。

     

    2.精神面・行動面への悪影響

    資料(1)より引用

     

    親子関係が悪化する(5)

    ・精神的な問題の発生(5)

    ・反社会的な行動の増加(5)

    ・攻撃性の増加(5)

     

    3.将来への悪影響

    ・体罰を受けた子どもは、自分の子どもに体罰を与える傾向がある(4)。

    ・うつや不安症、薬物依存などにかかるリスクが高い(4)。

     

    4.そもそも効果がない

    体罰には多くの悪影響があるのに、効果(メリット)がないというのが、最大のデメリットかもしれませんね。

     

    「そうでもないよ。うるさく騒いでる子どもがいたら叩きますよ。そしたらあっという間に静かになります」

     

    こういう意見があるかもしれません。それは、効果ではなく反応ですよ。一時の反応を、普遍的な効果のように考えるのは、短絡的だと思います。

     

     

    ◆体罰肯定者は「愛情」「教育」を語りだす

    体罰をする人の決まり文句は、「愛情」「教育」ですね。

     

    愛情や教育のためなら、体罰はやってもいいということですね。しかし、こんな事件があるんです。

     

    1957年(昭和32)、ある中学校の体育教師が、教室でクラスの生徒に話をしていたところ、べつのクラスの生徒が廊下でふざけたり教室で窓を開けてのぞいたりしました。(中略)この先生、その生徒を何発も殴り、脳内出血で死亡させてしまうのです。

    (怒る!日本文化論)

     

    この先生は、教育のために学生を殴り殺しました。でも、愛情や教育のために体罰はいいんですよね。学生が死んでも仕方ありませんよね。

     

    「それは極端だ!」という意見があるかもしれません。でも、じゃあ、どこまでだったらいいんですか?ということになります。

     

    髪の毛をつかむくらいならいいんですか?

    内出血くらいならいいんですか?

    骨や歯が折れるくらいならいいんですか?

    死なない程度だったらいいんですか?

     

    こうなると、際限がなくなりますよね。そして、各自が自分勝手な基準を決めて、体罰をおこなってしまうんです。

     

    また、高齢者が言うことを聞かないからと、叩いたりすれば虐待になります。しかし、子どもが言うことを聞かないからと、叩いたら教育になります。

     

    おかしな話ですよね。おなじ暴行でも、一方は虐待になり、一方は教育になる。これが体罰の正体ですね。

     

    つまり、体罰というのは、体罰をおこなう人の解釈や都合によって、自由自在に姿を変えてしまうのです。なんて便利なものなんでしょう。

     

     

    ◆「軽く触れただけ」と逃げ、自己保身に走る不道徳者

    日野さんも会見で言ってたみたいですが、体罰をしたあとに騒がれると、「軽く触れただけ」「スキンシップみたいなもの」とか言って、自己保身に走りますよね。本当に卑怯だと思います。

     

    体罰は必要だ!と言いつつ、騒がれると自己保身に言い訳する。教育者が教えることは、都合が悪くなったら言い訳して、自己保身に走れという不道徳なことなんですかね?

     

    誤ったことをしたのなら、言い訳せずにしっかり謝り、同じような失敗をしないように、心がけることを教えるべきではないのでしょうか?

     

     

    ◆体罰は弱者にだけ行われる

    そして、体罰というのは弱者にだけ行われます。

     

    自分より強い人には、まず行われません。なぜかといえば、強い人は反撃してくるからです。弱者が反撃してくることは、ほぼありません。

     

    ゆえに、反撃が許されているボクシングといった格闘技は合法になります。

     

     

    体罰が卑怯な行為で、非合法とされるのは、絶対的な強い立場の人間が、立場の弱い人にたいして暴行するからです。

     

    反撃してこない、反撃することができないことを知りながら、暴行するのは、法的にも倫理的にも許されるものではないですよね。

     

     

    ◆情状酌量はあっても正当化にはなりません

    騒動のコメントを見ていると、経緯や背景を考慮しないといけないといった意見もありました。

     

    それは違うように思いますね。経緯や背景によっては、体罰をおこなってもいいのでしょうか?それは間接的に体罰を容認しているのと同じことです。

     

    体罰において大切なのは、体罰があったのか、なかったのか。それだけです。体罰があれば、それは罰せられるものなんです。

     

    しかし、ケースによっては情状酌量などがあるかもしれません。しかし、それをもって体罰を正当化することはできません。

     

     

    ◆体罰をなくすために

    体罰をやりたくてやりたくて仕方がないという人は少ないと思います。多くは、カッとして感情的になり、体罰をおこなってしまうのではないかと思われます。

     

    ゆえに、体罰を行わないように環境を整える(ルールの明確など)、体罰を行わなくても済むように指導能力を高める、といったことが大切なのではないでしょうか。

     

     

    【資料】

    (1)平成28年度厚生労働科学研究費補助金 健やか次世代育成総合研究事業「子どもを健やかに育むために~愛の鞭ゼロ作戦~」

    (2)Reduced prefrontal cortical gray matter volume in young adults exposed to harsh corporal punishment.[PMID:19285558]

    (3)Exposure to parental verbal abuse is associated with increased gray matter volume in superior temporal gyrus.[PMID:20483374]

    (4)Gershoff.Report on physical punishment in the United States:What resaearch tells us about its effevts on children.Columbus,OH:Center for Effective Discipline.2008

    (5)Spanking and child outcomes: Old controversies and new meta-analyses.[PMID:27055181]

    (6)怒る!日本文化論、パオロ・マッツァリーノ、技術評論社、2012]

    (7)エラい人にはウソがある、パオロ・マッツァリーノ、さくら舎、2015

    (8)日本行動分析学会『「体罰」に反対する声明』

     

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