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    忙しい人のための要約
    言語流暢性課題で軽度の認知症をスクリーニングできるという報告があります。高齢糖尿病患者の認知機能(自主的な服薬管理)のカット・オフ値としては、動物の名前11個となっています。臨床で活用してみるのもありかもしれません。

     

     

    ◆はじめに

    今後、超高齢社会のなかで認知症を患う人は増加していくと思われます。

     

    認知症を早期に発見し、適切な介入をおこなうことが大切ですね。

     

    今回は先月出た論文とともに認知症のスクリーニングなどについて述べていこうと思います。

     

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    ◆糖尿病は軽度認知障害(MCI)のリスク高める

    先月(2017年8月28日)、横浜市立大学の寺内らの論文が『Journal of Diabets Investigation』に掲載されました。

     

    『Predicting the ability of elderly diabetic patients to acquire the insulin self-injection technique based on the number of animal names recalled.』というタイトルで、1分間に思いだせる動物の数で、高齢糖尿病患者がインスリン治療を自己管理できるかどうか予測できるという内容です(1)。

     

    高齢者での糖尿病は、軽度認知障害(MCI)の発症リスクを高めることが報告されています(2)。もし認知症があったり進行したりすると、服薬などの自主管理にリスクがでてきますね。高度の低血糖になったりすれば、命にも関わってきます。

     

    そこで寺内らは高齢者で2型糖尿病を患っている人を対象にして、認知機能検査を実施して、認知機能と服薬などの自己管理能力を調査しました(後ろ向き観察研究)。

     

    <調査内容の概略>

    対象:60歳以上の2型糖尿病がある57名。

    評価:MMSE・言語流暢性課題・インスリン自己管理能力

    分析:多変量ロジスティクス回帰分析

     

    さて、評価項目に言語流暢性課題というものがでてきました。理学療法士には馴染みがない人も多いと思います。わたしもこの論文を読むまでは知りませんでした(笑)

     

    結果にいくまえに、先に言語流暢性課題について説明しておきたいと思います(MMSEに関しては臨床で使っている人も多いと思うので割愛)。

     

     

     

    ◆言語流暢性課題について

    言語流暢性課題(Word fluency test・Verbal fluency test)というのは、よく用いられる神経心理学的検査のひとつです。

     

    言語流暢性課題には、カテゴリーの単語をできるだけ多く述べる「意味カテゴリー流暢性課題(Category fluency test:CFT)」とそれぞれの文字から始まる単語をできるだけ多く述べる「文字流暢性課題(Letter fluency test:LFT)」があります。

     

    例えば、「動物」をできるだけ多くあげましょうというのは、CFTになります。「し」から始めるものをできるだけ多くあげましょうというのは、LFTになります。

     

    また、いくつか論文を見るかぎり、思いだすこと(述べること)ができる時間は1分のようです。

     

     

    言語流暢性の低下は、認知症の初期から認められるといわれています(3)。ゆえに、寺内らもこの検査をおこなったわけですね。わが国でも大沢らが言語流暢性課題と認知症の関連性を報告しています(4)。

     

    資料(4)より引用(一部改編)

     

    報告によれば、言語流暢性課題は認知症のスクリーニングとして有用であり、CFT・LFTともにMMSEと高い正の相関がありました。また、いかなる認知症のタイプでもCFTのほうがLFTよりも多く思いだすことができたとしています。

     

     

     

    ◆「動物の名前11個以上」が軽度認知障害のカットオフ値になる

    さて、寺内らの研究(認知機能検査による一週間以内のインスリン治療の管理能力の有無を予測)の結果です。

     

    <結果>

    ・自己管理の予測には、MMSEよりも言語流暢性課題のほうがよい。

    ・言語流暢性課題のなかでもCFTのほうが信頼性が高かった。

    ・動物の名前を「11個」以上が目安になる(感度73%・特異度91%)。

     

     

    特異度が高い検査は、除外診断に用いることができます。この91%というのは非常に高いといえますね。動物が11個以上言えた場合には、自分で服薬管理ができる(軽度認知障害の疑いは低い)と考えられるわけです。

     

    もちろん言うまでもないと思いますが、これだけですべてを判断することはできません。

     

    教育レベルによって言語流暢性課題のカットオフ値が変わってくるという報告もあります(5)。政治をまったく勉強していない人に、歴代の総理大臣を述べてくださいといっても答えられませんよね。教育レベルがあまり関係しないような問いにすることも大切です。

     

    しかし、メタ・アナリシスにおいても、アルツハイマー型認知症やうつ病などのスクリーニングとして言語流暢性課題は有用の可能性があるとされています(6)。ぜひ、臨床などで活用してみてはいかがでしょうか。

     

     

    【資料】

    (1)Predicting the ability of elderly diabetic patients to acquire the insulin self-injection technique based on the number of animal names recalled.[PMID:28846204

    (2)Association of diabetes with amnestic and nonamnestic mild cognitive impairment.[PMID:23562428]

    (3)A study of language functioning in Alzheimer patients.[PMID:7139272]

    (4)大沢愛子、”もの忘れ外来”における認知症と言語流暢性課題、高次脳機能研究;第26巻第3号:93‐98、2006

    (5)Category fluency as a screening test for Alzheimer disease in illiterate and literate patients.[PMID:17334275

    (6)A meta-analytic review of verbal fluency deficits in depression.[PMID:15814444

     

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