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    忙しい人のための要約
    一般的に腰痛は非特異的腰痛が8割であるといわれていますが、2016年に報告された山口県腰痛スタディによれば8割は原因がわかる特異的腰痛であるとされています。しっかりと精査することが重要です。

     

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    ◆腰痛の8割は原因不明なのか?

    資料(2)より作成

     

    日本の成人の約25%が腰痛に苦しんでいるといわれており、腰痛は国民病といっても過言ではありません(1)。一般的に腰痛の8割は非特異的腰痛、つまり原因不明の腰痛だといわれています(2・3)。このことは『腰痛の基礎知識~原因(フラッグ)について~』にも書きました。

     

    しかし、これは欧米の救急医やプライマリケア医(総合診療医)の報告によるもので、やや実態を反映していないのではないかという指摘がありました。今回はその通説をひっくり返した「山口県腰痛スタディ(The Yamaguchi Low Back Pain Study」について書いていきたいと思います。

     

     

    ◆山口県腰痛スタディについて

    山口県腰痛スタディは山口県内の整形外科を受診した腰痛患者を調査したもので(4)、2016年の第24回日本腰痛学会で報告されています。

     

    【調査内容の概要】

    ・山口県内の整形外科を受診した323名(2015年4月~5月)※最終的には320名

    ・男性160名、女性163名(平均年齢55.7歳)

    ・初診時に問診、身体診察、アンケート(VAS・JOABPEQ・JOAスコア・SF‐8)を実施。

    ・局所麻酔・ブロック注射によって確定診断をおこない、再診時に効果判定。

     

    【結果】

    資料(4)より引用改編

     

    ・非特異的腰痛22%(70名)

    ・特異的腰痛78%(250名)

    腰部筋膜性:56名

    腰椎椎間関節性:68名

    腰椎椎間板性:40名

    仙腸関節性:18名

    腰椎圧迫骨折:10名

    脊椎腫瘍:0名

    腰椎椎間板ヘルニア:22名

    感染症:1名

    腰部脊柱管狭窄症:35名

    強直性脊椎炎:0名

    内臓疾患:0名

    社会心理的要因:1名

    その他:69名

     

    Schwarzerらも他の論文を引用して、麻酔ブロックにより腰部障害症例の6割以上を診断することができるとしています(5)。その内訳は椎間板内部の断裂(39%)、椎間関節痛(15%)、仙腸関節痛(12%)となっています。なんとなく山口県腰痛スタディと類似しているようにも見えます。精査することで鑑別診断ができる確率は高そうですね。

     

     

    ◆原因不明の腰痛が8割は神話か?

    腰痛の8割は原因不明であるとした論文は1992年に出されたもので(3)、なおかつその論文の根拠はほかの論文の引用です(6・7)。その引用された論文は1970~1980年代のもので、CTが実用化され始めたころで、MRIはまだ実用化されるまえの時代です。そもそも1992年の論文では以下のように書かれています。

     

    Up to 85% of patients cannot be given a definitive diagnosis because of weak associations among symptoms, pathological changes, and imaging results.(意訳:症状、病理学的変化、および画像結果の間の弱い関連性のために、最大85%の患者に決定的な診断を与えることができない)。

     

    あれから30年!

     

    機器の技術も向上し、画像の精度も比較にならないものとなっていると思います。また『腰痛 エビデンスに基づく予防とリハビリテーション』という書籍では以下のような記載もあります。

     

     

    腰部障害の報告では、しばしば腰部の問題の85%は病因が不明であるという統計に触れている。(中略)この記述は単に診断能力が乏しい結果であり、あるいは専門家が技術の限界に達してしまった結果であると主張した者もいる(Finch,1999など)。

     

    今回紹介した論文は以下のように締めくくられています。

     

    A high diagnostic accuracy for LBP is very important in order to achieve excellent treatment results for patients with LBP.(腰痛患者の優れた治療結果を得るためには、腰痛の高い診断精度が非常に重要です)。

     

    簡単に「原因がわかる=腰痛が治せる」というものではないと思いますが、ひとまずしっかり精査して原因を求めることは大切だと思います。原因がわかることで患者さんも心理的に安心しますものね。

     

    「腰痛の8割は原因不明なんですよぉ」なんて言ってると勉強不足がばれちゃうので気をつけましょう(そういう私も最近まで知りませんでした(-_-;))。

     

    【資料】

    (1)Ministry of Health Labour and Welfare. Survey of Living Conditions. Available: http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa10/3-1.html.

    (2)Diagnostic evaluation of low back pain with emphasis on imaging.[PMID:12353946]

    (3)What can the history and physical examination tell us about low back pain?[PMID:1386391]

    (4)Diagnosis and Characters of Non-Specific Low Back Pain in Japan: The Yamaguchi Low Back Pain Study.[PMID:27548658]

    (5)The ability of computed tomography to identify a painful zygapophysial joint in patients with chronic low back pain.[PMID:7644955]

    (6)Synopsis: workshop on idiopathic low-back pain.[PMID:6211779]

    (7)The lumbar spine: an orthopedic challenge. Spine. 1976;1:59-71.

    (8)腰痛 エビデンスに基づく予防とリハビリテーション、小山貴之ら監訳、ナップ、2017

     

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