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◆名称
正式名称:Functional Reach
略語:FR
日本語名称:機能的上肢到達検査
◆原典
Duncan PW, Weiner DK, Chandler J, Studenski S:Functional reach: a new clinical measure of balance.J Gerontol 45 : M 192-197, 1990.[PMID:2229941]
◆適用・特徴
小児から超高齢者の幅広い年齢層のバランス評価に使用でき、少なくとも5歳から104歳までの結果が報告されています。
疾患の適用も広く、地域在住高齢者・虚弱高齢者・脳血管障害・頭部外傷・パーキンソン病・多発性硬化症・腰痛症・糖尿病・足趾切断などの報告があります。
計測は簡単におこなえて、特別な技術も必要ありません。慣れてくれば、短時間で実施できます。
上肢を使用する検査のため、随意性低下(麻痺)や筋力低下がある場合などは、不適になります。
◆再現性(信頼性・精度)
再現性とは、簡単にいうと誰がやっても何度くりかえしても同じ結果がでるかどうかという指標のことです。
検査者内の再現性は、級内相関係数(Intraclass correlation coefficient:ICC)という指標が用いられます。
ICCは1回目の測定値と2回目の測定値の一致度であらわされます。
ICCが1のときに、完全に一致していることを意味し、0.7以上であれば良好であると判断できます。
以下のデータからも、ファンクショナルリーチテストの再現性が高いことがわかっています。
(1)検査者内信頼性
検者内信頼性とは、おなじ人がなんど評価をおこなっても、同じ結果がえられるかどうかということです。
・認知障害のない高齢者:ICC=0.92
・痙性をともなう小児:ICC=0.87~0.98
(2)検者間信頼性
検者間信頼性とは、だれが評価をおこなっても、同じ結果がえられるかどうかということです。
・21~87歳の健常成人:ICC=0.98
・5~15歳の小児:ICC=0.98
(3)日内・日間信頼性
・健常人:ICC=0.92
・パーキンソン病:重症度によりICC=0.42~0.93
◆正確性(妥当性)
正確性とは、その検査の結果が、どのくらい正確な情報を情報を与えてくれるかを示す概念です。
正確性はテストの目的と関連があり、目的によって正確性が高くなったり、低くなったりします。
基準関連妥当性
基準関連妥当性とは、ほかのテスト(評価)の結果と、どれくらい関連があるのかということを意味しています。
・歩行速度:r=0.71
・継ぎ足歩行:r=0.67
・片脚立位保持時間:r=0.66
・IADL(Lawton):r=0.48
・ADL(Katz):r=0.65
「r」というのは相関係数のことで、目安は以下のようになります。
[table id=3 /]
◆測定方法
(1)準備
道具:物差し(定規やメジャーなど)、それを固定するもの(テープなど)
測定場所:立位になって、前方に2m程度の空間があるところ。
(2)注意
・検査中に転倒することが考えられます。検査をするときは、椅子を置いておく、見守り役をつけるなど注意しましょう。
・開始姿勢(重心など)が変わると、結果も変わるため注意しましょう。
・上肢の高さが変わる、足の踏み出しがあるときはやり直しましょう。
・対象疾患や目的に応じて、非利き手の検査を実施し、左右の結果を比較するのもありです。
(3)手順
①対象者の肩峰の高さに物差しをあわせ、壁などに固定します。
②靴と靴下を脱いで、自然な開脚位で立位を保持し、利き手の肩関節を90度屈曲します。安定しない場合は、足踏みなどをさせてみましょう。開始姿勢は大切で、とくに体幹前方回旋・体幹屈曲がおこらないようにします。
③屈曲したほうの手指を軽くにぎり、第3指中手骨の末端の位置を読みとります(A)。計測するのが指先ではないことに注意しましょう。
④壁にもたれかかることなく、物差しにそって可能な範囲で上肢を前方にのばします。上肢の高さは変えないようにしましょう。
⑤支持基底面を変えずに、もっとも遠くまで到達した位置を読みとります(B)。踵を挙上するのは可、踏みだしは不可。
⑥BからAを引いた値を到達移動距離として記録します。
計測は全部で5回おこない、はじめの2回は練習、その後の3回を検査結果として記録します。
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◆基準値・カットオフ値
小児(5~15歳)では、21.17~32.30㎝。
成人では以下の表のようになっています。
性・年代別基準値(資料1より引用改編)
[table id=4 /]
年代別基準値(資料4より引用改編)
[table id=6 /]
70~80代の高齢者を対象にした研究では、到達距離が18.5㎝未満で転倒のリスクが高くなる(感度75%・特異度65%)と報告されています(6)。
また、FRが25.4㎝以上の高齢者と比較すると、6か月の転倒リスクが以下のように報告されています。
到達移動距離と転倒リスク(資料1より作成)
[table id=5 /]
◆文献による情報
・パーキンソン病患者は、31.75cm未満で転倒リスクが高くなる(感度86%・特異度52%)という報告があるが(7)、転倒リスクの予測はFRだけでは不十分(感度30%・特異度92%)である(8)。
・脳卒中片麻痺患者は、15㎝未満で転倒リスク(感度75%・特異度67%)が高い(9)。
・リハビリテーションの効果を示すよい指標になる(10)。
・座位で計測したFR報告がある(11)。
・FRの数値に影響をおよぼす因子は、15%が足圧中心移動距離、85%は筋力や可動域である(12)。
【資料】
(1)臨床評価指標入門、内山靖ら編集、協同医書出版社、2003
(2)PT・OT・STのための診療ガイドライン活用法、中山健夫監修、医薬歯出版株式会社、2017
(3)すぐできる!リハビリテーション統計、山本澄子ら監修、南江堂、2012
(4)高齢者の機能障害に対する運動療法、市橋則明、文光堂、2010
(5)理学療法のとらえかた、奈良勲編集、文光堂、2003
(6)A pilot study to explore the predictive validity of 4 measures of falls risk in frail elderly patients.[PMID:16084819]
(7)Predicting falls in individuals with Parkinson disease: a reconsideration of clinical balance measures.[PMID:16796770]
(8)Is the functional reach test useful for identifying falls risk among individuals with Parkinson’s disease?[PMID:11932858]
(9)The effect of arm sling on balance in patients with hemiplegia.[PMID:20888770]
(10)Does functional reach improve with rehabilitation?[PMID:8347063]
(11)The effect of predictable and unpredictable motor tasks on postural control after traumatic brain injury.[PMID:12237503]
(12)Does the functional reach test reflect stability limits in elderly people?[PMID:12610845]
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