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    忙しい人のための要約
    糖尿病性の関節可動域制限が動脈硬化(アテローム性硬化)と関連しているという報告があり、祈りの手サインや卓上徴候で簡易に評価することができます。糖尿病と動脈硬化は大血管疾患の発症リスクを高めますので、早期発見・早期介入が大切です。

     

    ◆はじめに

    糖尿病性の手指関節可動域制限(limited joint mobility)が、頸動脈のアテローム性硬化症と関連しているという論文がでました。

     

    今回は、以前の記事とあわせて紹介したいと思います。

     

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    ◆糖尿性の関節可動域制限

    以前の記事で、糖尿病と肩関節周囲炎が関係していることを述べました(『肩関節周囲炎(五十肩)患者の糖尿病を確認してますか?』参照)。

     

    この記事のなかで、糖尿病性の限局的な関節可動域制限(limited joint mobility)として、祈りの手サイン(Prayer sign)・卓上徴候(Tabletop sign)というものが、高頻度で観察されるということを紹介しました。復習がてら簡単に紹介しておきます。

     

     

    1.祈りの手サイン(prayer sign)

    祈りの手サインは、お祈りするように合掌し(手掌を合わせる)、下の写真のように隙間ができたら陽性です。

    資料(1・2)より引用

     

    2.卓上徴候(table sign)

    卓上徴候は、平面なテーブルの上に手掌をおいて、机に手指がくっつくかを確認します。くっつかなければ陽性です。

    資料(3)より引用

     

     

    ◆limited joint mobilityと動脈硬化の関連

    さて2017年7月に、Mineokaらの「糖尿病性のlimited joint mobilityと動脈硬化(アテローム性硬化症)の関連」を調査した報告が『Diabets Research and Clinical Practice』に掲載されました。

     

    研究対象は2012~2014年に連続した外来2型糖尿病患者341人です。対象者に頸動脈エコー検査をおこない、頸動脈内膜中膜肥厚(IMT)とプラークスコアを評価しました。

    資料(4)より引用

     

    IMTとはIntima Media Thicknessの略で、三層からなる動脈壁の内膜と中膜を併せた厚さのことを指します。IMTは早期の動脈硬化(アテローム性硬化)の指標と考えられており、厚みが増加すると心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まることが報告されています(5-6)。

     

    そのIMTのなかで厚さが1.1㎜をこえるものをプラークとし、プラークの大きさと数を同時に定量化したものが、プラークスコアになります。

     

    研究の結果、341人中72人に手指の関節可動域制限(limited joint mobility)が認められました。解析したところ、関節可動域制限がない患者にくらべると、関節可動域制限がある患者は頸動脈IMTとプラークスコアが有意に高いことがわかりました。

     

     

    資料(7)より作成

     

     

    ◆糖尿病と冠動脈疾患・脳卒中の関連

    糖尿病と大血管性疾患は非常に関連があり、無症候性の動脈硬化症(アテローム性硬化症)を早期に発見、早期に治療することが重要になります。

     

    糖尿病患者の冠動脈疾患および脳卒中の年間発症率は、一般住民と比較して冠動脈疾患で約3倍、脳卒中で約2倍高率であったという報告があります。つまり、糖尿病患者は大血管性疾患にかかりやすいということですね。

     

    資料(8)より作成

     

    また、糖尿病がある人が心筋梗塞をおこすリスクは、すでに1回心筋梗塞をおこした糖尿病でない人と同じ程度であるという報告もあります。

     

    資料(9)より作成

     

    このような大血管疾患に障害がおこれば、死亡リスクは高まりますし、ADLやQOLにも大きく影響するのは想像に難くありません。手指の関節可動域制限がある患者さんは、そういうリスクがあることを考慮する必要がありますね。

     

    【資料】

    (1)Prayer sign.[PMID:23984257]

    (2)Prayer sign in diabetes mellitus.[PMID:23961509

    (3)Somai P. Limited joint mobility in diabetes mellitus: The clinical implications. J Musculoskel Med. 2011;28:118–24.

    (4)新しい人体の教科書 上、山科正平、講談社、2017

    (5)Ultrasonographically assessed carotid morphology and the risk of coronary heart disease.[PMID:1911709]

    (6)Common carotid intima-media thickness and risk of stroke and myocardial infarction: the Rotterdam Study.[PMID:9315528]

    (7)Relationship between limited joint mobility of hand and carotid atherosclerosis in patients with type 2 diabetes.[PMID:28802699

    (8)曽根博仁、1)わが国の糖尿病血管合併症の実態:Japanese Diabets Complication Study(JDCS)の結果より、日本内科学会雑誌;98巻:134ー141、2009

    (9)Mortality from coronary heart disease in subjects with type 2 diabetes and in nondiabetic subjects with and without prior myocardial infarction.[PMID:9673301

     

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