◆はじめに
この患者さんはどのくらい動けるのかな?
ベッドにいる患者さんをみて、そんなことを考えることがよくあります。
今回は、簡易に運動機能(ADL)を予測する方法を、ご紹介したいと思います。
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◆ベッドで足あげ・膝伸ばしから予測
ベッドで端坐位になり、足あげ(股関節屈曲)と膝伸ばし(膝伸展)で、大まかにADLを予測できます(1)。
(1)方法
足あげと膝伸ばしの上がり具合をみます。
(2)判定
・ほとんどあがらない→立てない
・上がるが不十分→介助で立てる
・十分上がる→自力で立てる筋力あり
これは大まかな目安ですが、スクリーニングとしては、やりやすいかなと思います。もちろん、併存疾患や認知機能などを考慮する必要はありますね。
◆ブリッジ動作から予測
端坐位ができない患者さんもいると思います。そんなときには、ブリッジから運動機能(ADL)を予測できます。
ブリッジ動作は、リハビリでもよく見受けられる運動療法です。
理由としては、急性期や耐久性が低下しているために、離床が難しい患者さんでも、ベッド上で簡易にできるためだと思います。
(1)方法
殿部を挙上する。体幹が水平になるまで挙上できれば、十分(可能)とする。
(2)判定
・不可→座位は困難
・不十分→介助で座位ができる
・可能→自力で座位が可能
市橋の報告によれば、ブリッジ動作は、健常成人にて2割程度の筋活動量であるとされています(2)。
資料(2)より引用
ちなみに、
・B1が一般的なブリッジ、
・B2が片側(一足)だけのブリッジ、
・B3が直径40cmのボールの上に両足を置いた状態でのブリッジ、
・B4が片側(一足)だけのボールブリッジ、
・B5が徒手的に最大抵抗をくわえたブリッジ、
になっています。
ブリッジするときに、効果をあげたいなら、抵抗をくわえたほうがいいかもしれませんね。
それにしても、ブリッジの筋活動は思ったより少ないんですね。
しかし、高齢者では筋量が減少しており、ブリッジの動作ができないということは、ADLに必要な筋量が低下していることが推察されます。
(3)東京慈恵会医科大学の報告
「廃用症候群患者でのブリッジ動作とADLの関係」について、東京慈恵会医科大学の報告があります(3)。
これは、ブリッジ動作の可否(体幹を水平まで挙上できるか?挙上できないか?)と、ABMS得点の関係を調査したものです。
ABMSというのは、Ability for Bacic Movement Scaleの略語で、東京慈恵会医科大学で用いられている基本動作評価法です(4)。
寝返り、起き上がり、座位保持、立ち上がり、立位の6段階の自立度を、スコアリングしたものです。詳しい評価内容については、後述していますので、参照にしてください。
結果は以下のようになりました。
資料(3)より引用改編
これは、ブリッジで体幹を水平まで挙上できる群と、できない群でのABMS測定値の中央値で比較をしたグラフです。すべての項目で有意差がみられました。
ブリッジができる群は、ADL(寝返り~立位保持)が完全自立でした。ブリッジができない群は、ADLが低下していました。
つまり、挙上ができない人は、運動機能(ADL)の低下が、大まかに予測できるわけですね。
(4)ABMSについて
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【検査項目の説明】
「仰臥位から寝返り」:患者はやりやすい方向に仰臥位から側臥位へ寝返りをうつように指示される。
「起き上がり」:仰臥位からベッド上端坐位になるよう指示される。
「座位保持」:30秒以上、座位保持をするよう指示される。
「立ちあがり」:ベッド端坐位から、床に足をつけた状態で、ベッドサイドに立つよう指示される。
「立位保持」:30秒以上、立位保持をするよう指示される。
【能力のグレード】
1=移動が禁止:患者は、不安定なバイタルサインや合併症などの医学的な問題のために、動作が禁じられている。
2=全介助:他人の介助が75%以上。
3=部分介助:他人の介助が75%以下。
4=監視:動作をおこなうときに、身体への接触はなく、口頭での手がかりやジェスチャーなどが必要。
5=環境によっては自立:手すりやベッドの端をもって動く。
6=完全自立:手すりやベッドの端を持たなくて動く。
【資料】
(1)フィジカルアセスメント完全攻略BooK、曷川元、慧文社、2014
(2)市橋則明、各種ブリッジ動作中の股関節周囲筋の筋活動量 : MMT3との比較、理学療法科学 13(2)、79-83、1998
(3)臨床データから読み解く理学療法学、安保雅博監修、南江堂、2017
(4)Revised version of the ability for basic movement scale (ABMS II) as an early predictor of functioning related to activities of daily living in patients after stroke.[PMID:20140415]
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