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    忙しい人のための要約
    ガイドラインの不遵守があった医療訴訟では、過失を認める割合が高くなっています。民間の健康食品事業もエビデンスを求められるようになっています。ガイドラインから逸脱した医療をおこなうときは、しっかりと説明できるようにしましょう。

     

    ◆はじめに

    ガイドラインは、EBMを実践していくうえで、非常に有用なツールです。

     

    しかし、近年ガイドラインが関わる医療訴訟が、増加しています。また、民間でもエビデンス重視志向が見受けられます。

     

    今回は、ガイドライン(エビデンス)と医療訴訟についてまとめてみました。

     

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    ◆ガイドラインが関わる医療訴訟が増えている

    日経メディカルに『ガイドラインを引用する訴訟が急増しています』との記事が掲載されました。記事では、弁護士の桑原博道さんがインタビューに答えています。

     

    記事によると、2004年前後にピークを迎えた医療訴訟は、2009年に底を打ちましたが、その後また増加しているとのことです。

     

    また、1994年まではガイドラインを扱った訴訟はありませんでしたが、1995年からの10年間で約40件に増加、2005年からの10年間で160件以上に達したとも書かれています。

     

    つまり、ガイドラインが関わる訴訟が、急増しているということですね。

     

     

    ◆ガイドラインを逸脱すると過失になりやすい

    記事のデータから、グラフを作成すると以下のようになります。

     

    資料(1)より作成

     

    つまり、ガイドラインを遵守していないと、裁判で過失として認められる可能性が高くなるということですね。

     

     

    ◆理学療法士の70%はガイドラインを使ってない

    以前、日本の理学療法士の約70%はガイドラインを利用していない、ということを記事にしました。

     

     

     

    さきほどの医療訴訟のことを踏まえると、ガイドラインを使っていないというのは、理学療法士にとって非常に大きな危機といえますね。

     

    とくに、ガイドラインで推奨されていない手技を使用しているセラピストや病院は、注意が必要であるとおもいます。

     

    記事にも書きましたが、ガイドラインから逸脱した治療をおこなうときは、その理由を明確に、論理的に説明できなければなりません。

     

    「Aという治療がガイドラインで推奨されているのに、なぜおこなわなかったんですか?(なぜBという治療をおこなったのですか?)」というのは、至極当然な質問であるとおもいます。

     

    訊かれたときに、「個人的に好きな手技なので」、「なんとなくです」などと説明すると、おそらく過失になるのではないでしょうか?

     

    「○○という質の高い報告もあります。また、当院での医療成績も良好でありまして、通常の治療の群と比較して、○○%の患者さんが…」くらいの説明は必要かなと思います。

     

     

    ◆エビデンス重視の時代へ、個人の体験談は通用しない

    話はややずれますが、個人の体験談もあてにはなりません。

     

    消費者庁が7月14日に「打消し表示に関する実態調査報告書」を出しました(→PDF)。

     

    それには、以下のような記載があります。

     

    体験談を用いる場合の留意点

    体験談により一般消費者の誤認を招かないようにするためには、当該商品・サービスの効果、性能等に適切に対応したものを用いることが必要であり、商品の効能、性能等に関して事業者が行った調査における(i)被験者の数及びその属性、(ii)そのうち体験談と同じような効果、性能等が得られた者が占める割合、(iii)体験談と同じような効果、性能等が得られなかった者が占める割合等を明瞭に表示すべきである。

     

    つまり、民間の健康食品業者もエビデンスを明確にせよ!ということですね。

     

    民間の健康食品事業でさえ、そのようにエビデンスを求められる時代です。医療者が、エビデンスのない治療をおこなうのは注意が必要なのは、言わずもがなですよね。

     

    「患者さんが効いたと言っていたので…」なんていうのは、理由にならないということです。

     

     

    ◆根拠をもって説明できればいい

    理学療法士や作業療法士といった、リハビリ専門職に関連しそうな法知識や裁判判例・事例は、記事にまとめていますので参考にしてください。

     

    【関連記事】

    リハビリ事故・訴訟・裁判に関わる法知識

    不法行為や債務不履行(安全配慮義務)などについて書いています。

     

    リハビリ事故の事例・判例から対策を考える

    最高裁の判例によれば、医療者には業務において、最高レベルの注意が求められるとしています。報告されているリハビリ事故の事例や判例などを踏まえて、リハビリ訴訟を予防するための対策について書いています。

     

     

    また、リハビリに必要なガイドラインも、以下の記事に載せています。

     

    【リハビリに関連するガイドライン】

    理学療法士の70.1%がガイドラインを使っていないという事実

    掲載しているガイドライン:

    アキレス腱断裂・関節リウマチ・外反母趾・頚椎症性脊髄症(旧版)・骨転移・上腕骨外側上顆炎・前十字靭帯損傷・大腿骨転子部・頚部骨折・橈骨遠位端骨折・変形性股関節症(旧版)・腰椎椎間板ヘルニア・腰痛・腰部脊柱管狭窄症・筋萎縮性側索硬化症・ギランバレー症候群・認知症・脳卒中(旧版)・パーキンソン病・慢性頭痛・がん患者の呼吸器症状の緩和(旧版)・神経筋疾患、脊損の呼吸リハ・糖尿病(旧版)・高血圧・嚥下障害・褥瘡(診療)・褥瘡(予防・管理)

     

     

    注意なんですが、すべてガイドライン通りの治療をしなさいといっているわけではありません。

     

    なんでもかんでもガイドラインみたいな、ガイドライン至上主義は、EBMとは相反するものですから(参照:EBMの超基礎知識)。

     

    実際の臨床では、ガイドライン通りにいかないことも大いにありえます。

     

    そのとき、ガイドラインから逸脱した治療をおこなうことになりますが、その治療法をどうして選択したのかを説明できればいいんです。

     

    しかし、その説明の根拠が、個人の経験談や患者さんの体験談といった薄弱なものではダメということです。

     

    基礎医学にもとづいた考えや数値化されたものを、しっかり準備しておきましょうということですね。

     

     

    【資料】

    (1)日経メディカル『ガイドラインを引用する訴訟が急増しています』

    (2)消費者庁『打消し表示に関する実態調査報告書』

     

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