2019年も半分がすぎ、上半期に読んだ本の中から厳選した22冊を紹介したいと思います(恣意的です笑)。ひとつくらい気になるものがあれば幸いです。

     

    ジャンルは人文・ビジネス・哲学(思想)・医療・ノンフィクションなどで、小説などは除外しました。ちなみに順番は読み終えた順番なので、最初がとくにおススメというわけではありません。感想は読書メーターのものをもとにしているので、である調になっています。

     

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    1.医学からみた「幸福は人に伝わる」/藤原武男

    装幀だけ見るとスピリチュアル的な本なのかなと思うかもしれないが、中身は科学的根拠に基づいた内容で、専門用語もほぼなく読みやすい。主に健康とつながりについて書かれている。量も少なく安価なので、すこしつながりなどに興味がある人は読んでみるとよいでしょう。

    日本も超高齢社会を進んでいく中で、いかにつながりを維持できるようなシステムを構築するのが必要になるはず。本書でも高齢者が集うサロンによって主観的健康観向上や認知症リスク軽減などがみられたとのこと。友人が多様だと風邪の症状が出にくいなどの報告も面白かった。

    参考:ことわざから導く孤独の悪循環を解消する方法

     

     

    2.論より詭弁 反論理的思考のすすめ/香西 秀信

    いろいろ新しい視点を得られる本だった。論理的思考は対等な関係においては有用かもしれないが、現実の社会では対等ということは稀である。レトリックを用いることで論破はできないにしても説得は可能であると指摘する。

    とくに興味深かったのは陳述(事実を述べる)のなかに意見が入り込んできており、これを厳密に区別するのは難しい。人に訴える議論は立証責任を本来負うべき人に与える機能がある。正しいretortの方法など。自分の中では論理的思考が大切だが、外部ではレトリックをいかに利用するかというのが大切なのかなと思った。

     

     

    3.データの見えざる手/矢野 和男

    非常に面白く読めた。ウエアラブルセンサによって人間の行動を物理学のように法則化したり、ハピネス(幸福)を分析したり。理系チックな内容もありすべてを理解できているわけではないので、筆者によってうまく乗せられている部分もあるかもしれないが。

    人の限られた能力で予測を立てるよりデータを集めることで機械が予測してくれるというのはなかなかインパクトがあった。データサイエンティストといった職種が重宝される時代になりつつあるが、人口知能が発達していくと無用のものになるかもしれないぁと素人的には思えた。

    参照:職場の人間関係は仕事のやる気・生産性・寿命に関わる

     

     

    4.免疫と「病」の科学/宮坂 昌之,定岡 恵

    慢性炎症や免疫について最先端と思われる多くの知見が得られて非常に勉強になった。慢性炎症が多くの疾患に関わっており、その免疫システムなどの精緻さを垣間見ていると人間というのはホントに神秘的な生き物であると思った。ノーベル賞を受賞した本庶佑さんの研究成果がいかなるものかをざっと知りたい人にもおすすめ。

    注意点:おそらく平易に書くように努めているのだろうが、おそらく紙幅の都合もあり専門用語が多々でてくるため可読性は低いと言わざるをえない。医療系や生物学系などの素地がない人はやや読むのは大変であると思う。

    参考:美肌にはエクオール?~腸内細菌がお肌を若返らせるかも~

     

     

    5.社会心理学講義/小坂井敏晶

    科学、人格論(根本的帰属誤謬)、自由意志、認知不協和理論、支配、差別、少数派の影響、一貫性など広範にわたりその事象について博引旁証しながら掘り下げている。様々な知見を得られるため面白い。

    しかし、全体的な論の進め方や言葉の選択、前提となる教養(学問の素地)がないと可読性は低くなるだろう(自分も不明瞭なところが多々あった笑)。人によってはまったく面白くない可能性が大きい(挫折する可能性が高い)。『影響力の武器』や行動経済学、バイアス、哲学の概論といった本を読んでおくと理解しやすいように思われる。

    参考:従業員の不適切動画からみる自己責任論についての是非

     

     

    6.おとしどころの見つけ方/松浦正浩

    交渉というと大仰なものを想像してしまうが、会議での打ち合わせや恋人と旅行先を決めること、同窓会の幹事として場所などを決めていくなども交渉に含まれる。つまり交渉は日常の中に溢れている。

    その交渉をいかにうまく扱っていくかで生活の充実度が変わってくる。交渉がうまくいかないために会社での評価がさがったり、恋人と別れてしまうことも大いにあり得る。その交渉をいかにうまく扱っていくかを本書では対話形式で説明してくれる。非常に平易な言葉で書かれておりわかりやすい。アンガーマネジメントにもつながると思う。おすすめ。

    参照:リハビリ拒否時の交渉学~利害を探って問題を解決せよ~

     

     

    7.FACTFULNESS/ハンス・ロスリング

    ファクトフルネス(データ・事実をもとにして思いこみに注意しながら対象を捉える)によれば世界は悪い所もあるがよくなっているとのこと。10個の思いこみは日常生活でも活かせる。分断(二項対立)、ネガティブ、パターン化、汎用化、原因追及など。

    大学教授や国際機関で働くような人でも世界の現状を把握できていないことが書かれており、なるべく情報をアップデートすることが大切なんだなと思った。数字がなければ世界は理解できない。でも数字だけでは世界はわからないと書かれているが至言であると思う。すごく基本的だけど大切。

    参考:従業員の不適切動画からみる自己責任論についての是非

     

     

    8.日本人の勝算/デービッド・アトキンソン

    公的データや報告書などをもとに書かれており信頼性が高い。経済学的な用語が出るためそういう知識がないと可読性が低下しやすいと思われる。少子高齢化、人口減により日本は生産性を高めていく必要があるとのこと。

    そのためには適切な中小企業の統合や最低賃金の引き上げ、女性の社会進出促進、経営者の再教育などが提案されている。個人的にも労働者の切り捨てによる企業(経営者)の短期的利益偏重により回りまわって少しずつ全員が首を絞めているような感じがするので筆者の提案には賛成である。日本には舵をきってほしい。

    参照:書評『日本人の勝算』~最低賃金アップで経済成長へ~

     

     

    9.物語の役割/小川洋子

    物語とはなんであるかといったことを講演をもとに書かれている。哲学的な部分もあるが、平易に書かれているためとくに読みにくいということはない。印象に残った部分を引用。

    『言葉で一行で表現できてしまうならば、別に小説にする必要はない。ここが小説の背負っている難しい矛盾ですが、言葉にできないものを書いているのが小説ではないかと思うのです。一行で表現できないからこそ、人は百枚も二百枚も小説を書いてしまうのです』(P65)。ほかにも多くの至言がちりばめられている。

     

     

    10.脳は、なぜあなたをだますのか/妹尾武治

    知覚心理学とは「人間の五感、視覚、味覚、聴覚、嗅覚、触覚について人間の特性を精緻に研究する学問」(P15)。その知覚心理学の知見を広く紹介しておりまさに入門にふさわしい内容になっている。とくに難解な用語が頻出することもなくイラストや写真なども多用されており門外漢でも可読性は高いと思われる。

    個人的にはヤージュニャヴァルキヤの哲学の理解を深めることができたり、クオリアについて概要や自由意志の有無などについて知ることができたのがよかった。とある実験では鳩よりも人間は賢くないというのが示唆されたのは驚愕であった。

    参考:従業員の不適切動画からみる自己責任論についての是非

     

    同著者の『おどろきの心理学』も、いろいろな心理学の知見を、エビデンスをもとに書かれていて非常に学びになります。たとえば、サブリミナル効果ってあるの? 血液型と性格って関連しているの? など。興味がある方はこちらも読んでみてはどうでしょうか。

     

     

     

    11.アダム・スミス/堂目卓夫

    筆者によるアダムスミスの思想・哲学紹介でアダムスミスの著書から引用したものを筆者が補完するといった体裁。内容の真偽については検証できるほどの知識がないためわからないが、非常に平易な言葉でまとまっていて図などもありわかりやすかった。

    終章「スミスの遺産」に全体の内容がまとまっているので知識をまとめやすいのでありがたい。古典であるが現代の問題に通じるようなところもあり有用であるように思う。まぁ個人的には政府の規制はある程度あったほうがよいかなと。とくに日本は資本家任せはリスクが高いように思う。

     

    本書も非常に平易な本の範疇にはいると思うが、大村大次郎さんの『超訳 「富国論」』はさらに平明で、重要な部分のみを抽出しているので、こちらを先に読んでおくと理解が促進されるのではないかと思う。

     

     

     

    12.東京タクシードライバー/山田清機

    タクシー運転手、タクシー会社の関係者などのインタビューから紡がれる物語集といった感じ。ノンフィクションのため劇的で起伏の激しい話ではないが、リアルで些細な人間物語がなんとも得も言わぬ妙があって面白かった。

    資本主義のなか利益を重視して人を蔑ろにする時代になって久しいが、数字やデータに隠れてしまい切り捨てられている「人」というものの重要性を再認識した。たしかにデータや数字も大切ではあるが、そこにいるのはかけがえのない人なのである。やや趣旨とは違うかもしれないが、そういうところに少し思い至った。

     

     

    13.「身体を売る彼女たち」の事情/坂爪真吾

    性風俗で働いているというと「ふしだら」「お金の為に身体を売るなんて下品」といったステレオタイプの反応が多いのではないだろうか。

    しかし、本書を読むとそういう感じではなさそう。どちらかというとセーフティネット的な役割もあり、公助と自助の間で共助としての機能(側面)もあるよう。かといってリスクもあり性風俗を野放図にしてしまうのはよくないが安易に自己責任・道徳的な批判は避けたほうがいいと思った。けれど具体的にどうするかは難しい所もある。読みやすいが節々に筆者の自分に酔ってる感があるのが少し嫌だったかな。

     

     

    14.物語 フランス革命/安達正勝

    とても面白い。フランス革命についてほぼ無知であったがそれでもほぼスムーズに読むことができた。物語形式で人間を中心に書かれているため、学術的な要素が少なかったのが可読性が高くなった理由と思われる。

    個人的には歴史的時系列のみならず死刑制度に対する是非や群衆の凶暴性、権力に対する人間の欲といったものについて考えさせられる契機ともなった。ルイ16世といえば暗愚といったイメージがあるかもしれないが、非常に理解のある人だったよう。本人の責もないことはないが歴史の残酷な潮流に巻き込まれてしまったんだなぁと。

     

     

    15.経済政策で人は死ぬか?/デヴィッド・スタックラー、サンジェイ・バス

    やっぱり「人」を大切にすることが重要なんだなぁと思った。本書では提言していることを簡単にまとめると、失業者をきちんとフォローする(復職を積極的に援助する)、公衆衛生に投資する(人々の健康を最優先する)、住むところを保障するなど。これらと逆の政策(緊縮政策)をやってきた国々の悲惨な状況をデータ(エビデンス)を提示しつつ進めるので非常に説得力が高いと感じた。

    日本の状況はどうなのかなって思った。ひとまずはダメな方向にいきつつあるのなかと。不景気が長期化しており、もっと政府の介入を増やすべきではないと思う。

    参考:お金の不安やストレスが痛みを増強させるかもしれない!?

     

     

    16.科学と非科学/中屋敷均

    タイトルだけ見るとすごく硬いものかなと思うかもしれないが、比較的平易に書かれているサイエンスエッセイ。主にはタイトルにある「科学と非科学」について、例えば科学と非科学の境界線や科学の脆弱性などについてざっくばらんに書かれている。後半には昨今の科学研究に対する「選択と集中」などの問題点や違和感などについて研究者目線から熱く語っているのが印象的だった。

    科学的根拠、いわゆるエビデンスを重視するのも大切であるが、その弱い部分を知らなければ宗教や権威主義と変わりなくなってしまう。科学の本質を知るのにも有用だと思う。

    参照:科学と非科学~科学は意志ある選択を与えるためにある~

     

     

    17.「10%消費税」が日本経済を破壊する/藤井聡

    ややグラフなどにフレームアップ効果疑いや出典が書かれていないなどの疑問点はありますが、それを差し引いても読みやすく日本の問題点がよくわかるのでよい。

    日本が推し進めている緊縮政策は外国の事例から効果がないどころか不利益になる可能性が高いことがわかっている(『経済政策で人は死ぬか?』など)。本書でも増税により多くの不利益が生じたことがデータなどからもわかる。筆者は増税凍結(または減税)や大規模な財政政策を実施せよと説く。自分もこれに賛成で、介護分野などはとくに重要なのではないだろうかと思う。

    参考:お金の不安がうつ病の原因?低所得層への社会保障を拡充!

     

     

    18.子育て支援と経済成長/柴田悠

    筆者の解析したデータをもとに書かれていて読み甲斐があった。たしかに反証されているわけでもないので、そのデータがどの程度信頼性がおけるものかは不明である。

    しかし、国際的にみても子育て支援が充実しているわけではないし、バブル崩壊後の日本の衰退は論を待たないだろう。政府が行っている緊縮策は多くの国で経済成長を阻害することが報告されており、本書が提言している子育て支援(保育サービス・産休育休・児童手当の拡充)は前向きに検討したほうがよいのではないだろうか。これからの日本を支えるのは高齢者ではなく、若年者・子どもたちなのだから。

     

     

    19.自分を傷つけずにはいられない/松本俊彦

    自傷というのは生きづらさのなかで生まれる一種の防衛みたいなもののよう。よって「なんでそんなことしたんだ!」と責めるのはよろしくない。それは追い詰められた人の最後の逃げ道を塞いでしまうようなもの。本書では医療者でさえ感情的に反応してしまう人がいると悲嘆している。

    紹介されている『Respond medically,not emotionally(感情的に反応するな、医学的に反応せよ)』という言葉はいいなと。感情任せの反応は人を死に追いやることもある。ちょっとしたことでも炎上する世間で至言であると思う。 

    参考:孤独な人間関係を良好に構築するための3つの方法

     

     

    20.データは騙る/ゲアリー・スミス

    こういう系統の本を読んでいたので知っている内容もあったが、非常に平易に書かれておりよかった。

    「科学的根拠をもとに」ということがいわれるようになって久しいが、科学的根拠の有無をこえて、つぎの科学的根拠は批判的に吟味していく段階のための本といえる。データにつきまとうさまざまなバイアスやまやかしについて書かれており、これらを意識してデータを見られるかどうかというのは非常に重要であろう。

     

     

    21.目からウロコが落ちる 奇跡の経済教室【基礎知識編】/中野剛志

    経済学の素地がない私には、この本がどの程度妥当なものか見当もつかないし検討もできない。しかし、本書が示すデータ、これまでの金融政策(緊縮政策)に対する理路整然とした反論を見ていると納得せざるを得なかった。

    本書を読むまでは経団連といった経済界の短期的利益重視のために、デフレから脱せられないものと考えていたが、経済界の方針は経済合理的な側面からは妥当とのこと。政府がしっかり主導していけばデフレは脱せられるようだ。政府は国民が選ぶことができる。本書は政府を選ぶことができる国民自身こそ必読であろうと思う。

    参考:お金の不安がうつ病の原因?低所得層への社会保障を拡充!

     

     

    22.パーソナリティ障害 いかに接し、どう克服するか/岡田尊司

    パーソナリティ障害とは『偏った考え方や行動パターンのため、家庭生活や社会生活に支障をきたした状態』(P30)とのこと。境界性、自己愛性、演技性、反社会性など本書では10タイプが事例をもとに紹介され、周囲の接し方、克服の方法などが書かれている。

    障害があるないと白黒での判定は難しく、限りなく白(黒)に近いグレーといった感じなのだろう思う。社会で生きているといわゆる変な人、癖がある人に出会うとどう接したらいいのか悩んでしまうことも多々あると思うが、そういうときに本書のアドバイスなどを参考にするといいかもしれない。

     

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    一冊くらいは気になる書籍があったでしょうか?

     

    気になったものがあれば、ぜひ手にとって読んでもらえたらなと思います。

     

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