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    忙しい人のための要約
    フェリチン不足により産後うつ病が起こる可能性が示唆されています。産後うつ病の方に鉄を補給すると補給しない人と比べてより改善することが報告されており、産後に気分の落ち込みなどはある方は鉄を補給することを考慮するのもよいかもしれません。

     

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    ◆産後うつ病について

    産後うつ病は、女性にとって最も一般的な心理的健康問題であり、世界中の女性の10%~15%に影響を及ぼしているといわれています(1)。厚生労働省の報告によれば、日本人女性もおなじくらいの発生率が認められています(2)。

     

    資料(2)より引用

     

    産後うつ病のリスク要因として栄養欠乏が指摘されており、オメガ3脂肪酸、亜鉛、鉄などが関係しているいわれています(3)。今回は鉄(フェリチン)不足と産後うつ病の報告を紹介しようと思います。

     

     

    ◆フェリチンが低い妊婦は産後うつ病になりやすい

    スペインの報告で、出産した妊婦729人のフェリチンとうつ病の関連性を調査したものがあります(4)。

     

    出産後48時間以内に729人のフェリチン・トランスフェリン・CRPなどを検査し、8週間・32週間後のうつ病の状態を調査しました。CRPを検査したのはCRPが高いとフェリチンが低くなるためで、そういった妊婦さんは除外されています(関連記事:アルブミンが低い原因について)。

     

    資料(4)より作成

     

    結果です。産後32週のあいだに65人の妊婦さんが産後うつ病を発症しました。これは全体の9%となっています。

     

    この報告によるとフェリチンと産後うつ病には強い関連が認められており、フェリチンが7.26以下の場合の産後うつ病発症のオッズ比は3.73(95%CI:1.84-7.56)になっています。また感度は21.9、特異度は91.2となっているので、スクリーニングとしては不適ですが、確定診断には有効かもしれません。

     

    なぜ鉄不足でうつ病が発症するのか明確な理由はわかりませんが、鉄が脳内で必須な栄養素であることはたしかです。そういうのも関係しているかもしれません。

     

    神経系の発達や機能維持には鉄ばかりでなく、銅、亜鉛、マンガン、セレンが必須である。そして、鉄、銅、亜鉛、マンガンは神経終末のシナプス小胞に含まれ、神経伝達物質の受容体、イオンチャネルなどの活性をダイナミックに調整していることも明らかになった。(研究活動:神経変性症における脳内の鉄代謝

     

     

    ◆鉄のサプリメントの早期投与でうつ病が改善する

    さきほどの報告により産後うつ病に鉄不足が関わっている可能性が示唆されました。では、産後うつ病の方に鉄を投与すると改善は認められるのでしょうか?

     

    2017年のRCTの報告があります(5)。この研究では出産1週間後に母親を鉄補給群(鉄50mg /日)とプラセボ群に無作為に割りふり、 6週間後に産後うつ病の症状の改善を群間で比較しました。

     

    うつ病の評価としてはエジンバラ産後うつ病質問票(The Edinburgh Postnatal Depression Scale:EPDS)が用いられました。EPDSは国際的によく用いられている評価法で、30点満点で9点以上がうつ病疑いとなっているようです。

     

    【結果】

    ・介入後、鉄補給群でフェリチンは有意に高かった(中央値:78.2対37mg/dl、p=0.01)。

    ・鉄補給群ではEPDSスコアは有意に低下したが(p<0.001)、プラセボ群では有意に減少しなかった(p=0.13)。

    介入後、EPDSスコアは鉄補給群でより低かった(中央値:9対12、p=0.01)。

    ・産後うつ病の改善率は鉄補給群で有意に高かった(42.8対20%、p=0.03)。

    ・介入後、継続した産後うつ病がある母親は、うつ病が改善した母親よりもフェリチンが低かった(41.8対67mg/dl、p=0.03)。

    継続した産後うつ病の母親は、改善された母親と比較して鉄欠乏率が高かった(27.1対4.5%、p=0.02)。

     

    つまり、産後うつ病の人に鉄を補給すると鉄を補給しない人とくらべてより改善が認められたということですね。鉄と産後うつ病にはやはり強い関係がありそうです。明らかな貧血が認められなくても、産後に気分が落ち込んだりする場合は、鉄を補給してみるのもよいかもしれませんね。

     

     

    ◆藤川徳美医師の書籍

    近年、鉄とうつ病の関連性について情報を発信しているのは精神科医の藤川徳美医師です。臨床のデータをもとに書籍を出版されているので、興味がある方は一読してみてはいかがでしょうか。

     

     

    【資料】

    (1)Prevalence and risk factors for postpartum depression among women with preterm and low-birth-weight infants: a systematic review.[PMID:20121831]

    (2)厚生労働省:健やか健康21

    (3)Risk factors associated with postpartum depression in the Saudi population.[PMID:24570584]

    (4)An association between plasma ferritin concentrations measured 48 h after delivery and postpartum depression.[PMID:21130499]

    (5)The efficacy of early iron supplementation on postpartum depression, a randomized double-blind placebo-controlled trial.[PMID:26715522]

     

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