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ライザップのリハビリテーション介入についての考察

忙しい人のための要約
ライザップのリハビリテーション介入は、真実をもとめるという点において、とてもすばらしいことです。理学療法士も、ライザップに後れをとらなうように、学術的な活動のみではなく、対外的な活動にも力を入れる必要があるのかもしれません。

 

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◆はじめに

ライザップがリハビリテーション分野への介入を発表しました。

 

リハビリテーションにたずわさる理学療法士・作業療法士にとっては、職域の危機になるかもしれない大事件です。

 

しかし、これは時代が変化するうえで、至極当然なながれなのかもしれません。

 

すこし考察してみました。

 

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目次

◆ライザップと東大病院が共同で臨床研究へ

東大病院が、以下のように発表しています。

 

東京大学医学部附属病院22世紀医療センター 肥満メタボリックケア(社会連携講座)は、東京大学とライザップ株式会社との共同研究として、臨床試験「運動・栄養介入による胃癌周術期のサルコペニア予防効果に関するランダム化比較試験」を9月より開始する予定です。

加齢などに伴う骨格筋量の低下はサルコペニアと呼ばれ、近年注目されている社会的課題です。

本研究は、胃癌手術の前後の運動・栄養療法で術後のサルコペニアが予防できるかを検証することを目的としています。

東京大学医学部附属病院 胃・食道外科にて胃癌手術を受ける高齢者を対象とした、ランダム化比較試験として行われます。

試験群に割り付けられた場合は、手術の前後、運動トレーニングと補助栄養食品摂取を行います。術後のサルコペニアの有無や治療経過、血液検査所見などを解析し、その妥当性を検証します。

高齢化、肥満人口の増加が大きな社会問題となっており、その対策として、運動・栄養管理は非常に重要となっています。

日本人の高齢者に合わせた適切な運動・栄養療法の検討を行うことは、安全な手術やがん治療の提供につながると同時に、一般高齢者の健康維持・増進に大きく寄与するものと考えられます。

『東大病院HP』

 

どう考えても「がんのリハビリテーション」ですね。それも、運動だけではなく、栄養を考慮した先駆的なものになっています。

 

理学療法士、作業療法士にとって、これは大きな事件(転換点)ともいえますね。

 

 

◆理学療法士・作業療法士は不必要?

 

リハビリテーション(理学療法・作業療法)の包括化をすすめる動きもあります。

 

いままでは、介入した分だけ診療報酬を得られていましたが、いくらやっても同じ金額になるということですね。

 

リハビリって、病院にとっては稼ぎ頭であることは間違いないと思います。しかし、もし包括化された場合、理学療法士・作業療法士の価値が低下することは否定できないような気がします(金銭的な面で)。

 

そして、今回のライザップが結果を出したとすると、どういう方向にすすんでいくのか、さらにわからなくなりますね。

 

混合診療も検討されていますし、リハビリは外部に委託?なんてこともあり得るかもしれません。

 

 

◆リハビリはPT・OTだけのものではない

https://twitter.com/SGM31214252/status/894882896363663361

 

しかし、ライザップのリハビリテーション介入は、理学療法士や作業療法士にとっては職域の危機かもしれませんが、患者さん視点で見れば、治療の選択肢が広がり、より効果のある治療をうけられる可能性がひろがるわけですね。

 

また、自費につながれば、医療費もさがるわけですから、国益にもなります。

 

そもそも、リハビリテーションというものは理学療法士・作業療法士だけのものではないんですよね。

 

リハビリテーション専門職なんていう言葉もあまり好きではありません。理学療法士は理学療法の専門家で、作業療法士は作業療法の専門家だとおもいます。

 

三好正堂医師は、日本のリハビリが不十分になってしまった理由は、リハビリをおこなえるのが療法士だけという思い込みが、蔓延しているからだと警鐘をならしています。

 

べつに看護師さんが離床をおこなって、歩行訓練をおこなってもいいんです。医者が筋力訓練してもいいんです。

 

そういう点では、ライザップがリハビリテーション介入をするのは、なんら問題はありませんよね。

 

 

◆セラピストもライザップも、真実をもとめるのは同じ

三谷幸喜監督の作品『ステキな金縛り』のなかで、中井貴一さん演じる弁護士のセリフに、つぎのようなものがあります。

 

「我々(弁護士と検事)は敵ではない。真実を求めるという意味では、むしろ味方同士だ。われらのほんとうの敵は、真実を隠そうとする者たちです」

 

ライザップがリハビリに介入することに、敵意をもつというのはナンセンスかもしれません。

 

「患者さんの健康のためになにができるか?」という真実を求めるという意味では、セラピストもライザップも味方同士なんですね。

 

自分の既得権益だけに執着して、新しいものを排斥しようとする人たちこそが、本当の敵なんです。

 

 

◆変化に適応することが生き残る道

「種の起源」を著したチャールズ・ダーウィンの言葉に、つぎのようなものがあります。

 

「もっとも強いものが生き残るのではなく、もっとも賢いものが生きのびるでもない。唯一生き残るのは、変化できるものである」

 

理学療法士も作業療法士も、ながい歴史があるすばらしい職であるとおもいます。しかし、伝統や慣習に固執、またはあぐらをかいていては、時代に取り残されるのは自明です。

 

時代は刻々と変化しています。

 

ライザップのリハビリテーション介入も、その一端にほかなりません。もし、ライザップがこの研究で成功をおさめれば、ほかの民間企業も、リハビリ分野に介入してくる可能性は大きくあります。

 

セラピストもうかうかとしてはいられません。

 

 

◆学術も大切だけど、対外的な活動も大切

 

理学療法士は、学術的にしっかりとやっている人が多くいるとおもいます。統計分析していない発表は、あまり見ません。

 

しかし、内輪だけで褒めあっても、あまり意味はないんですよね。医師や厚生労働省、一般の人たちに、そういうことをどんどん周知して、認めてもらうことが大切な気がします。

 

すばらしいことを書いてある本があっても、その存在を知られなければ、世の中に存在しないのと同じです。

 

理学療法士(協会)は、そういう対外的なアピールがヘタな気がします。

 

論文をいくら書いても、人口に膾炙(人々の話題にあがり、ひろく知れわたる)しなければ、あまり意味がありません。

 

竹井仁先生の、筋膜リリースがメディアに取りあげられ、おおきな反響がありました。ああいったことは、とても大切な気がします。

 

ライザップに後れを取らぬよう、理学療法士も変化していきましょう。どう変化したらいいのかは、検討する必要がありますが(笑)

 

いずれにせよ、患者さんに選ばれずに淘汰されるかどうかは、セラピストがどう変化できるかにかかっているのではないでしょうか。

 

 

【資料】

(1)間違いだらけのリハビリテーション、三好正堂、幻冬舎、2015

(2)ステキな金縛り、三谷幸喜監督、2011

 

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