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【レッドフラッグ・イエローフラッグ】腰痛の原因を解説

忙しい人のための要約
腰痛の多く(約8割)は原因が不明の非特異的腰痛です。腰痛の原因(因子)は様々あり、内臓・がんといった危険な腰痛(レッドフラッグ)、心理社会的因子が原因のイエローフラッグ、社会経済的因子が原因のブルーフラッグ、職業的因子が原因のブラックフラッグなどがあります。

 

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目次

◆はじめに

腰痛のレッドフラッグについて書く前に、腰痛の基礎的知識(情報)をまとめていこうと思います。今回は腰痛の原因について調べてみました。

 

 

◆腰痛の大半は原因不明

Jeffreyらの報告によると、腰痛患者の診断は以下のようになっていました(1)。

 

非特異的腰痛 原因

資料(1)より作成
 

機械的(筋骨格系)の原因が97%をしめていました。残りの3%が内臓疾患や悪性新生物(がん)、感染症などが原因の腰痛でした。

 

機械的原因の7割以上は、原因不明(非特異的腰痛)と診断されていました。形式的に、筋肉の緊張や捻挫によるものとされていました。おそらく、原因不明の大半は、筋筋膜性疼痛症候群(MPS)だと思っています。

 

追記:

2016年に報告された山口県腰痛スタディによれば、8割は原因がわかる特異的腰痛であるとされています(参照:山口県腰痛スタディ~腰痛の原因の8割はわかる!?~)。しっかり精査することが大切です。

 

 

◆腰痛~5種のフラッグ~

腰痛は原因(因子)によって、カラー(色)で区別されています。

 

挙げてみますと、グリーンライト・レッドフラッグ・イエローフラッグ・ブルーフラッグ・ブラックフラッグです。概要は以下のようになっています。

 

腰痛 レッドフラッグ イエローフラッグ

資料(3)より引用作成

 

グリーンライト

自己限定性疾患(非特異的腰痛・神経根症状を含む)のことであり、安全な腰痛のことです

 

グリーンライトの患者は6週間以内に90%が自然治癒します。神経根症状は全腰痛患者の5~10%におこり、6週間以内に50%が治癒するとされています(2)。

 

 

レッドフラッグ

生物学的危険因子のことであり、早急な医学的介入・処置が必要な腰痛(兆候)のことです。レッドフラッグについては、『概論~レッドフラッグについて~』を参照にしてください。

 

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イエローフラッグ

腰痛 BPSモデル 心理社会的危険因子

資料(3)より引用改編

 

心理社会的危険因子のことです。心理社会的という用語は、社会環境が人の行動に与える影響との相互作用を意味しているのだそうです。

 

レッドフラッグには医学的介入が必要とされていますが、イエローフラッグには認知行動療法的介入が必要といわれています(4)。

 

なぜ腰痛にイエローブラッグ(心理社会的因子)の評価が必要なのでしょうか?急性腰痛と危険因子ガイド』より引用します。

 

長期就労障害の危険因子に関する研究の多くは、結果に一貫性が認められないか、慢性疼痛の条件を満たしていないものばかりである。

ただし腰痛だけは例外で、この5年間、腰痛には大きな関心が寄せられ、実証的研究も数多くされてきた。そこで明らかになった危険因子の大部分は心理社会的なものであり、これは適切な介入が可能であることを示唆している(特に”危険な状態にある”患者と判定された場合)。

 

簡単にいえば、心理的・社会的なもので腰痛がおこっている可能性もあるから、きちんと調べておきなさいよということだと思います。

 

慢性痛 ループ Fear-Avoidance-Model

資料(3)より引用改編

 

上の図を見てください。たとえば腰痛がおこり、それを自覚したとします。「こんなもんほっときゃ治るわ」と楽観的にいれば、大半は自然に回復します。

 

しかし、痛みへの恐怖を感じてしまうと、痛みを回避しようとします。痛みをおこさないように過度の安静や活動量の低下、うつ状態になってしまうと、それがさらに痛みを自覚し、痛みの恐怖が……と悪循環になってしまうんですね。

 

 

ブルーフラッグ

職場に関連した問題のことです。

 

肉体労働・満足度の低い仕事・職場の社会的支援不足・ストレスの多い仕事・労働環境や作業内容の変更が不可能・労使間のコミュニケーション不足などがあるようです。

 

 

⑤ブラッグフラッグ

患者をとりまく社会的問題のことです。

 

会社や医療関係者との意見の不一致・保障問題・各種手続きの遅延・恐怖心をあおるメディアに対する過剰反応・家族からの否定的反応・社会的孤立や社会的機能不全・役立たない職場復帰計画などがあるようです。

 

 

◆痛みの原因は複合的

ブルーフラッグやブラックフラッグは、イエローフラッグにまとめてもいいような気がします。あまり細分化しすぎても、よくわかりませんから。

 

大切なのは、痛み(とくに慢性痛)の原因は器質的・機能的なものだけではなく、心理的や社会的なことも考慮する必要があるということです。

 

慢性疼痛 BPSモデル

資料(5)参照作成

 

【資料】

(1)Diagnostic evaluation of low back pain with emphasis on imaging.[PMID:12353946]

(2)Back pain and sciatica.[PMID:2961994]

(3)Musculoskeletal pain.[PMID:12217996]

(4)『急性腰痛と危険因子ガイド』、ニュージーランド事故補償公団(長谷川淳史)、春秋社、2010

(5)痛覚のふしぎ、伊藤誠二、講談社、2017

 

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