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ピロリ菌の年代別感染率や胃がん発症の関連因子について

忙しい人のための要約
ピロリ菌の感染率はここ100年で10分の1になりました。胃がんの発症にはピロリ菌のほかに遺伝子や生活習慣(喫煙・塩分摂取)なども関係しています。注意しましょう。

 

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目次

◆ピロリ菌の年代別感染率

ピロリ菌は消化性潰瘍および胃癌などの上部胃腸疾患の病因になることは以前に記事にして紹介しました(→ピロリ菌感染について~原因・症状・検査・除菌~)。日本人の胃がん罹患率、死亡率は先進国の中でも高く、医療費のことを考えると非常に重要な問題といえます。

 

先日、日本人約17万人を対象にしたピロリ菌の感染率について46の報告をメタ分析した論文が報告されました(1)。それによると感染率は以下のようになっています。

 

資料(1)より作成

 

10年単位で区切りよく簡略化すると以下のような感じです。

 

資料(1)より作成

 

1930年:67.4%

2000年:6.6%

 

つまり、この70年の間にピロリ菌の感染率は10分の1以下に減少したということですね。

 

 

◆国立がん研究センターもピロリ菌への注意を喚起している

国立がん研究センターが『科学的根拠に基づくがん予防』を発表しています。そのなかで以下のようにピロリ菌への注意が喚起されています。

 

日本人のがんの原因として、女性で一番、男性でも二番目に多いのが「感染」です。(中略)いずれの場合も、感染したら必ずがんになるわけではありません。それぞれの感染の状況に応じた対応をとることで、がんを防ぐことにつながります。

 

 

 

◆胃がん発症にかかわる3つの因子

 

胃がんの発症には3つの因子が考えられます。ピロリ菌の感染、遺伝子、生活習慣です。ひとつずつ見ていこうと思います。

 

1.ピロリ菌の感染

ピロリ菌と一言でいっても、欧米人がもっているピロリ菌と日本人がもっているピロリ菌は違います。大きく分けると東アジア型欧米型があり、東アジア型のほうが毒性が強いことがいわれています。『欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』より引用します(以下、引用は本著)

 

 

東アジア型のピロリ菌は胃の中の食道に近い部分に感染し、胃の粘膜に注射針のようなものを突き刺して、毒性のもとになる蛋白質を注入します。(中略)蛋白質が細胞に入ると、遺伝子に変異が起きて、これが発がんにつながると考えられています。(中略)

これに対して欧米型のピロリ菌は、胃の出口周辺の十二指腸に近い部分に感染し、胃の粘膜を傷つけることはあまりありません。毒性の蛋白質をあまりもっておらず、持っていても東アジア型のピロリ菌の蛋白質とは少し違って、がんを起こす力が弱いからです。そのため胃がんの原因になりにくく、その代わりに十二指腸潰瘍を起こすと考えられています。

 

この毒性蛋白質(細胞空胞化毒素関連蛋白)のことをCagAといいます。Sasazukiらの約4万人を追跡した報告があります(2)。それによればピロリ菌感染で胃がん発症のオッズ比はCagAがあると9.5、CagAがないと12.5とされています(ピロリ菌感染していない、CagAがないを1とした場合)。

 

資料(2)より作成

 

 

2.遺伝子

十二指腸潰瘍や胃がんの発症に関係する遺伝子があることも研究で判明しています。

ピロリ菌感染にくわえて、遺伝子の変異の有無が胃がんや十二指腸潰瘍の発症を促す可能性があるということですね。ピロリ菌に感染していても胃がんを発症するのは約8%であり、10人に1人以下となっています。遺伝子の影響もあることが考えられますね。

 

2012年に驚くような報告がありました。日本人の十二指腸潰瘍の患者さんと、そうでない日本人のDNAを比較したところ、十二指腸潰瘍のなりやすさと関連する2つの遺伝子が見つかりました。

一つは、以前から胃がんとの関連が知られていた遺伝子で、この遺伝子に変異があると胃がんの発症率が半分近くまで下がります。今回の研究で、それと同時に十二指腸潰瘍の発症率が上がることがわかりました。

そしてもう一つは、なんと血液型を決めるABO遺伝子でした。O型の人は、A型の人とくらべて十二指腸潰瘍の1.4倍になりやすかったのです。

 

 

3.生活習慣(喫煙・塩分)

そして、喫煙や塩分も胃がんの発症に関わっています。さきほどの『欧米人とはこんなに違った日本人の「体質」』より引用します。

 

胃がんは明らかに男性に多く発症します。しかし、日本ではピロリ菌に感染している人の割合は男性も女性も同じなのです。じつは、胃がんが男性に多い傾向は世界で広く認められ、その原因も解明されています。タバコです。2005年までに日本で実施された多数の調査結果を総合的に分析した研究から、喫煙によって胃がんの発症率が高くなるのは確実という結論が得られました。(中略)

ピロリ菌に感染している人がタバコを吸うと、感染しておらず、喫煙もしない人とくらべて、おそろしいことに胃がんの発症率が11倍以上高くなります。研究者らは、日本人男性の胃がんの約6割がピロリ菌の感染によるもので、約3割が喫煙によるものと推定しています。

 

また、塩分の量が多くなるにつれて男性では胃がんの発症率が高くなるという報告もあります(3)(男性の平均塩分摂取量は少ないグループから2.9g、4.8g、6.1g、7.5g、9.9g)。

 

資料(3)より作成

 

 

◆ピロリ菌は鉄不足・妊娠にも影響している!?

資料(4)より引用改編作成

 

ピロリ菌は鉄不足や妊娠に影響している可能性があることが様々な報告から示唆されています(→「ピロリ菌により鉄不足(鉄欠乏性貧血)がおこる」)。胃がんだけでなく、貧血や妊娠している方も注意したほうがいいかもしれません。

 

 

◆最後に

ピロリ菌と胃がんの発症や鉄不足・妊娠への影響について見てきました。胃がんについては多くの因子が複雑に関連することによって起こることがわかりましたが、ピロリ菌の感染はそのなかでも大きな因子になる可能性があります。胃の不調などがあれば医療機関に受診することも考慮してみてはいかがでしょうか。

 

【資料】

(1)Changing trends in the prevalence of H. pylori infection in Japan (1908-2003): a systematic review and meta-regression analysis of 170,752 individuals.[PMID:29138514]

(2)Effect of Helicobacter pylori infection combined with CagA and pepsinogen status on gastric cancer development among Japanese men and women: a nested case-control study.[PMID:16835334]

(3)Salt and salted food intake and subsequent risk of gastric cancer among middle-aged Japanese men and women.[PMID:14710219]

(4)Helicobacter pylori and pregnancy-related disorders.[PMID:24574739

 

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