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◆プロローグ
でも、理学というのは深い意味があるんですよ。
~本編で説明~
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◆はじめに
理学療法士という資格がはじまって、50年。
認知度は低いままであり、理学療法士と作業療法士のちがいを知っている人は少ないと思います。医師でも明確な違いを知っている人は少ないのではないでしょうか。
そもそも理学療法士という言葉がむずかしいですよね。そんなことを思って、こんなことをつぶやきました。
https://twitter.com/SGM31214252/status/886917927059849217
すると、いろいろなご意見・情報をいただきましたので、すこし掘り下げて考えてみようと思います。
◆理学療法士・作業療法士の名称の変遷
1940年代から、医師の欧米諸国への視察・研修などにより、リハビリテーションとその専門職の必要性が指摘されるようになりました。
ちなみに1949年の東京大学医学部附属病院には、「物療内科」という理学療法のさきがけとなる診療科がありました。
ひとまず、そのあたりの経過をすこしふり返ってみます(資料3をもとに1、2、5を加えて作成)。
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とくに1962年の厚生白書の名称については、このように記されています。
リハビリテーション対策を実施するにあたって最も基本的なものは専門技術者の確保である。医師、看護婦のほか、機能療法士、職能療法士、言語療法士、心理療法士、社会事業担当者などの専門技術者を確保し、リハビリテーション施設に配置することはリハビリテーション施設運営のために必須条件である。
(厚生白書昭和37年版)
当時の厚生白書では、理学療法士(ほかのページ)・機能療法士・職能療法士といった言葉が使われています。このあたりの事情は複雑なので、簡単に説明します。
1940~1950年代、理学療法・作業療法という言葉は、
・看護では理学療法(内容としては現在の物理療法にちかい)
・内科では物理療法
・整形外科では機能療法(=理学療法)・職能療法(=作業療法)
・精神科では現在とおなじく作業療法
と各方面で多様な言葉が用いられていました。
そこで、リハビリテーションの概念がはいってくるとき、厚生省(現厚生労働省)に設けられていた「PT・OT身分制度調査打合会」(訳語が決まっていたなかったのでPT・OTになっている)にて、全会一致で理学療法士と作業療法士の名称で、統一化することが採択されました。
◆理学という言葉は多面的だ
先述したように、1940~50年代の日本では、理学療法のかわりに、物理療法・機能療法という言葉が用いられていました。
一般的に考えれば、Physical Therapistという言葉を訳すときに、物理療法士または機能療法士になりそうなもんです(ちなみに法律的には、機能療法士は理学療法士と同義になっています)。
実際に台湾などでは、物理治療室などと訳されています。
写真提供:すぎっしゅ@ウズベクブロガー
わたしも最初は、ツイートしたように「理学なんてわけのわからん言葉をなぜ使うのよ!?」と思っていました。
しかし、「理学」という言葉が採択されたのには、大きな意義があったんです。
そもそもPhysicalというのは、「物理学の、身体の、自然の」といった意味があります。
たいして、理学には「物理学・化学・天文学などの総称。自然科学」といった意味があります。
つまり、理学のなかに物理学があるわけです。
学問としては、理学のほうが広範なわけです。理学が上位で、物理学が下位ということではないと思います。学問に上下はないと思っていますので。
しかし、人を対象にする医学であるならば、広範な知識があったほうがいいと思います。
これは「脱専門家のすすめ」「専門外を学ぶことで専門性がみえてくる」でも指摘しました。
日本では、物理療法や機能療法といった限局的・狭義的(一面的)な言葉ではなく、全体的・広義的(多面的)な理学療法という言葉を採択したのは、非常に意義深いものがあるなぁと思いました。
アメリカでは、Physical Medicine & Rehabilitation(PM&R)という言葉が使われています。アメリカでは、物理医学とリハビリテーションとは、異なる概念なんです。
もしかしたら、日本の理学療法という言葉は、アメリカのPhysical Medicine & Rehabilitationを包括的に概念化した言葉といえるかもしれません(勝手な私見です)。
作業療法については、細かく調査できていません。しかし、作業療法も、職能という狭義の意味合いから、広義の作業という意味合いへと変化したのではないでしょうか。
◆提言!理学療法・作業療法を慣用読みにしたらどうか?
しかし、理学療法や作業療法という言葉が、不明瞭であるという側面も否めません。
しかし、理学療法・作業療法という言葉には、先人たちの深い意義も含まれています。
そこでもっと親しみやすい慣用読みを導入したらどうでしょうか?
慣用読みというのは、正式な読み方ではないけど、一般的に読まれている読み方ということです。
そんなのあるの?と思った人がいるかもしれません。しかし、
・捏造(ねつぞう)
・杏仁(あんにん)
・重複(じゅうふく)
・漏洩(ろうえい)
・攪拌(かくはん)
などは慣用読みが一般的になっています。
正しい読み方は、
・捏造→でつぞう(ねつぞう)
・杏仁→きょうにん(あんにん)
・重複→ちょうふく(じゅうふく)
・漏洩→ろうせつ(ろうえい)
・攪拌→こうはん(かくはん)
しかし、「読み方は正しくあるべきだ!」って思う人がいるかもしれません。
でも、「日本」ってどう読んでますか?
にほん?
にっぽん?
じつはどちらでもいいんです。世界で唯一です。国名がでひとつではないのは。
「にっぽん」、「にほん」と読まれる。どちらも多く用いられているため、日本政府は正式な読み方をどちらか一方には定めておらず、どちらの読みでも良いとしている。
(Wikipedia)
日本には、こういういいかげんなところを許容する文化があります。
もっと親しみやすい慣用読みを、使ってみるのもいいんじゃないですかね。
たとえば、理学療法士と書いて、リハビリ士と読むみたいな。メタボリックシンドロームも代謝症候群だったら、いまのように認知されてないでしょうから。
ぜひ、PT・OT協会は慣用名を公募してください(笑)
【資料】
(1)武富由雄:歩んだ理学療法士の道程50年、理学療法学、42巻8号、744‐746、2015
(2)砂原茂一:新しい理学療法士と作業療法士の世界、理学療法と作業療法、4‐8、1967
(3)理学療法の基層、藤澤宏幸、北樹出版、2016
(4)実学としてのリハビリテーション概観、奈良勲編集主幹、文光堂、2015
(5)理学療法概論、奈良勲編集、医歯薬出版、2013
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