2008年、Journal of Personality and Social Psychologyという学術誌に「Romantic red: red enhances men’s attraction to women.(ロマンティックレッド:赤色は男性から見た女性の魅力を高める)」という論文が掲載されました(1)。
まずは実験内容から説明していきたいと思います。とくに難しいことはなく男性に女性の写真を見せて、その女性の魅力度を9段階(1:全く魅力的ではない~9:非常に魅力的)で評価するといういたって簡単なものです。
写真の女性は上半身のみ、茶色の髪でストライプのシャツを着て笑みを浮かべています。事前に調査された魅力度は平均6.73でした(9点満点中)。そして、その写真の背景を赤色と白色にわけて実験の参加者(男子学生27人・平均年齢20.52歳)に呈示します。イメージとしては以下のような感じです。
そして、男子学生に赤と白の写真のどちらかをランダムに5秒間見せて、魅力度を調査しました。結果は以下のようになりました。グラフを見てもらえばわかるように赤色のほうが有意に魅力度が上がっていました。こういった赤色の魅力度を上げる現象を「ロマンティックレッド(Romantic red)」と呼びます。
資料(1)より引用改編
また白以外にも灰色や緑色、青色でも同様に実験をしてみました。結果は以下のようになりました。白色のときと同じように灰色・緑色・青色とくらべても赤色のほうが魅力度が高いという結果でした。
資料(1)より引用改編
この報告ではほかにも実験をしています。それは男性のみでなく、女性(同性)でも赤色のほうが魅力的に見えるかどうかを調査したものです。
実験の方法はさきほどと同じで、今回の実験には63人の学生(男性31名・女性32名)が参加しました。結果は以下のようになりました。さきほどの実験と同じく男性は赤色の女性を見ると魅力度が高くなりましたが、女性ではこのような効果は認められせんでした。
資料(1)より引用改編
それにしてもなぜ赤色が魅力度を高めるのでしょうか?論文の筆者であるElliotらは進化的なものではないかと主張しています。
たとえばマンドリルのオスは発情時に赤色を示すメスに対して欲求的反応を起こすことなどを例にあげています。ほかにもヒヒやチンパンジーのメスは排卵時に胸部や生殖器を赤くし、オスの誘引行動を増加させることが報告されています(2)。
つまり、進化生物学的に赤色は性的な刺激を男性に与えることから女性の魅力度が上がったのではないかということですね。よくよく考えてみれば女性は赤いマニュキュアを塗ったり、口紅を塗ったりしますから赤色がそういう刺激をもっていることを無意識に感じ取っているのかもしれません。
さて、今回の実験が女性の背景を赤色にしただけでしたが、実際に赤色の服を着ても魅力度は変わるのでしょうか?その報告もありますので、また紹介しようと思います。
【資料】
(1)Romantic red: red enhances men’s attraction to women.[PMID:18954199]
(2)Kayser,N.D et al.(2010).Red and romantic behavior in men viewing women.Eur. J. Soc. Psychol. 40, 901–908.