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    忙しい人のための要約
    明治時代から日本人は熱中症で倒れており、若者が弱体化したというのは的外れです。熱中症を精神論で語るのは狂人です。早急にエアコンを学校につけるように取り組むことが大切です。

     

     

    ◆71歳男性の読売新聞への投書

    熱中症で倒れるなんて、最近の子どもは弱体化したものだ。なんて考えている人もいるかもしれません。読売新聞の71歳男性の投書にはこんなものがあります。

     

    日本海洋少年団体全国大会の開会式で、三〇〇人の団員が暑さのために倒れたそうだ。三〇度足らずの暑さ、それもわずか一時間ほど立っていただけで、団員の一割が倒れたなど、私たちの少年時代を振り返ってみると不思議な気がする。

    そのころ学校で、全校生徒が一時間以上の集合は常時のことだったが、その中で倒れた者など私の記憶には残っていない。からだを大切にすることを考えすぎて、鍛錬を忘れているのではあるまいか。肉体も精神も鍛えて抵抗力をつけることが真の健康である。

     

    じつは、これ1969年8月12日づけの読売新聞の投書です。

     

    熱中症で子どもたちが倒れるのは最近のことではなく、以前からあるのものなんですね。そして、熱中症で倒れるのは鍛錬が足りていないからだという精神論も当時からあったみたいです。

     

     

    ◆明治時代から熱中症で倒れていた日本人

    さきほどの男性は熱中症で倒れる人などいなかったといっていますが、これも事実とは異なりますね。自分の経験を一般化すると得てしてロクなことになりません。

     

    1897(明治30)年:徳島県の尋常小学校で夏休み前の閉校式がおこなわれ、生徒4人が倒れた。

    1898(明治31)年:遠州森町というところで、校則違反をした小学生を罰として炎天下に2時間立たせたところ倒れた。

    1912(明治45)年:病床にあった明治天皇の御平癒を祈っていた中学生700名のうち、50名が倒れた。

     

    いまと変わらず、むかしから熱中症で倒れていた子どもは大勢いたんですね。

     

     

    ◆熱中症を精神論で語るのは狂人です

    日本文化史研究家のパオロ・マッツァリーノさんは著書『「昔はよかった」病』で以下のように述べています。

     

    人の命なんて大事じゃないよ、みたいな暴論を口にしていきがってみせる未熟な人間は、いつの時代にもいるものです。この翌年に出版された『禅と武士道 坤』で、著者の三浦了覚もこんな暴論を並べてます。

    「兵士が日射病で倒れたり死亡したりするたびに、新聞や世論は兵卒虐待、人命軽視と軍を批判しているが、そんなもん、数千人の兵のなかの数名の弱いものが死んだだけだ」

    「徳川時代に在籍していた昌平校の儒者、若山先生は、学生が薄弱なのを憤って炎天下に体操をさせる鍛錬を課した。何人か死んだが、先生は気にせず続行した」

    そんなことをするのは儒者ではありません。たんなる狂人です。孔子は弟子に決してそんな仕打ちをしませんでした。若山先生とやらは『論語』を読んだことすらないエセ儒者だったのでしょう。

     

    熱中症というのは、暑熱環境下においての身体適応の障害のことです。そんなものは、心頭滅却すれば火もまた涼しみたいな精神論でどうにかなるもんじゃありません。そもそも、この心頭滅却うんぬん言ったお坊さんは焼死しましたからね。

     

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    ◆学校にエアコンを投票で決めてる場合じゃない

    学校にエアコンをつけるかどうか2015年に投票がおこなわれました。

     

    埼玉県所沢市で15日、市立小中学校へのエアコン設置の是非を問う異例の住民投票が実施、即日開票され、賛成5万6921票、反対3万47票で、賛成が上回った。しかし、投票率は31.54%にとどまり、賛成票はエアコン設置実現の目安だった投票資格者総数の3分の1に届かなかった。

    「学校にエアコン」住民投票、「賛成」実施目安に届かず

     

    Twitterで、目のまえで火事がおこっているときに、これを消すか消さないか投票したりしないでしょというのがありました。

     

    もうね、死者がでてるわけです。エアコンをつけるかつかないかじゃなくて、財源の問題もありますから、どうつけていくかみたいな具体的なところに話を進めていく段階なんですよね。

     

     

    ◆エアコンの有無が偏差値や収入に関わる

    教室のエアコンの有無が、子どもの将来の年収にも影響する?アメリカの研究機関が調査』という記事によれば、エアコンの有無が偏差値や収入にも関わってくるとのことです。

     

    アメリカ国内の2001~2014年の高校生が大学入試前に受けた模擬試験(PSAT)の1000万人分の結果をもとに、学習成果と室温の関係について分析した。

    調査では、教室にエアコンがない場合、年間の平均気温が1°F(華氏=約0.6℃)上がると、学習の効率が下がる分、年間の学習量の1%が失われ、このテストの偏差値が0.032下がった。ただ、エアコンがあれば、下がるはずだった偏差値のうち0.025が埋め合わされると推計している。

    また、このペーパーで紹介された別の論文では、偏差値の上下は生涯年収にも影響しており、12歳の時点で、偏差値が1.0高ければ、現在の換算で生涯年収にして7000ドル(約79万円)分の価値があるとしている。これを16歳に換算すると8500ドル(約95万円)になる推計していた。

    つまり1人の生徒あたり、1°F室温が上がっても、教室にエアコンがあれば、212.5ドル(約2万4000円)を取り戻せる計算になる。

    また、週末や夏休みの気温が高いかどうかは学習成果にほとんど影響を及ぼさず、授業がある登校日の気温の高さだけが、影響していたという。

     

    しかし、記事でも指摘されているように、エアコンの設置費用などがやはりネックになってきます。このあたりを補助金などでまかなうのかなどの議論が必要ですよね。

     

    参院6増法が成立しましたが、国会議員を増やすくらいならその分をエアコンにまわしてほしいですよね。そもそも定数を減らすというのが公約だったはずです。。。

     

    まあ、子どもたちの命を守るためにエアコンを早急につける必要があります。精神論で熱中症を語る狂人はほっておくのが一番です。

     

    【資料】

    (1)「昔はよかった」病、パオロ・マッツァリーノ、新潮新書、2015

     

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