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    ◆ビタミンDはホルモン

    ビタミンDは、ほかのビタミンと異なり食事や薬剤の摂取以外にも、日光を浴びることにより産生することができます。つまり、厳密にいえばビタミンではないわけです。

     

    ビタミンというのは①身体に欠かせない、②体内で産生(合成)できないという基準(条件)があり、それを満たしていないので、どちらかといえばホルモンに近い存在であるわけです(作用としてはステロイドホルモンに似ている)。

     

     

     

    ◆ビタミンDの種類

    ビタミンDはD₂からD₇の6種類があります。

     

    なぜD₁がないかというと、見つかったのちにD₁といわれたものはD₂が混じりあった不純物であることがわかり、欠番になったからです。6種類あるビタミンDのなかで大切なのは、D₂とD₃です。

     

    ・D₂はエルゴカルシフェロールというもので、植物由来のビタミンDになります。

     

    ・D₃はコレカルシフェロールというもので、魚類の肝臓などに含まれるビタミンDになります。また、後述する皮膚で作られるビタミンDはD₃になります。

     

     

     

    ◆日光によるビタミンDの生成過程

    日光によるビタミンDの生成過程について説明していきたいと思います。

     

    (1)皮膚でビタミンD₃をつくる

    ●プロビタミンD₃→プレビタミンD₃→ビタミンD₃→ビタミンD(D₂・D₃)→25(OH)D→25(OH)D→1,25(OH)₂D

     

    資料(1)より引用

     

    日光に当たると、UVB(紫外線)により皮膚の表面でプロビタミンD₃(7-dehydrocholesterol)がプレビタミンD₃に変換されます。そして、プレビタミンD₃は体温により異性化をおこし、ビタミンD₃になります。

     

     

    (2)ビタミンDが25(OH)Dになる

    ●プロビタミンD₃→プレビタミンD₃→ビタミンD₃→ビタミンD(D₂・D₃)→25(OH)D→1,25(OH)₂D

     

    さきほど皮膚で作られたビタミンD、経口摂取されたビタミンDのほとんどは肝臓に運ばれます。そこでCYP2R1という酵素により水酸化反応がおこり、25ー水酸化ビタミンD[25-hydroxyvitamin D:25(OH)D]に代謝されます。

     

    25(OH)Dは、ビタミンD結合蛋白と結合して血中に長期間安定して存在しており、ビタミンDの栄養状態(不足・欠乏など)を反映する指標とされています。

     

     

    (3)25(OH)Dが1,25(OH)₂Dになる

    ●プロビタミンD₃→プレビタミンD₃→ビタミンD₃→ビタミンD(D₂・D₃)→25(OH)D→25(OH)D→1,25(OH)₂D

     

    そして25(OH)Dは腎臓に運ばれて、CYP27B1により1α位の水酸化を受けて、活性型である1α,25ーdihydroxyvitamin D[1,25(OH)₂D:活性型ビタミンD]になります。

     

    従来は、活性型ビタミンの産生は腎近位細尿管に限定されておこなわれていると考えられていましたが、近年は副甲状腺や骨、乳房、結腸、皮膚、前立腺、免疫細胞などでも1α水酸化酵素が発現し、腎臓以外でも直接1,25(OH)₂Dの産生が可能であることが判明しています(1)。

     

    Cannelらによれば、1,25(OH)₂Dが体内のほとんどの組織で見つかり、200以上の遺伝子に働きかけているとしています(2)。ここまでの代謝が円滑におこなわることが重要なわけですね。

     

    ビタミンDの生成過程

     

    生成過程における水酸化酵素(CYP)はシトクロムP450のことです。シトクロムP450には鉄が補因子として欠かせませんので、鉄不足があるとビタミンD生成の反応が滞ることが予測されますね。

     

    さて、さきほども述べたように、ビタミンDの栄養指標は25(OH)Dになっています。1,25(OH)₂Dは財布のお金で、25(OH)Dは銀行に預けているお金だと考えるといいかもしれません。

     

    財布にあるお金だけでは、その人の資本状態(ビタミンDの状態)はわかりませんね。銀行のお金を多寡(多い少ない)を調べることで、資本状態を把握することができるわけです。

     

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    ◆ビタミンD不足・欠乏の判定指針

    資料(3)より引用

     

    2016年の8月1日、25(OH)Dが保険収載されることとなり、日本骨代謝学会および日本内分泌学会が『ビタミンD不足・欠乏の判定指針』を発表しました(3)。

     

    訳すと以下のようになります。

    【判定基準】

    (1)血清25(OH)D濃度が30ng/mL以上をビタミンD充足状態と判定する。

    (2)血清25(OH)D濃度が30ng/mL未満をビタミンD非充足状態と判定する

    a.血清25(OH)D濃度が20ng/mL以上30ng/mL未満をビタミンD不足と判定する。

    b.血清25(OH)D濃度が20ng/mL未満をビタミンD欠乏と判定する。

     

     

    この判定指針においてビタミンD不足・欠乏症状として考慮されているのは、骨折・転倒リスク、続発性副甲状腺機能亢進症および骨粗鬆症薬に対する低反応です。

     

     

     

    ◆日本人の約90%がビタミンD不足の可能性がある

    「ビタミンD不足なんていうのは、聞いたことがないし、心配いらないでしょ?」みたいに考えている人がいるかもしれませんね。

     

    しかし、日本人9084名を対象に調査した研究によれば、ビタミンDが充足している人は9.1%にとどまっています(4)。

     

    また日本人1683人(男性595人・女性1088人)を調査したところ、ビタミンD不足・欠乏の割合は82.5%(不足:81.3%、欠乏:1.2%)でした(6)※研究では25(OH)D濃度が10ng/mL未満を欠乏、10ー30ng/mLを不足としています。

     

    ビタミンD欠乏症と不足状態の有症率

    資料(5)より引用、資料(6)原典

     

    グラフに示すように、全年齢層において男女ともにビタミンD不足・欠乏状態であることがわかります。とくに女性でその傾向が強くなっています。もしかすると、先述したように鉄欠乏が関係しているのかもしれません。

     

    ちなみに、ビタミンDの欠乏・不足は現在の喫煙や外を歩く習慣がない、高い副甲状腺ホルモン値(iPTH)、日々のビタミンD摂取不足に有意に関連が認められました。

     

     

     

    ◆最後に

    ビタミンDの欠乏・不足は世界的にも見られている現象であり、epidemic(流行)とまで言われています。

     

    資料(3)より引用

     

    また、ビタミンDは多くの障害・疾患(骨折リスク・転倒リスク・骨吸収抑制薬に対する反応性低下・続発性甲状腺機能亢進症・くる病・骨軟化病・低カルシウム血症など)と関係があることが論文でも報告されており、これから取り上げていこうと思います。

     

     

    【資料】

    (1)Vitamin D metabolism, mechanism of action, and clinical applications.[PMID:24529992

    (2)Use of vitamin D in clinical practice.[PMID:18377099

    (3)Assessment criteria for vitamin D deficiency/insufficiency in Japan – proposal by an expert panel supported by Research Program of Intractable Diseases, Ministry of Health, Labour and Welfare, Japan, The Japanese Society for Bone and Mineral Research and The Japan Endocrine Society [Opinion].[PMID:28003569]

    (4)Impact of demographic, environmental, and lifestyle factors on vitamin D sufficiency in 9084 Japanese adults.[PMID:25576673]

    (5)アジア・太平洋地域報告書 骨粗鬆症の疫学、費用および負担 2013(Asia-Pacific Regional Audit

    (6)Profiles of vitamin D insufficiency and deficiency in Japanese men and women: association with biological, environmental, and nutritional factors and coexisting disorders: the ROAD study.[PMID:23673463

    (7)田中清・桒原晶子、食の機能としてのビタミンD、食と医療;1号:124ー132、2017

    (8)桒原晶子、ビタミンD不足の意義、臨床栄養;vol130 no2:169-174、2017

    (9)ビタミンD革命、ソラム・カルサ、バベルプレス、2010

    (10)栄養学と食事療法大辞典、キャスリーン・マハンら、ガイアブックス、2015

     

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