忙しい人のための要約
    孤独感は健康リスクを高めることがいわれている。孤独は悪循環に入るとなかなか抜け出せないため、精神論ではなく具体的な解消法が必要である。そのひとつとして「情けは人の為ならず」で他人のために役立つことをすることが挙げられる。

     

     

    ◆はじめに~『孤独の科学』を読んで~

    先日、『孤独の科学』(以下、本書)という本を読みました。孤独について科学的見地をもとに書かれているのですが、今回は孤独とその対策について書いていこうと思います。

     

     

    ◆孤独ではなく孤独感が健康リスクを高める

    本書では、客観的な孤独ではなく、主観的な孤独感が健康リスクを高める可能性があると言及されています。

     

    友達が1000人以上いても、その人が孤独感を感じていれば、よろしくないということです。つまり、誰しもに孤独の健康リスクはあるのです。

     

    孤立しているという慢性的な感覚があれば、次から次へと生理的な変化が起き、現実に老化のプロセスを加速しうる。

    孤独感は人の行動を変えるだけでなく、ストレスホルモンや免疫機能、心臓血管の機能の数値にも反映される。長期的には、こうした生理的変化が組み合わさり、大勢の人の寿命を縮めかねない。

    『孤独の科学』P26

     

    実際、孤立が体に悪いというデータは調べるとたくさん出てきます。

     

    なぜ孤独感を感じると、そのような生理的な変化がおきるのか? 本書では、孤独が種の保存に危険であり、それを避けるため本能的に孤独を忌むようなシステムが遺伝的に残っているなどを挙げています。

     

    むかしの人類は狩りなどをして生活していたので、集団から疎外されたら生きていけなかったのは想像しやすいですよね。夜は獣たちに襲われぬように火を絶やさないようにしたり、見張りを立てていたかもしれません。ひとりだったらどうでしょう? たぶん、すぐ食べられてしまうでしょう。。。

     

    ゆえに、孤独・疎外を恐れる遺伝子が残っていると考えても不思議はありませんね。

     

     

    ◆イギリスには孤独を担当する大臣がいる

    イギリスには2018年から孤独問題担当国務大臣(Minister for Loneliness)が設置されるようになりました。つまり、国家レベルで孤独に対処しているわけです。

     

    ハフポストによれば、孤独がイギリスの国家経済に与える影響は約4.9兆円にもなるとのこと(参照:「孤独担当大臣」とは? 新設されたイギリス、「孤独」の国家損失は年間4.9兆円)。

     

    日本も超高齢社会となり、孤立死・孤独死が増えていくことが予測されますから、イギリスに続いて国家レベルで問題に取り組んでいくことが重要と思われますね(すでにしているのかな?)。

     

     

    ◆孤独の悪循環に気をつける

    2015年の報告のなかで、『孤独の悪循環』というものが紹介されています(1)。

     

    資料(1)引用改編

     

    たとえば、社会的に孤立している人がいたとしましょう。すると、その人のなかでは、社会から孤立した感覚が生まれます。

     

    社会(他者)とつながりたい、でもちょっと怖いといった警戒心が混ざった感覚が生じ、認知にゆがみが出てきてます。たとえば自分は嫌われている、別にひとりでも生きていけるから関わらなくてもいいや・・・。

     

    そんなゆがみが生じたまま社会(他人)と繋がろうするので、嫌われたり浮いたりする。いまでいえばコミュ障(人とまともに話すことができない、極度の人見知り、どもり、対人恐怖症など)といった感じです。それがまた社会から孤立した感覚を生む・・・といった悪循環になるわけです。

     

    本書でも以下のように書かれています。

     

    孤独感は他者と親しくしたいという欲求を促進する一方で、脅威や恐怖の感情も引き起こす。症状が激しさを増すと、脅威を感じているせいで他者に対して批判的な傾向が強まる。

    『孤独の科学』P140

     

    簡単にまとめると、孤立した感覚によって認知がゆがみ他人に批判的になり、嫌われてしまって、余計に孤立をこじらせるといった感じでしょうか。あなたの周りにもいませんか? ちょっと嫌われていて余計に距離を置かれ、どんどん孤立してしまうような人が。

     

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    ◆孤独感を解消するには他人の役に立つのがよい

    先日、無差別殺傷事件がありましたが、犯人の孤独な生活がクローズアップされています。

     

    そして、孤独なら外に出て働いたらいい、怠けるな、甘えるなといった意見も散見されました。ほぼ意味はないでしょうし、追いつめてしまうなどの逆効果になりかねないとも思うので、無暗に精神論で責めたて、行動を急かすのはやめたほうがよいでしょう。

     

    本書でも以下のように警鐘を鳴らしています。

     

    寂しいからと引きこもったり消極的になったりするのは、脅かされているという認識が動機になっている。危険だと感じずに別の行動を試せるようになるには、安全に実験できる場所を確保し、小さいことから始める必要がある。

    一度にまとめて、人生最愛の人を見つけたり、自分をがらっと変えたりしようなどと、躍起になってはいけない。まずはそっと一歩踏み出してみよう。

    『孤独の科学』P362

     

    いまにも死にそうになっている病人に、いきなり強い薬を飲ませたらそれがもとで死んでしまいます。それと同じで引きこもって孤独を感じている人に、いきなり外に出て働こう!なんていうのは逆効果になりかねません(孤独の悪循環を強化してしまう)。

     

    しかし、無対策にほっておくのも考えものです。外から力を加えないと、歯車はいつまでたっても動き出しません。では具体的にどうしたら孤独から抜け出せるのか。ひとつの打開策として、他人の役に立つというのが挙げられます。

     

    本書でも以下のように勧められています(読みやすさを考慮しカッコなどを割愛)。

     

    役に立っているというのが、人生の目的や意味や充実感にとってプラスとなり、今という瞬間にとてもポジティブな生理的感覚をもたらす。生理的な報酬は、他者に手を差し伸べる行動を続け、さらにはそれを広げる動機にもなりうる。

    やがて、その喜びは生涯に及ぶ情動的な痛みを埋め合わせ、そうした痛みから距離を置けるようにさえしてくれるだろう。

    『孤独の科学』P355

     

    ただし注意することがあります。自己犠牲にならないようにするということ。自己犠牲をしてまで他人に尽くすのはよろしくありません。本書でも以下のように注意喚起しています。

     

    他人のために何かするのは、他人に搾取されるのを許すという意味ではないことにも留意する必要がある。(中略)健全で長続きする関係は自発的な互恵主義の上に成り立つものであり、搾取に基づくものではない。

    『孤独の科学』P366

     

     

    ◆情けは人の為ならずは科学的にも認められている

    他人のためにすることが自分のためになるというのは、「情けは人の為ならず」という諺(ことわざ)そのものです。

     

    実際、それが科学的にも認められています。

     

    たとえば、ヒューストン大学のRuddらの報告によれば、他者によいことをすると、幸せホルモンと呼ばれるオキシトシンが増えていることがわかりました(2)。

     

    ほかにもカリフォルニア大学のLyubomirskyらの報告があります。この報告では、1日1善ならぬ1週5善を被験者にさせると、なにもしなかった人と比較して幸福度が高くなっていたのです(3)。

     

    他人の役に立つことは、喜びやを嬉しさを感じ、それにともない幸福感があがり、情動的な痛みを埋め合わせ、孤独の悪循環から抜け出させてくれる契機になるかもしれません。

     

    孤独を感じている人は、身近な人にちょっと役立つこと、喜ぶようなことを始めたらよいのではないでしょうか。

     

    大きなことから初めなくていいのです。お皿洗いをするとか、ゴミ捨てをするとか、ご飯が美味しいと感謝を述べるとか、ちょっと美味しいものを買って帰るとか、お釣りをくれた店員さんにお礼を言うとか、そんな些細なことでよいと思います。

     

    【資料】

    (1)Loneliness: clinical import and interventions.[PMID:25866548]

    (2)Rudd, Melanie, Jennifer Aaker, and Michael I. Norton. “Getting the most out of giving: Concretely framing a prosocial goal maximizes happiness.” Journal of Experimental Social Psychology 54 (2014): 11-24.

    (3)Lyubomirsky, S., Tkach, C., & Sheldon, K. M. (2004). Pursuing sustained happiness through random acts of kindness and counting one’s blessings: Tests of two six-week interventions. Unpublished raw data.

    (4)孤独の科学、ジョン・T・カシオポ/ウィリアム・パトリック、河出文庫、2018

     

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