この記事を読むのに必要な時間は約 36 分です。

     

     

    ◆どこの出版社がいいのか?

    シャーロック・ホームズシリーズは新潮社や光文社、河出書房新社など多くの出版社から出されています。ぜんぶの出版社のものを読み比べしていないので、実際のところ○○がいい!と断言はできません。

     

    しかし、わたしは光文社のものを読みましたが、とくに読みにくいということもなく、なんとも味わい深い挿絵があり買ってよかったと思っています。光文社のものを買ってハズレということはないかなと。

     

    訳者である日暮雅通さんが『シャーロック・ホームズの冒険』の解説のなかで、翻訳する際に意識したところを書いていますので紹介します。ご参考にしてください。

     

    この新訳では、十九世紀末から二十世紀初頭にかけての古典的作品であることを意識しつつ、現代の読者にとって読みやすくすることを第一に心がけました。したがって、いわゆるシャーロッキアン的な注釈や、作家研究的な注釈はいっさい付けていません。

    著者コナン・ドイルの勘違いや考証不足による間違いはさまざまにあり、その指摘を読むのも一種の楽しみかもしれませんが、この全集ではごく一部におさえました(重要なもののみ、この解説の部分で説明します)。

    また、ホームズやワトソンの過去について詮索するといったことも、していません。純粋にストーリーを楽しみ、十九世紀末の英米で読者が夢中になってホームズの冒険に読みふけったのと同じ体験をしてもらうことが、本全集の意図であるからです。

     

    これから各作品について概要や感想、名言(気になる言葉)などを書いていきます。紹介するのは執筆順になっていますので、読むさいもこれに準ずるのがよいかなと思います。ちなみに以下の記事のなかで出てくる引用は光文社の書籍からです。

     

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    ◆シャーロック・ホームズシリーズの一覧

    作品紹介についてはAmazonの商品説明(内容)より引用しています。

     

    1.緋色の研究

    ホームズとワトスンが初めて会い、ベイカー街221Bに共同で部屋を借りた、記念すべき第一作。ワトスンへの第一声「あなた、アフガニスタンに行っていましたね?」は、ホームズが依頼人の過去を当てる推理のはしり。第一部はホームズたちの出会いから殺人事件解決まで。第二部は犯人の告白による物語で、米ユタ州からロンドンにいたる復讐劇。

     

    一言感想:

    名探偵コナンの影響ではじめて読んだシャーロック・ホームズシリーズでした。思ったよりもホームズが辛辣な言葉を吐くので驚きました。もっと温厚なのかと思っていたので。緊迫感ある後半など読み甲斐があり、1日足らずで読了しました。

     

    名言(気になる言葉):

    ・どんどんつめこんでいけば、新しいことをひとつ覚えるたびに古いことをひとつ忘れるというときが、必ずやってくる。だから、無用の知識はどんどん忘れて、有用の知識のじゃまにならないようにすることが、きわめて重要なんだよ。(P28)

    ・まだデータがない。証拠材料もそろわないうちに推理を始めるのはたいへんなまちがいだよ。判断を偏らせてしまう。(P46)

    ・天才とは、無限に苦痛に耐えうる能力を言うそうだ。(P58)

    ・人生という無色の色の束には、殺人という緋色の糸が一本混じっている。ぼくらの仕事は、その糸の束を解きほぐし、緋色の糸を引き抜いて、端から端までを明るみに出すことなんだ。(P72)

    ・偶然の一致だなんて、そんなことがあってたまるか!(P109)

    ・自分の推理に、もっと自信をもたなくては。ある事実が、これまでたどってきた推理と矛盾するなら、必ず別の角度から考えられるということに、とっくに気づいているべきだった。(P109-110)

    ・たんに奇妙に見えるだけのことと、本当の謎とを混同してはいけない。(P110)

     

     

    2.四つの署名

    月刊誌連載の前に書かれた長編第二作。事件のない退屈をコカイン注射で紛らすホームズという、ショッキングな幕開けから、ホームズの語る“推理の科学”そしてメアリ・モースタン嬢の持ち込む不思議な事件へと、物語は興味深い展開をみせる。ベイカー街不正規隊の活躍、依頼人に惚れてしまうワトスン、アグラの財宝にまつわる話など、面白み満載。

     

    一言感想:

    面白かったですね。後半の息もつかせないスピード感ある展開がよかった。ワトスン先生の恋物語もね。

     

    名言(気になる言葉):

    ・ほかのどの要因もひとつひとつ打ち消していけば、最後に残るのが事実ということになるのさ(P16)

    ・なによりもだいじなのは、相手の個人的資質に判断を左右されないようにすることだ。ぼくにとって、依頼人は問題中のひとつの構成部分、ひとつの因数にすぎない。(P31)

    ・ありえないものをひとつひとつ消していけば、残ったものが、どんなにありそうなことでもなくても、真実であるはずだって。(P75)

    ・小才のきく馬鹿ほど始末の悪いものはないって、フランスのだれかも言ってたっけ(P83)

    ・『人は、自分に理解できない相手がいると、馬鹿にして笑うものだ』ゲーテはいつも、簡潔にうまいことを言うね(P86)

    ・人間の真の偉大さを証明する第一のものは、自分自身が卑小な存在であると認識することにあるというんだ。そう、比較し評価する力のことを言っていて、その力があることそのものが高潔さの証明なんだ。(P102)

    ・だいたいにおいて、高等戦術には高等教育が必要なんだよ。(P145)

    ・かんたんなことほど、えてして見落としがちなんだよ。(P147)

    ・薄汚れてはいるが、ひとりひとりの中にはそれぞれ消えない小さな火が宿っているんだろうなあ。外見だけでは思いも寄らないがね。そういうことは、頭から決めつけるわけにはいかないものだ。人間っていうのは、まったく不思議な謎のような存在だな(P150)

    ・だが、恋愛なんて、感情的なものだよ。すべての感情的なものは、ぼくがなによりも大切にしている冷静な理性とは、相いれない。(P212)

     

     

    3.シャーロック・ホームズの冒険

    ホームズ物語は、月刊誌『ストランド』に短編が掲載されはじめてから爆発的な人気を得た。ホームズが唯一意識した女性アイリーン・アドラーの登場する「ボヘミアの醜聞」をはじめ、赤毛の男に便宜を図る不思議な団体「赤毛組合」の話、アヘン窟から話が始まる「唇のねじれた男」、ダイイングメッセージもの「まだらの紐」など、最初の短編12編を収録。第1短編集。

     

    収録作品:

    ボヘミアの醜聞、赤毛組合、花婿の正体、ボスコム谷の謎、オレンジの種五つ、唇のねじれた男、青いガーネット、まだらの紐、技師の親指、独身の貴族、緑柱石の宝冠、ぶな屋敷

     

    一言感想:

    面白ぎて一日で読了してしまった。いきなり長編はという人は、短編集である本作から読み始めるのもいいかもしれません。

     

    名言(気になる言葉):

    ・きみは見ているだけで、観察していないんだ。見ることと観察することとは、まるっきり違う。(P16)

    ・まだ資料がない。論拠をもたずに理論を構成しようとするのは、重大な過ちだ。事実に合う理論を生み出すのではなく、無意識のうちに理論に合わせて事実をねじ曲げるようになってしまうからね。(P17)

    ・奇妙な偶然の一致とか変わったできごとを求めるなら、いかなる想像の産物よりもはるかに奔放な、実生活そのもののなかを探さねばならないということだ(P58)

    ・ワトスン、ぼくは説明などしなければよかったと思うよ。『未知なるものはすべて偉大にみえるものなり』というのを知っているだろう。(P62)

    ・概して、事件の外見が奇怪に見えれば見えるほど、その本質は単純なものだ。平凡な顔ほど見わけがつけにくいように、ありふれた特徴のない犯罪ほど、ほんとうはやっかいなんだ。(P79)

    ・ぼくの人生というのは、平凡な生活から逃れようとする果てしない努力の連続だ。(P98)

    ・人生ってやつは、人間が頭の中で考えるどんなことよりも、はるかに不思議なものだね。平凡な日常生活のうえのできごとさえ、ぼくらがとうてい思いもつかないことがあるのだから。(P101)

    ・細部にこそ、事件全体を観察するうえでまさに重要な要素が宿っているのに。(P102)

    ・ある一点をまっすぐに指し示しているかと思うと、ちょっと視点をずらしただけで、これまた同じくらいはっきりと正反対の方向を指し示してしまうものなんだよ。(P144)

    ・推理するためにはあらゆる知識を身につけていなければならないということなんだ。(P208)

    ・経験は間接的に役立つものです。(P392)

    ・ただし手紙というやつは、身分などない人間のものほどおもしろい。どうやらこいつは、例のありがたくもない社交界の招待状らしいが、あんなところじゃ、あくびをかみ殺すか、心にもない嘘を言わされるか、どっちかなんだからね(P398)

    ・まったくありえないことをすべて取り除いてしまえば、残ったものがいかにありそうにないことでも、真実に違いないということです。(P478-479)

    ・ぼくのような人間は、いかんせん、どんなものを見ても自分の専門分野と結びつけてしまうんだ。(P503)

     

     

    4.シャーロック・ホームズの回想

    大レースの本命馬が失踪、その調教師の死体も発見されて英国中が大騒ぎとなる「名馬シルヴァー・ブレイズ」。そのほか、ホームズが探偵になろうと決心した若き日の事件「グロリア・スコット号」、兄マイクロフトが初めて登場する「ギリシャ語通訳」、宿敵モリアーティ教授と対決する「最後の事件」まで、雑誌掲載で大人気を得た12編を収録した第2短編集。 

     

    収録作品:

    名馬シルヴァー・ブレイズ、ボール箱、黄色い顔、株式仲買店員、グロリア・スコット号、マスグレイヴ家の儀式書、ライゲイトの大地主、背中の曲がった男、入院患者、ギリシャ語通訳、海軍条約文書、最後の事件

     

    一言感想:

    やはり面白い!事件の真相が気になって仕方がない。

     

    名言(気になる言葉):

    ・重要なのは、さまざまに入り乱れた見解や報道のなかから、事実による―絶対確実な事実による―骨組みを抜き出すことさ。(P13)

    ・問題をはっきりさせるには、他人に話してきかせるのがいちばんだからね。(P14)

    ・顔つきってのは、その人の感情を表すものだ。(P60)

    ・まず、ぼくらは白紙の状態でこの事件に乗り出した。これは必ず有利に働く。先入観がないからね。(P79)

    ・こんな苦悩と暴力と恐怖の連鎖が、何になるっているんだろう。たどり着くところがなければ困る。さもなければ、この世はただの偶然に操られるじゃないか。そんなことは考えられない。だけど、どこにたどり着く?これは永遠に続く大きな問いで、人間の理性はその答えにいつまでたっても届かないんだ(P94)

    ・パイプというのは、時としてじつに興味津々たるものでね。おそらく、懐中時計と靴紐以外で、これほど持ち主の個性をはっきり表すものはないだろう。(P100)

    ・どうも、ぼくには種明かしをしすぎるきらいがあるようだ。理由抜きで結果だけを披露するほうが、すっと感心してもらえるのに。(P135)

    ・探偵術においてもっとも重要なのは、数多くの事実のなかから、どれが付随的な事柄で、どれが重大な事柄なのかを見分ける能力です。これができないと、精力と注意力は浪費されるばかりで、集中させることができません。(P266)

    ・推理する人間が他人にすごいと思われるのは、推理の基本となる小さなポイントのひとつを他人が見落としているっていう、ただそれだけのことなんだ。(P281)

    ・ワトスン、ぼくはね、謙遜を美徳だなどとは思っていないんだよ。論理を扱う人間だったら、ものごとはなんでも正確にありのままに見なけらばならない。必要以上にへりくだることは、大げさに見せるのと同じで、事実からはずれてしまうことになる。(P346)

    ・すぐれた推理家の手によれば、宗教は精密科学にすらなりうるものなのです。神の摂理の最高のあかしは、花のなかにこそ示されているように思われます。そのほかのものはすべて、力にしても欲望にしても食物にしても、ぼくらの生存にとってまず第一に必要なものです。しかし、このバラは余計なものでしかない。その香りといい色といい、確かに人生を美しく彩るものではあるけれど、必要不可欠なものではありません。そして、その余計なものこそ、まさに神のなせるわざなのであり、だからこそ、重ねて申しますが、ぼくらは花から多くの希望を与えられるわけです(P404)

    ・君を確実に破滅させることができるのなら、世の人々のために、ぼくは喜んでこの身の破滅も受け入れるとね(P458)

    ・最近のぼくは、社会がうまくいっていないことから人間のせいで出てくる表面的な問題よりも、自然が生み出すもっと奥深いところにある問題を研究したいと思うようになったんだ。(P469)

     

     

    5.バスカヴィル家の犬

    急死したサー・チャールズ・バスカヴィルの死体のそばには、巨大な犬の足跡があった。ダートムアのバスカヴィル家に伝わる魔犬伝説は、ほんとうなのか?遺産相続人サー・ヘンリーの依頼で、ホームズは捜査を開始する。はたして、先に現地に乗りこんだワトスンを待ち受けていたものは?これまで何度も映画化された、最も有名で人気のある長編。

     

    一言感想:

    おもしろいけれどホラー要素が強く、なかなか怖かったです。

     

    名言(気になる言葉):

    ・きみ自身は光っていなくても、りっぱに光を伝える力があるじゃないか。天才が備わっていなくても、天才を刺激するというすばらしい力のある人もいるんだな。(P12)

    ・この世界は、どうしたことかだれも気づかない、わかりきったことだらけなんだ。(P53)

    ・想像力を科学的に使う。ただし、必ず具体的な足場があって、それを思考の出発点とする。(P67)

    ・問題はわかっていることじゃなくて、証明できることなんだ。(P248)

    ・捜査に必要なのは事実であって、伝説や噂ではありません。(P254)

    ・死を悼んで涙を流してくれる女さえひとりもいないほどの悪人など、いないのだろう。(P259)

    ・訓練を積んだぼくの眼は、人の顔だけをよく見て、顔を縁どっているものは見ないのさ。(P265)

    ・彼の笑い声を耳にすることはめったにない。彼が笑い声をたてるのは決まって、だれかが運の悪いことに陥る前触れだった。(P265)

    ・常軌を逸した奇妙なできごとであればあるだけ、注意して調べてみる価値もいっそうあるのさ。事件を複雑に見せているまさにその点こそ、きちんと調べて科学的な頭で考えれば、解明のカギになるものなんだ。(P307)

    ・現在と過去のことならぼくが調査を引き受ける範疇だが、人が未来に何をするかという質問にまで答えるのは難しいよ。(P314)

     

     

    6.シャーロック・ホームズの生還

    ライヘンバッハの滝で死んだはずのホームズが生還した!…その顛末とモリアーティ教授の右腕モラン大佐による事件を描く「空き家の冒険」、有名な暗号ミステリ「踊る人形」、ナポレオンの胸像を壊してまわる不思議な人物の話「六つのナポレンオ像」、有名なせりふ『さあ、ワトスン、獲物が飛び出したぞ!』を生んだ「アビィ屋敷」など、13編を収録。

     

    収録作品:

    空き家の冒険、ノーウッドの建築業者、踊る人形、美しき自転車乗り、プライアリ・スクール、ブラック・ピーター、恐喝王ミルヴァートン、六つのナポレオン像、三人の学生、金縁の鼻眼鏡、スリー・クォーターの失踪、アビィ屋敷、第二のしみ

     

    一言感想:

    時代のためかやや理解しにくい描写があった。すこし悲しい話が多かったかな。

     

    名言(気になる言葉):

    ・すべての調査の出発点だと亡き友人がつねづね言っていた、”最小抵抗線”(最も面倒の少ないやり方)なるものを見いだそうと努力した。(P15)

    ・悲しみには仕事がなによりの良薬になるよ、ワトソン。(P26)

    ・ワトスン、ある高さまではまっすぐに伸びたのに、突然ひん曲がって醜い姿になる木があるだろう?人間にもそういうやつがよくいるんだよ。ぼくの説ではね、ひとりの人間は成長するあいだに、祖先から受け継いだものをすべて現わす。善悪どちらに向かうにしろ、そんなふうに急に変化するというのは、その血筋に入ってきた強力な要因のせいだ。個人は、いわば一族の歴史の縮図なのさ(P42)

    ・犯罪専門家の立場から言わせてもらうと、モリアーティ教授亡きいま、ロンドンは不思議と退屈な都市になったなぁ(P49)

    ・あの、どこかむっつりして、挑戦的なところのある目。秘密をもつ者の目だよ。(P73)

    ・ぼくはいま、消化のためなんかに精力や神経を使うどころじゃないんだ(P75)

    ・ところが惜しいことに、どこで筆を措くべきかをわきまえるという、芸術家としていちばん大切な才能が欠けていた。(P89)

    ・あとで中間部分をきれいに消して、相手にはただ出発点と結論だけを示せば、いささか安直ながら驚かせる効果は抜群だ。(P96)

    ・どんな謎だって、説明してもらえばまるで子どもっぽいものになってしまう。(P97)

    ・人間が考案したものなら、必ず人間が解けるものだ。(P132)

    ・偶然のものと重要なことを、きちんと区別しておこうじゃないか。(P204)

    ・ある犯罪に手を染めた人間は、そこからつながるほかのあらゆる犯罪に対しても道義的責任がある、ぼくはそう考えますが、閣下(P221)

    ・ただし、ホームズは、偉大な芸術家がみなそうであるように、ひたすら自分の芸術のためだけに生きていた。(P223)

    ・だれだって経験から学ぶものなんだから。今度の事件できみへの教訓となったのは、つねに別の可能性というものを忘れてはならない、ということさ。(P264)

    ・しかし、紳士たるもの、レディが必死で救いを求めているときに、つべこべ言っていられるものか(P287)

    ・ワトスン、利用のし方さえ心得ていれば、新聞ってやつはじつにありがたい存在だねぇ。(P326)

    ・眼鏡ほど、推理するにうってつけの材料になるものはまずないと思う。(P394)

    ・専門知識や能力のある者が、かんたんな説明がすぐそばにあっても複雑な説明を求めがるものだっていう例にすぎないんだろう。(P484)

    ・たしかにおっしゃるとおり、全面的に信頼を置かずして協力だけを期待するとは、道理に適わぬことだ(P517)

    ・女性たちのほんのちょっとした行動のなかに、大きな意味がこめられていることもある。かと思うと、とんでもない異常なふるまいが、たんに一本のヘアピンやカールごてのためだったりすることもあるんだからね。(P531)

    ・事実に先立って理論を立てようとするのは、大きなまちがいというものさ。(P532)

     

     

    7.恐怖の谷

    犯罪王モリアーティ教授の組織にいる人物から届いた、暗号手紙。その謎をみごとに解いたホームズだが、問題の人物ダグラスはすでにバールストン館で殺されていた。奇怪な状況の殺人を捜査する謎解き部分(第一部)と、事件の背景となったアメリカの“恐怖の谷”におけるスリルとアクションに満ちた物語(第二部)の二部構成による、傑作長編。

     

    一言感想:

    英国からアメリカまで広大な話でした。モリアーティ教授の恐ろしさがしみじみと感じられた。

     

    名言(気になる言葉):

    ・けれど、いちばん弱いところで鎖の強さが決まる(P14)

    ・新しいものばかり追いかけてると損だな、ワトソン。時代の先頭を切ると、決まってひどい目にあう。(P22)

    ・とかく、凡人は自分より抜きん出ている者に気づかないものだが、才能のある者は天才をひと目で見抜く。(P26)

    ・ぼくはどんなことがあろうと信義を重んずるからだ。(P30)

    ・お世辞でない褒め言葉に出会うと、いつも機嫌がよくなるのは、真の芸術家たる特徴だ。(P33)

    ・毎日十二時間ずつ、三カ月間こもりっきりで犯罪記録を読むことだね。歴史は繰り返す(P35)

    ・どんな天才にとっても、才能をただもてあましているほど、うんざりすることはない。鋭い頭も。使わずにいると切れ味が鈍り、錆びついていくことはカミソリの刃と同じなのである。(P40)

    ・不十分な資料で早まった仮説をつくりあげるのは、ぼくらの職業にとって命取りだよ。(P42)

    ・ぼくが事件に首をつっこむのは、ひとえに正義を守るため、警察の仕事を助けるためです。(P64)

    ・想像にしかすぎないが、想像が真実の母となった例はいくつもあるはずだからね。(P114)

    ・視野の広さは、ぼくたちの職業に必要不可欠なもののひとつだよ。違う意見を互いにぶつけあったり、一見無関係とも思える知識を応用したりすると、思いがけないほど興味が湧くことがあるものだ。(P127)

    ・水の近くで重いものがなくなっているとなれば、水中に何か沈められたと考えても、それほどこじつけではないだろう。(P136)

    ・心の求めるほうへ進むべきだよ!わけがわからないままかわされた約束なんかより、心のほうがずっと頼りになる道案内だ(P177)

    ・およそ不可能という言葉を知らない男――何をやっても必ず成功するという事実の上にたぐいまれなる地位を築き上げた男の、しわざなのです。(P303)

     

     

    8.シャーロック・ホームズ最後の挨拶

    血の入ったバケツ、黒焦げの骨…「ウィステリア荘」でホームズは『グロテスクなものから恐怖へは、ほんの一歩なんだよ』と言う。その他、ホームズが瀕死の床に伏せる「瀕死の探偵」など7編を収録。表題作「最後の挨拶」は、ホームズの隠退からかなりたった第1次世界大戦直前の話で、60代になった二人がふたたびイギリス国家のために活躍する。

     

    収録作品:

    ウィステリア荘、ブルース・パーティントン型設計書、悪魔の足、赤い輪団、レディ・フランシス・カーファックスの失踪、瀕死の探偵、最後の挨拶

     

    一言感想:

    最後のは政治色が強かったかな。

     

    名言(気になる言葉):

    ・それにしても、自分なりのデータをもっているきみに、いまあれこれ言うのはあんまりよくないな。きみがいつのまにか、自分の理屈に合わせてデータのほうをねじ曲げるようになってしまう(P33-34)

    ・もしも法律が何もできないというのなら、みずから身体を張るまでのことさ(P55)

    ・しかしね、前にも言ったとおり、グロテスクなものから恐怖へは、ほんの一歩なんだよ(P69)

    ・ぼくはゲームを楽しむためにゲームをするんだよ。(P84)

    ・なつかしいあの定理を思い出さなくちゃ。ほかのあらゆることがありえないとなれば、残ったものがどんなにありそうもないことだろうと真実なんだ。(P110)

    ・ホームズの性格のなかでも飛び抜けてすごいと思わされるひとつは、頭の切り換えが早いことだろう。どんなときでも、これ以上頭を働かせても無駄だとわかるや、さっさと脳の活動を休みにしてもっと気軽なことに考えを向けることができるのだ。(P118)

    ・でも、悪魔のしわざでかたづけてしまう前に、まずはこの世のものという線で考えを出し尽くさなければ。(P139)

    ・材料が足りないのに頭を働かせるのは、エンジンをから回りさせるようなものだよ。ばらばらに壊れてしまうのがおちだ。(P145-146)

    ・知ってるはずじゃないか、ホームズ。きみを助けることが、ぼくにとっていちばんの喜びであり特権でもあるんだよ(P161)

    ・ホームズはお世辞に弱い。おまけに、公正に評価すれば、善意にも弱い。(P178)

    ・やむことなく勉強を続けていかなくてはね。教えられることの連続で、いちばんだいじなことを教えられるのは最後になってからなんだ。(P195)

    ・この事件をきみの事件簿に加えたいと思っても、みごとにバランスのとれた頭脳がときには曇るっていう、悪い例のひとつにしかならないね、ワトスン。うっかりそんな失敗をしてしまうことは、この世のどんな人間にもつきものだ。それをきちんと受け止めてやり直すことができる者こそが、偉いやつなんだ。(P256)

    ・冷たい、厳しい風になるだろうな。吹きすさぶその風のなかで多くのものが枯れてしまうかもしれない。しかし、それもまた神の吹かせる風だ。そして、嵐が過ぎ去ったとき、もっときれいで、もっと豊かで、もっと強い国が、輝く太陽の光のなかにあることだろう。(P326)

     

     

    9.シャーロック・ホームズの事件簿

    王冠のダイヤモンドが盗まれ、首相みずからがホームズのもとを訪ねる「マザリンの宝石」、赤ん坊の血を吸う(?)母親を相手にする「サセックスの吸血鬼」、若い女性に恋をした老教授の不思議な行動に端を発する「這う男」など12編。発表はみなドイル晩年のものだが、「ライオンのたてがみ」以外、事件はすべてホームズの引退前(1903年以前)に起きている。

     

    収録作品:

    マザリンの宝石、ソア橋の難問、這う男、サセックスの吸血鬼、三人のガリデブ、高名な依頼人、三破風館、白面の兵士、ライオンのたてがみ、隠居した画材屋、ヴェールの下宿人、ショスコム荘

     

    一言感想:

    ついに終わってしまった。さらばホームズ、ワトスン。

     

    名言(気になる言葉):

    ・消化するほうに血が回ると、頭のほうの血のめぐりが悪くなる。ぼくは頭脳なんだよ、ワトスン。ほかの部分はただの付け足しだ。(P20)

    ・すぐれた芸術家はみんなそうだが、ホームズもまわりの様子にたやすく気分を左右されるのだ。(P52)

    ・ぼくには事実を発見することはできても、事実を変えることはできないんだからね、ワトスン。(P54)

    ・熱い思いを責めはしませんよ。だが、その思いを口に出されたなら、それは責められてしかるべきでしょう。(P69)

    ・筋の通らないところにはごまかしがあると疑ってみなければならない。(P82)

    ・よく働く頭というやつの欠点は、せっかくの手がかりを台無しにしてしまうようなまた別の説明をいつもひねりだしてしまうってことだよ。(P95)

    ・犬は家族の生活を映す鏡だ。雰囲気の暗い家に元気いっぱいの犬はいないし、幸せな家にはみじめったらしい犬なんかいないだろう?どなり散らす人間のところには吠えたてる犬、危険な連中のところには危険な犬、というわけだ。そして、犬が気まぐれなら、それはまわりにいる人間たちの気まぐれを映しているんだろう(P104)

    ・いいぞ、ワトスン!せっせと働き、より高きを目指す。当たって砕けろ――それがぼくらのチームワークのモットーだ。(P118)

    ・いつだってまず手を見るべきなんだよ、ワトスン。それから袖口、ズボンのひざ、そして靴だな。(P129)

    ・自然界の定めを超えようとあがく者は、その足もとにひれ伏すことになるのがおちです。定められた道を踏みはずせば、最高の知性の持ち主でさえただの動物にもどってしまう(P136)

    ・もしワトスンを殺してでもいたら、生きてここを出ていけたと思うなよ。(P204)

    ・女性の思うこと、考えることは、男が解こうとしても解けない謎じゃないか。(P222)

    ・品のないやつらの暴力より、上品な人間の愛想のよさのほうがずっと怖いこともある。(P223)

    ・それでも、変人はいつだっているものですから。そういう人間がいないと世の中はつまらないものでしょうしね。(P273)

    ・まず、不可能なことを消し去っていくと、どんなにありそうもないことだろうと、残ったことこそが真実である、そういう前提から推理が始まります。可能なことがいくつも残ることもあるでしょうが、ひとつひとつ検証していって証拠を考え合わせ、そのうちのどれかひとつに納得できるところまで煮詰めていくのです。(P329)

    ・わたしの頭は、あらゆる種類のものを箱に詰め込んでしまったまま、いっぱいになった物置きのようなものだ。(P356)

    ・惨めで無力。だが、人生なんてどれも惨めで無力なんじゃないか?あの男の身の上は、この世の人間全体の縮図なのかもしれない。手を伸ばす。つかむ。最後に手に残るものは何か?幻だよ。でなければ、幻よりもっと悪いもの――嘆きだ(P373)

    ・けちなやつはみんなそうだが、妬み深い男でもある。(P395)

    ・「人生はひとりだけで生きるものではありません。人生を押さえつけている手を離してみてはいかがです」「それでだれかの役に立つとでも?」「役に立つかもしれませんよ。苦しみにじっと耐えている人生があるというだけで、我慢の足りない世間にはこのうえなく貴重な教訓ですとも」(P426)

    ・ぼくがすべきなのは事実をはっきりさせることですから、ここで手を引きます。あなたがなさったことについて、ぼくは道徳や品位がどうこうと意見を述べる立場にありません。(P462)

     

     

    ◆小説と合わせて読みたい本

    シャーロック・ホームズシリーズとあわせて読みたい本について軽く紹介しておきます。

     

    1.シャーロック・ホームズ大図鑑

    シャーロック・ホームズの作品についての大図鑑。カラーで読みやすく、ストーリーを振りかえったり要点をみるのにいいと思います。

     

    2.シャーロック・ホームズの思考術

    ホームズの思考を心理学や行動経済学的に分析した本があります。個人的にはホームズの小説を先に読んでからのほうが面白味が増すかなと思います。

     

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