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    ◆はじめに

    早川書房から出版されている『平均思考は捨てなさい 出る杭を伸ばす個の科学』という本を読みました。

     

    なかなか示唆深い本でしたので、私見を交えながら、かいつまんで紹介したいと思います。

     

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    ◆平均思考は捨てなさい 概要

    『平均思考は捨てなさい 出る杭を伸ばす個の科学』は、早川書房から出版されている本です。

     

    1.著者

    著者は、トッド・ローズ(Todd Rose)さんで、心理学者の方です。ハーバード大学院の教官で、個性学というものを推進しているようです。

     

    2.目次

    はじめに

    第1部 平均の時代

     第1章 平均の発明

    ・平均を支配する数学

    ・平均人 ほか

     第2章 私たちの世界はいかにして標準化されたか

    ・始めに組織ありき

    ・マネージャーの誕生 ほか

     第3章 平均を王座から引きずりおろす

    ・エルゴード性の罠とスイッチ

    ・個性学 ほか

    第2部

     第4章 才能にはバラツキがある

    ・バラツキの原理 ほか

     第5章 特性は神話である

    ・コンテクストの原理

    ・条件と帰結のシグネチャー ほか

     第6章 私たちは誰もが、行く人の少ない道を歩んでいる

    ・迂回路の原理

    ・進歩のペース ほか

    第3部 個人の時代

     第7章 企業が個性を重視すると

    ・コストコにおける忠誠心の秘密 ほか

     第8章 高等教育に平均はいらない

    ・みんなと同じことで秀でる ほか

     第9章 「機会均等」の解釈を見直す

    ・うまくフィットする ほか

     

     

     

    ◆平均というものはない

    本書では、平均というものは実際には存在しないのに、わたしたちは、それが実在し、万能のものであるように考えていることを指摘しています。

     

    1.アメリカの空軍の事故

    たとえば、本書で挙げられているアメリカ空軍の例。

     

    1940年代のアメリカ空軍は、事故が増加して頭を抱えていました。飛行機の機能自体には問題はなく、またパイロットの操縦スキルも悪くなかったからです。

     

    そして、最終的には、コックピットの設計が悪いのではないか?ということが考えられるようになりました。

     

    そこで、4000人以上のパイロットの身体測定をおこない、コックピットの設計を変えようということになりました。その担当になったのがダニエルズ中尉です。以下、引用します(改行・強調は引用者による)。

     

    そして、4063人のパイロットから集めた大量のデータを使い、コックピットのデザインに最もふさわしいと思われる平均的な寸法を身長、胸回り、腕の長さなど、10か所について計算した。

    のうえで、この「平均的なパイロット」の体のサイズとの誤差が30パーセント以内ならば、おおむね平均に該当するものと見なした。

    (中略)

    かなりの人数のパイロットが、10項目すべてに関して平均の範囲内に収まるだろうと科学者たちも予想した。

    しかし実際の数値がまとめられると、ダニエルズさえも衝撃を受けた。結果はゼロ。4063人のパイロットのなかで、10項目すべてが平均の範囲内におさまったケースはひとつもなかったのである。

    (中略)

    10項目を3項目に絞り込み、たとえば首回り、腿回り、手首回りに注目してみても、3つに関してすべて平均値におさまるパイロットは3.5パーセントに満たなかったのである。

    (中略)

    平均的なパイロットなど、存在しないのである。

     

    つまり、平均をもとにしたコックピットをつくると、だれにも合わないコックピットができあがるわけですね。

     

    そこで、アメリカ空軍は、平均値を参考基準にするのをやめ、飛行機の道具すべて(シートやフットペダル、ヘルメットのストラップ、飛行服など)を調整可能なタイプに変えました。結果、アメリカ空軍は世界一と評価されるまでになったのです。

     

    この話からもわかるように、平均というのは、存在していそうで、存在しないんです。

     

     

    2.Amazonのレビュー

    もっと身近な例をあげれば、Amazonのレビューも似たようなものですね。

     

    たとえば、1の評価をつけた人と、5の評価をつけた人がいたとします。平均は3ですね。でも、3の評価をつけた人はいません。しかし、3の評価というだけで、「まぁまぁなのかな」なんて考えてしまうんですよね。

     

    人間や物事を論じたり、とらえるときに大切なのは、平均ではありません。逆に、数字のバラツキであったり、偏りこそが大切なんです。

     

    なぜ偏っているのか?どうしてバラツキがあるのか?そういうところにこそ、真実が宿っているのに、平均値がすべてを隠してしまうんですね。

     

    そして、多くの人は、平均値を絶対的なもののように信じてしまってるわけです。

     

    ちなみに、本書のAmazonのレビューを見てみると、

     

    レビューなんて、感情まかせのいいかげんなものですね(笑)

     

     

    ◆赤ちゃんは決まった通りに成長しない

    赤ちゃんには、決まった成長過程がある。

     

    そう信じている人は、平均に侵されているかもしれません。

     

    本書では、以下のように述べられています(改行・強調は筆者による)。

     

    (著名な研究者や医療者は)「典型的な」子どもは多くのサンプルから得られた平均的な年齢に基づいて成長していくものだと考えた。子どもが歩き始めるまでには正常な成長経路をたどるはずという前提は直観的に理解しやすく、ほとんど誰も異論を唱えなかった。

    だひとりの例外は、カレン・アドルフという科学者だった。

    (中略)

    (アドルフは)28人の幼児の発達をハイハイする前から歩き始めるまで観察したうえで、「分析して集計する」方法でデータを調べた。

    その結果、ハイハイに至る正常な道など存在しない事実を発見する。子どもがたどる道はひとつどころか25種類もあり、どれもがユニークな動きのパターンを伴うが、最終的には全員が同じように歩いた。

     

    ちょっと平均的な成長から逸脱すると、病気なんじゃないのかな?みたいな考えにいきやすいですよね。でも、それは平均の毒牙なんですよね。

     

    さきほど述べたように、平均なんてのはないんです。例外もありますが、平均を個人にあてはめるのは、非常に滑稽なことなんです。

     

     

    ◆読んでみてください

    『平均思考を捨てなさい』の一部を、かいつまんで紹介させていただきました。

     

    日常には平均があふれています。しかし、平均って、すごく曖昧で、ヘンテコなものなんです。

     

    平均の罠から脱するために、ぜひ読んでみてください。

     

    【資料】

    (1)平均思考は捨てないさい、トッド・ローズ、早川書房、2017

    (2)13歳からの反社会学、パオロ・マッツァリーノ、角川文庫、2013

     

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