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    忙しい人のための要約
    レッドフラッグサインとは危険な徴候のことであり、早急に病院などの専門機関を受診する必要があります。本記事ではレッドフラッグを鑑別するための概論について述べています。

     

     

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    ◆レッドフラッグサインとは?

    「生物学的危険因子」・「危険な徴候」のことで、重篤な疾患を疑うサイン(気づき)として医療者は使用しています。

     

    レッドフラッグの存在は、その患者を適切な病院(専門医)へ紹介するか、少なくとも詳細な検査を行う必要があることを示唆しています。症状の本質を見分けるための知識ともいえるでしょう。

     

     

    ◆レッドフラッグを学ぶ理由

    (1)患者さんを守る

    たとえば、頭痛を訴えている患者さんがいるとします。大半は片頭痛や緊張性頭痛などの安全な頭痛です。

     

    しかし、その患者さんの頭痛はクモ膜下出血によるものかもしれません。その判断をできるのか?ということになります。あなたがレッドフラッグを知っていれば、その患者さんを適切に病院に搬送できたり、専門医に紹介することができるかもしれません。しかし、知らなければそこで患者さんの一生は終わります。

     

    つまり、患者さんを守るために必須な知識なのです。

     

     

    (2)治療者を守る

    そして、患者さんだけではありません。

     

    医療訴訟などに対する防衛線としても非常に有効になります。明らかに危険な徴候があったのに、それを放置して治療を実施したのであれば、訴えられても仕方がありません。医療者自身を守るためにもレッドフラッグは必須の知識なのです。

     

     

     

     

    画像:Wikipediaより引用

     

    イラストは「群盲象を評す」というものです。

     

    数人の盲人が象の一部だけを触って感想を語り合うです。

    彼らは象を間違って判断します。

    「(鼻を触って)ヘビだ!」

    「(尻尾を触って)ロープだ!」

    「(足を触って)木だ!」

     

    これは一部だけみて本質であると誤った判断をしてしまうことを戒めるインド発症の寓話です。レッドフラッグも同じように症状の一部だけをみて判断しないために必要な知識であることは言うまでもありませんね。

     

     

    ◆鑑別するための3C

    レッドフラッグというのは、その症状が安全なものか、危険なものかを鑑別するものです。鑑別するための”3C”という3つの判断基準があります。

     

    ① Critical   : 見逃すと致死的な疾患

    ② Common: よくある疾患

    ③ Curable  : 有効な治療法のある疾患

     

    大切なのは①ですね。緊急を要する疾患を鑑別できるかどうかということです。

     
     

    ◆情報収集

    患者さんの訴えを聴くことは重要ですが、なんでもかんでも聴いていたら時間が足りませんし、非常に非効率です。疾患ごとに注目すべき病歴がありますから、それを的確に訊くことが必要になります。

     

    しかし、それをそつなくこなすようになるには経験が必要になります。しかし、患者さんは治療者の技術が上がるのを待ってくれません。そういうのを定型化し、フォーマットにしたのがOPQRSTLQQTSFAです。どちらとも基本的なコンセプトは同じですので、覚えやすいほうを使えばよいと思います。

     

     

     

    ◆臓器と病因から絞り込む

    情報収集を行えば、絞りこみの段階に入ります。鑑別診断の根本的なスキームは、「どこで(臓器)」+「何が起こっているか(病因)」の組み合わせを考えることです。病因の覚えかたとしては、VINDICATEがあります。

     

     

    たとえば、

    ・「肺(臓器)」の「血管病変(病因)」(→肺塞栓)

    ・「前立腺」の「感染症」(→急性前立腺炎)

    のように、両者の交点から具体的に疾患を考えていきます。

     
     

    ◆キーワードで絞りこむ

    患者さんの話す言葉(キーワード)から絞りこむこともできます。

    資料(2)参照作成

     

     

    ◆黄金ルール(危険・安全な徴候)

    各論では症状別にレッドフラッグについて書きますが、ここでは多くの症状に共通する危険な徴候と安心な徴候をまとめておきます。危険な徴候が認められた場合には、即時に医療機関に連絡・搬送することを考慮しましょう。

     

    (1)危険な徴候

    危険な徴候は5つあります。①突発持続、②増悪傾向、③バイタルサインの異常、④リスクファクターがある、⑤なんとなくヤバいの5つです。ひとつずつ説明していきます。

     

    ①突発持続

    症状の時間的経過のなかで、一番危険なタイプです。

     

    突発持続とは、症状が秒単位で突然(=sudden)発症し、それが持続していることです。このタイプは、物理的な変化、すなわち「破れる」・「詰まる」のいずれかであることを意味しています(出血・梗塞など)。この場合、症状の程度によらず(独歩ができたとしても)、早急な対応を講じる必要があります。

     

    なお、sudden(突発)とacute(激しい)は区別して考える必要があります。「痛みは急に起こりましたか?」などと訊いても、患者さんは答えるのが難しいことが多いので、「痛みが起こった時は、なにをしていましたか?」と訊くようにします。

     

    「水戸黄門が印籠を出したとき」、「料理中でニンジンを切っていたとき」など、具体的な答えが返ってきたときは、突然発症の可能性があります。

     

    ②増悪傾向

    発症してからの症状の流れを見極めます。徐々に症状が重くなったり、悪くなる一途であれば受診しましょう。

     

     

    ③バイタルサインの異常

    軽症に見えても、バイタルサイン(血圧・脈拍・体温・呼吸数)に異常が認められる場合は、なるべく原因をつきとめるようにします。複数の項目から総合的に判断します。

     

     

    ④リスクファクターがある

    リスクファクターの有無によって有病率は大きく変わります。

     

    たとえばリスク因子と冠動脈死亡率を調査した研究によれば、喫煙していて糖尿病もある高齢男性と、喫煙せず基礎疾患もない若い女性とでは、虚血性心疾患の有病率は何十倍も異なることがわかっています(1)。

     

    高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、既往歴、家族歴、免疫不全、高齢などのリスクファクターがある場合は、注意しましょう。

     

    ⑤なんとなくヤバい

    医療者であれば、わかると思います。「なにかいつもと違う、変な感じだな」と直感的に感じることありませんか?数値化や論理化できない、直感も役立つことが多いにあります。自身の感覚も大切にしましょう。

     

     

    (2)安全な徴候

    安全な徴候には4つあります。①反復性、②経過が長く非進行性、③非器質性疾患、④「医療面接の場至るサイン」に異常がないの4つです。ひとつずつ説明していきます。

     

    ①反復性

     

    症状が反復するというのは、悪性腫瘍などの不可逆的な悪化を示す病態ではないということを意味していて、基本的には安心できる徴候です。

     

    とくに持続時間と回数に注目しましょう。たとえば、持続時間が半日であれば、病因として炎症や感染症の確率は低いと考えられます。また、数があまりにも多ければ、血管病変の可能性も低くなります。

     

    ちなみに、間欠期がゼロであることが「反復性」の条件になります。症状がゼロにならない場合は、持続する症状の一時的な寛解・増悪を意味していて、鑑別の組み立てがまったく変わってしまいます。両者は明確に区別しておきましょう。

     

     

    ②経過が長く非進行性

    症状が長期間(年単位)であり、かつ非進行性であれば、器質疾患である可能性は低いです。悪性腫瘍であれば悪化している(進行)であろうし、血管病変であれば持続時間は数日以内です。いずれにしても、緊急性がないことは明らかですので、焦ることはありません。

     

     

    ③非器質性疾患

    非器質疾患の可能性が高い場合、自殺などの危険のある病態(うつ病などの精神疾患など)が除外できれば、重篤な疾患は否定的です。

     

     

    ④「医療面接の場至るサイン」に異常がない

    食欲・便通・睡眠・体重の変化は、「医療面接のバイタルサイン」と呼ばれています。これらは必ず確認しておきましょう。これらすべてに問題がなければ、少なくとも現時点では重大な事は起こっていない可能性が高いです。

     

    【資料】

    (1)Risk assessment chart for death from cardiovascular disease based on a 19-year follow-up study of a Japanese representative population.[PMID:16998254]

    (2)総合診療医が教えるよくある気になるその症状、岸田直樹、じほう、2015

    (3)帰してはいけない外来患者、前野哲博・松村真司、医学書院、2012

     

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