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責任感が強い人は認知機能低下のリスクが35%減少する!

忙しい人のための要約
真面目に生きていると死亡リスクや認知機能の低下リスクが低下するという報告があります。欧米では真面目に生きるタイプAの人は虚血性心疾患にかかりやすくなるといわれていますが、日本人には当てはまらないという報告があります。自分に適した生き方を見つけることが大切なのかもしれません。

 

◆はじめに

人間はどう生きていくのがいいのか?非常に難しい問題です。

 

哲学者のサルトルは「実存は本質に先立つ」と言いました。簡単に言えば、生きかたというのは、自分で決めていかなければならないということです。

 

じつは生きかたというのは、寿命や認知症にも関わってきます。最近出た報告をまじえてご紹介したいと思います。

 

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目次

◆誠実な人は認知障害にかかるリスクが減少する

先月のはじめ(2017年9月)に、Sutinらが誠実性(Conscientiousness)と認知症のリスクに関する論文を『Psychological medicine』に発表しました(1)。

 

対象は、Health and Retirment Studyで「誠実性」の因子を測定しており、6年間フォローアップした1万1181人です(1回以上の認知機能測定を実施)。

 

Cox回帰分析を用いて、認知症の発症リスクと認知症以外の認知機能障害(CIND:cognitive impairment not dementia)の発症リスクを調査しました。

 

結果は以下のようになりました。

 

・1万1181人のうち、278人に認知症、2186人にCINDが発症しました。

責任感(responsibility)は、認知症の発症リスクともっとも強い関連性があり、責任感は認知症の発症リスクを約35%低下させた。

自制心(self-control)と勤勉性(industriousness)も発症リスクを低下させる傾向があった。

・関連性は臨床的、行動的、および遺伝的リスク要因で調整した場合でも、一般的に類似していた。

責任感、自制心、勤勉性は、CINDの発症リスク減少の独立した予測因子だった。

 

 

いわゆる誠実な人(責任感がある、自制心がある、勤勉である)は、認知機能が低下するリスクが減少するということですね。

 

 

 

◆誠実な人は死亡率が低下する

以前の記事で、誠実な人は死亡リスクが37%減少するという研究を紹介しました(『不誠実な人は死亡リスクが1.4倍になる』参照)。

 

資料(2)より引用

 

誠実に生きると、認知機能低下だけでなく死亡リスクも減少するんですね。

 

中国の思想家である韓非子は巧詐は拙誠に如かず(人を巧みにあざむいたりすることは、つたない誠意に及びません)」と言いましたが、言い得て妙かもしれません。

 

しかし、生真面目に生きすぎると早死にするとも聞きますね。

 

 

 

◆真面目すぎても早死にする?~タイプAについて~

1959年、アメリカのFriedmanとRosenmanは、性格・行動パターンが攻撃的、挑戦的で、責任感の強い人ほど、こうした心・血管疾患になりやすいと考え、このような性格・行動パターンの人をタイプAと定義しました。

(中略)

タイプAを心筋梗塞・狭心症の危険因子として最初に確認したのは、Western Collaborative Group Study研究です。この研究では、カリフォルニアの10企業、3,154名の健康男性を8.5年間、追跡し、心疾患発症頻度がタイプAではタイプBに比較して2.37倍高いことが示されました。

また、米国フラミンガム地域の住民調査においては、4年、8年、さらに10年の追跡調査の結果、心筋梗塞や狭心症の発症頻度が、タイプAでは男性で1.4~1.8倍、女性では2.0~3.0倍であることがわかりました。

日本心臓財団

 

タイプAというのはよく言われますね。しかし、日本人にはあてはまらないという報告もあります。

 

 

 

◆タイプAは日本人には当てはまらない?

「タイプA行動パターンと虚血性心疾患発症との関連」について、全国9か所、40~69歳の男女約8万6000人の方々を対象にして、1990年から2003年まで追跡した調査があります(3)。

 

資料(3)より作成

 

タイプBというのは、タイプAとは対照的な内向的で、のんびりしており、目立たない性格のことを指しています。

 

男性では、「タイプB」グループが「タイプA」グループと比較して、虚血性心疾患の発症リスクが有意に高いことがわかりました(約1.3倍)。傾向に関しても、統計的に有意差が認められました。

 

女性は統計学的な有意差はないですが、「タイプB」グループが「タイプA」と比較して、発症リスクが低いという傾向が見られました(約0.8倍)。

 

つまり、男性ではタイプB(内向的で、のんびりしており、目立たない性格)の人のほうが死亡リスクが上昇していて、女性ではタイプBの人のほうが死亡リスクが減少する傾向があったわけですね。

 

この報告は人種や性別など、いろいろな視点から解釈できそうですね。

 

いずれにせよ、「統計の傾向が○○だから○○で生きよう」なんていうのは、よろしくありません。大切なのは、自分に適した生き方を試行錯誤しながら見つけることではないでしょうか。

 

【資料】

(1)Facets of Conscientiousness and risk of dementia.[PMID:28874220

(2)長生きの統計学、川田浩志、文響社、2017

(3)Type A behaviour and risk of coronary heart disease: the JPHC Study.[PMID:18593749]

 

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