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    忙しい人のための要約
    荒木茂さんは理学療法士の実習において指導者が守ったほうがいい5つのルールを挙げています。それは①長時間拘束しない、②レポートはほどほどに、③完璧を目指すな、④フィードバックは簡潔に、⑤英文抄読はやめようです。

     

     

    ◆はじめに

    先日、理学療法士学生が自殺した事件の第一審判決がでました。

     

    理学療法士の実習は、場所によっては非常にブラックなところがあります(→参照:『PT・OTのつらい実習に提言 駆けこみ寺をつくろう!』)。一人前にするためには、実習生の人権や健康を蹂躙してもいいという恐ろしい意識があるのかもしれません。

     

    今回は実習生を守るために、バイザーが守ったほうがいい指針を紹介したいと思います。

     

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    ◆社会問題化している理学療法士の臨床実習

    2017年9月8日、毎日新聞に『理学・作業療法士学生、指導役と相次ぐトラブル 養成課程・実習環境、見直しへ』という記事が載りました。一部引用します。

     

    リハビリの専門家として病院や福祉施設などで働く理学療法士や作業療法士の国家資格の取得に必要な臨床実習で、実習先の施設に勤務して指導役となる両療法士と学生とのトラブルが相次いでいるとして、元学生や専門家らから改善を求める声が上がっている。

    理学療法士の養成課程について詳しい専門家による調査では、2009年度から昨年度まで、回答した学生の約6割が臨床実習について「不当な待遇と感じた」と答えた。

    また、実習先での指導役からのパワハラが原因で自殺したとして、大阪市内の学生の妻が実習を受けた施設の運営法人らに損害賠償を求めて大阪地方裁判所に提訴する事態も。

    厚生労働省は6月に専門家による検討会を設け、養成施設への外部評価導入など指導体制の見直しに乗り出した。

     

    2018年6月28日、記事のなかでも言及されている大阪の実習生が自殺した事件の第一審判決が出され、被告側に約6100万の支払い命令が出されています(→参照:『理学療法士学生の実習問題を問う』)。

     

    理学療法士の実習のブラックさは、新聞にも取りあげられ、過失が裁判で争われ、厚生労働省や理学療法士協会が対策にも動きだしています。これはもう社会問題化しているといっても過言ではありません。

     

    毎日新聞の記事では、2013年におきた理学療法士実習生のパワハラ自殺や実習の合否が、学生の資質よりもバイザーとの相性に左右されるということが指摘されています。

     

    たしかに、突きつめてみると、バイザーが極端な指導に走らなければいいだけの話のようにも思います。学生を追い込まないために、バイザーはいったいどうすればいいのでしょうか?

     

    そのヒントを理学療法士の荒木茂さんが提示してくれています。

     

     

    ◆理学療法士実習生を守るための5箇条のご誓文

    荒木茂さんは石川県でご活躍している理学療法士で、ヤンダアプローチ(マッスルインバランス)などのセミナーなどもおこなっているので、ご存知のかたも多いかもしれません。

     

    荒木さんは著書のなかで『実習生の人権と健康を守るための5箇条のご誓文』を掲げています。これは長年の学生指導の反省から導きだした、臨床実習におけるバイザーの5つの注意事項のことです。

     

    有用なものだと思いましたので、ご紹介したいと思います。

     

     

    1.病院での長時間の拘束は拉致に等しい

    朝から実習が始まって、21時とか22時、ヘタしたら日づけが変わるまで学生を拘束している実習先もあるのではないでしょうか?

     

    学生はデイリーやらレポートやら書かないといけませんから、帰宅する時間が遅くなればなるほど寝る時間が少なくなるわけです。なるべく定時に帰れるようにしましょう。

     

     

    2.何日間も睡眠時間がないほどレポートに時間を費やさせるのはいじめに等しい

    わたしが学生のときは平日に統合と解釈や考察まで書いてこいと言われて、眠れずにそのまま実習先の病院に向かった記憶があります。いま思えば嫌がらせに近いなぁと思いますね。学生なんか知識もないし、なかなか考えがまとまりません。わたしが指導者なら休日をまたぐようにして課題をだすと思います。

     

    睡眠時間をとらせないというのは身体・精神に悪影響です。場合によっては暴力です。けっして許されることではないでしょう。

     

     

    3.指導者の気に入るまでレポートを書き直させるのは暴力に等しい

    学生なんだから完璧なレポートをつくるなんて、なかなか難しいですよね。

     

    話はやや変わりますが、いまでもレポートが手書きの実習先とかあったら、時代錯誤も甚だしいですよね。わたしが学生のときのは噂でチラホラ聞きました。手書きでやるとパソコンと違ってなにか効果があるのでしょうか?手書きのほうがメリットがあるというエビデンスを出さないといけません(苦笑)。

     

     

    4.フィードバックと称して長時間、一方的に問答を繰り返すのは尋問に等しい

    これもありそうですね。学生はいっぱいいっぱいですから、考える癖をつけさせたいのもわかりますが、ほどほどにしたほうがいいでしょうね。

     

     

    5.学生に英文抄読をさせて、さらに時間を奪うことは拷問に等しい

    わたしもこれに近いようなことやりました。なんでもかんでも詰めこめばいいってもんでもないですよね。やるにしても日本語の論文でいいんじゃないでしょうか。

     

     

    ◆実習も門前の小僧習わぬ経を読む?

    ことわざに「門前の小僧習わぬ経を読む」というものがあります。

     

    寺の門前に住んでいる子どもや僧のそばにいる子どもは、日頃から僧の読経を聞いているから、いつのまにか般若心経くらいは読めるようになるということで、「人は自分の置かれている環境によって、無意識に影響を受けている」という意味があります。

     

    学生の人権や健康を無視するような指導者が担当になった場合、学生は指導者とはこういうものなんだと思うかもしれません。また、実習とは厳しくて辛くて乗り越えるもんだというステレオタイプが刷りこまれてしまうことも考えられます。

     

    実習はべつに苦役ではなく、たんに学びの場、現場の雰囲気を経験する場です。実習を苦役のように感じた学生が指導者になったときに、苦しいことが主になるような指導をしてしまうのはなんとも残念です。

     

    門前の小僧のごとく、指導者が学生にあたえる影響は大きいようにおもいます。患者さんとの接し方や理学療法の進め方・考え方、勉強の仕方、学生の指導の仕方……挙げればたくさんあると思います。

     

    知識を教えることも大切です。しかし、知識は忘れてしまってるけど、指導者の印象って残っていないでしょうか?

     

    思い出がイヤなことばかりの指導者ではなく、こんな指導者になりたいなと学生に自発的に思ってもらえるような指導がしたいものですね。

     

     

    ◆学生のほうも気をつけよう

    そして、学生のほうも必要最低限のマナーやルールを守りましょう。もちろん人権を無視するような理不尽なものは守らなくてもいいですがね。指導者と学生の互いの敬意のバランスが大切だと思うんですよね。どちらが欠けても決していい実習にはならないと思います。

     

    かつ意識しなければならないのは、実習のためになんの関係もない患者さんが協力してくれているという事実です。非常に貴重な時間を割いてくれているのです。これを忘れたらおしまいです。

     

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