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    忙しい人のための要約
    長い髭やネクタイには菌が潜んでいて、それが患者さんへの感染などにつながる可能性があることが示唆されています。医療者にとって「身だしなみ」も医療のひとつであるととらえ、患者さんに害を及ばさないように注意しましょう。

     

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    ◆髭は便器とおなじ!?

    微生物学者であるJohn Golobicさんは、髭には思っている以上にばい菌(バクテリア)が付着していると発表しています(1)。

     

    ※音声が出ますのでご注意ください。

     

    Golobicさんは男性の髭に滅菌綿棒をこすりつけ、菌の培養をおこないました。もちろん皮膚にも菌がいるほどですから、髭にも菌がいるのは想定の範囲内です。しかし、なかにはトイレの便器ほどの菌が付着している男性もいたということでした。

     

    これは無意識のうちで髭を手で触っていることが一因らしく、手洗いをあまり行わない人が髭に触っていると、これは非常に由々しき問題になりますね。

     

     

    ◆髭とマスクとバクテリアの関係

    2016年、Parryらは『To Beard or Not to Beard? Bacterial Shedding Among Surgeons.』という論文で髭と菌の関連について報告しています。

     

    医師20人を対象にして、髭のある人と髭のない人で以下のように分けました。

    ①マスクなどの装着なし

    ②マスクあり

    ③マスク+手術用フードあり

     

    対象者には、15cmほど離したプレート上でそれぞれ90秒間にわたり決まった頭部の運動をしてもらい、菌がどれだけそこに落ちるかを調査しました。また50cmほど離しておいたプレートを対照群としています。

     

    ちなみに手術用フードいうのは下の写真のような感じのものです。

     

    資料(2)より引用

     

    さて結果です。まず、髭がある人と髭がない人とを比較すると、装着なしパターンの場合に髭がある人は菌のコロニーの形成(colony-forming units:CFUs)が多い傾向にありましたが、統計的な有意差は認められませんでした。

     

    また手術用フードパターン・マスクパターンと比較すると、マスクなしパターンのほうが有意にコロニーの形成は増えていました。つまり、マスクをしているだけで菌の拡散を低下させることができていたということです。

     

    資料(2)より引用改編

     

    つぎに髭の長さでわけても調査しました(髭がない人、髭が1cm以下、1~2cm、2cm以上)。どんな感じかというと下の写真のような感じで、Aが髭のない人、Bは1~2cm、Cは2cm以上になっています。

     

    資料(2)より引用

     

    結果は、マスクや手術用フードを使用しているパターンでは、有意差は認められませんでした。有意差が認められたのは、装着なしパターンで髭がない群と髭が2cm以上ある群でした。

     

    資料(2)より引用改編

     

    つまり、2cm以上の髭が生えている人でマスクをしていない人は、髭が生えていない人と比較すると菌を有意に振りまいている可能性があるということですね。

     

    髭のある男性が菌を多く振りまくというのは、ほかの研究でも言及されています(3)。

     

     

    ◆ネクタイも汚染されている

    菌をもっているのは髭だけではありません。最近ではネクタイも注意が必要であるとされています。

     

    まず米国微生物学会の調査があります(4)。調査では42名の医師のネクタイを調査していますが、ネクタイのほぼ半分(47.6%)に病原体(黄色ブドウ球菌など)が潜んでいることがわかりました。これは、対照群として調べられた警備員のネクタイと比較すると、約8倍の多さであるとのことです。

     

    また英国医師会は、ネクタイを着用することで、患者の満足度や自信が高まるかもしれないが、ある患者から別の患者に感染が移るリスクが大幅に増加する可能性もあり、ネクタイの着用の禁止を提案しています(5)。

     

     

    ◆医療者の身だしなみも医療のひとつ

    髭やネクタイはオシャレとしてはいいかもしれません。しかし、病院など医療機関で働く場合、オシャレを重視してしまうのは愚でしょう。理学療法士がネクタイをしながら臨床することはほぼないと思いますが、髭を生やしているのならマスクを着用したほうがいいですね。

     

    しかし、マスクというのは顔が見えにくく、患者さんからすれば医療者の顔が見えないというのはなんとも不安に思うのではないでしょうか。できるなら髭は剃って、しっかり顔を出せるようにしておくほうがよいと思います。

     

    医療者にとって身だしなみというのは医療のひとつなんですね。なにかしらの菌を感染させるのはもってのほかですが、髭が生えていることで不潔感・不衛生感を出して、患者さんに不快な感覚を抱かせてしまうのもよろしくないと思います。

     

    気を付けたいところですね。

     

    【資料】

    (1)Some beards are so full of poo they are as dirty as toilets

    (2)To Beard or Not to Beard? Bacterial Shedding Among Surgeons.[PMID:26942473

    (3)The effect of facial hair and sex on the dispersal of bacteria below a masked subject.[PMID:10651682]

    (4)Is the Clinicians’ Necktie a Potential Fomite for Hospital Acquired Infections? 

    (5)Doctors should abandon ties and avoid nose rings(BMJ. 2003 June 7; 326(7401): 1231.

     

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