この記事を読むのに必要な時間は約 18 分です。

    忙しい人のための要約
    臨床実習の指導者に求めるのは、技術もありますが、人柄・性格こそがもっと大切だと思います。いくら技術があっても、学生を見くだして、ハラスメントをおこなうような人間は指導者失格です。しかし、そこを見抜くことは難しいので、協会や県士会に駆けこみ寺を設けてみるのはどうでしょうか?

     

     

    ◆はじめに

     

    医療職には、臨床実習が必須になっています。

     

    もちろん、理学療法士・作業療法士にも長期の臨床実習があります。

     

    しかし、この実習が多くの問題を抱えているようです。いわゆるブラックと呼ばれているようなんですね。

     

    今回は理学療法士・作業療法士の臨床実習について、考察してみました。

     

    スポンサーリンク

     

    ◆理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会

     

    2017年6月29日に、厚生労働省で『第一回理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会』が開かれました。

     

    この検討会は、理学療法士・作業療法士の養成施設数が増えたことや高齢化といった環境の変化をうけて、教育カリキュラムを見直そうというものです。

     

    検討内容は、

    ①総単位の見直しについて

    ②臨床実習の在り方について

    ③専任教員の要件について

    が主でした。

     

    今回は、「②臨床実習の在り方」の改正案をみながら、いまの実習の問題点をふりかえり、打開策をひとつ考えてみました。

     

     

    ◆臨床実習の新しい在り方について

     

    まず、臨床実習では、指導者が大きく関係してきます。指導場面では、学生と指導者のマンツーマンになることも多いですからね。

     

    今回の検討会では、指導者になるための要件を、変えようという流れがみられます。

     

    (1)臨床実習指導者の要件

    (現行)

    実習指導者は、理学療法士養成施設においては、理学療法に関し相当の経験を有する理学療法士、作業療法士施設においては、作業療法に関し相当の経験を有する作業療法士とし、かつ、そのうち少なくとも1人は免許を受けた後3年以上業務に従事した者であること。

     

    (案)

    実習指導者は、理学療法士養成施設においては、理学療法に関し相当の経験を有する理学療法士、作業療法士施設においては、作業療法に関し相当の経験を有する作業療法士とし、免許を受けた後5年以上業務に従事した者であり、かつ必要な研修を受けたものであること。

     

    3年を5年に延長し、必要な研修を受けたものが指導者になれるようにするようです。

     

    必要な研修とはなんぞや?と思い、資料を調べてみますと、以下のような記載がありました。

     

    ■主な臨床実習に関する意見

    (臨床実習指導者)

    〇臨床実習指導者の指導力にばらつきがある

    2日程度で良いので、評価・総合実習の指導者には、教育心理や人権、実習指導方法に関する研修を課すべき

     

     

    いろいろ思うことはありますが、それを述べる前に、ブラックな臨床実習の具体例を見ていこうと思います。

     

     

    ◆ブラックな臨床実習の体験談

     

    まとめサイトに『理学療法士、作業療法士の学生時代の臨床実習がブラックすぎる』というものがありました。

     

    ここから紹介させてもらおうと思います(引用部は四角線で囲みあり。一部、脱字など筆者により加筆修正しています)。

     

     

    1.大量のレポートと眠れない日々

    帰れば毎日課題に終われ、本当に眠る暇がありません。毎日の報告ノートもあるし、レポートも山のようにあります。

    大袈裟…と思われるかもしれませんが、土曜に月曜締め切りでレポート(30~50枚)の課題を出されることなんてザラにあります。

    やっとの思いで出しても赤ペンだらけで返され、また直しに追われ…

    「この仕事に向いてない」

    「このままじゃ不合格だな」

    「帰れ」

    …など言う人もいます。

    私も行きましたが、睡眠時間は平均で1~2時間、3~4時間寝れるとすごく嬉しかったです。連日完徹とか普通にあります。

    ベッドに寝ると起きられないので、基本机に突っ伏して寝ました。眠れないのが1番つらかったです。

    そんな状態が長い実習では2ヶ月続きます。
    学費が高いのも、親に迷惑かけてるのもわかってるんですが、だんだん追い詰められてくるんです;;

     

    このレベルはざらにあるような気がします。

    この人の場合は、レポート週末締め切りでしたが、わたしは平日でしたね(泣)朝の5時までかかりましたが、完成することができずに、1時間仮眠して病院に行ったら怒られましたね。

     

     

    2.陰湿で嫌味な指導方法

    このたび、評価実習を終え、心身ともにボロボロになり、帰ってきました…

    『身』のつらさは、あたりまえのことと思い、ぜんぜん頑張れたのですが…『心』のほうが…

    なぜ、実習生に辛く当たるのでしょう…

    厳しく指導してくださるなら、頑張れます。でも…
    訓練見学中に1回、しかもチョットなでるていど…
    それを見て、バイザーを通して、「足を掻いてた」と指摘…

    訓練見学している私の横を通る時は、ジ~っとなめるように私を見ながら通り過ぎ…

    検査などもできていたなら、そう言ってくれればいいのに、「今は、そのやりかたでいいんかな…。」
    と、最後に鼻で笑うように…

    おまけに、現役ではない私に対して、「社会人からスタートしてるってことは、遅れてる、マイナスからのスタートってこと覚えといて」などと言い放って帰って行ったり・・・

     

    足をかいたら怒られたって、いつの時代の話なんでしょうか?

    また、検査の指摘も陰湿ですね。○○したら、もっといいんじゃないかな?でいいような気がしますが。

     

     

    3.学生の将来や人格を否定する

    特に人格否定まがいの質問、説教・・

    「なんでPTやろうとした?」

    「おまえPTむいてねえよ」

    「お前が仮によそで合格してPTになっても俺らの前でPTを名乗るのはゆるさんからな」などなど・・

     

    何様なんでしょうか?(苦笑)

    学生にたいしてこんな風に言っている理学療法士のほうが、向いてないような気もしますが…。

     

     

    4.学生を見捨てる学校

    「毎日のレポート10枚以上」「肉体的暴力」「精神的暴言」「人格否定」等、実習中は色々ありました。

    学校の教員においては、これら系列病院の実習中の出来事について、訴えれるものなら訴えてみろと言った暴言をはかれ、それ以降、重要な連絡事項も私だけメールされませんでした。

     

    バイザーも学校も助けてくれないとなると、学生はだれに頼ればいいんでしょうか。

    教員だからといって、みんながみんな善良とはかぎりません。下劣な教師もかならずいます。

     

     

    5.レジュメはゴミ箱へ、心身症様症状

    ・通いのバスは乗るたびに吐き気がしました。

    ・一人暮らし経験がなかったのでご飯が作れませんでした。

    ・男ですが、怒られているときに勝手に涙が出てきて女性バイザーに「あのさ○○(呼び捨て)泣くんならトイレ行って泣いてこい」と怒られました。

    ・徹夜で仕上げたレジュメを投げ捨てられました。

     

    寝ないでにつくったレポートを捨てる、、、。私も似たような体験談を実際に聞いたことがあります。指導者は、いったいどういう精神構造なのか、まったくわかりません。

    いかなる理由があろうと、こういうことをする人間を、指導者にしてはいけないと思いますね。

     

     

    6.自傷行為

    友人Aもどうやら僕と同様の寮住まいで、実習で怒られ、フィードバックで残され、眠れず、精神的に追い詰められたらしく、その日、無断欠席したA。

    ドアを叩いても音沙汰の無く、携帯を鳴らすと部屋から着信音が鳴ったことで友人Aの異変を察したもう一人の同じ学校の実習生が病院に報告して、部屋の合鍵でドアを開けたらリスカして部屋で体育坐りしている友人Aを発見した。

     

    こうなってくると、精神的な疾患の診断がつきそうなもんですね。慰謝料や傷害罪?といった刑事罰にもつながるような気もします。

     

     

     

    ◆経験年数で人柄・性格は変わらない

     

    ブラックな実習の一部を見てきましたが、ひどいもんですね。これらの問題って、指導者に人としての基本的な部分が欠けてる気がするのですが…。

     

    わたしの考えとしては、実習で問題となるのは指導者の技術よりも、人柄・性格だと思っています。

     

     

    そもそも臨床実習で一人前になるなんて不可能だと思います。

     

    どんな優れた指導者でも、8週間~10週間の実習で、学生を一人前にすることなんてできません。

     

    「医は仁術なり」という言葉があるように、指導者に求めるべきは、3割の技術と7割の人柄・性格ではないでしょうか。しかし、会議では、経験年数ばかりが俎上に載っています。

     

    経験年数をあげると、技術はたしかにあがるでしょう。しかし、人柄・性格は変わらないと思います。

     

    臨床心理学者の小沢牧子さんは、『「心の専門家」はいらない』のなかで、いかのように述べています。

     

    老いを特別なものに仕立てすぎるのではないかと思う。それは正常な青年期・壮年期が人の完成型であるという、近代発達観の産物だ。人はみなそれぞれに、これまで生きてきたように老いていくだけで、それ以上でもそれ以下でもない。

    (中略)

    いろんな人がいて、その人がたまたま年齢を重ねているのだ。

     

    これは高齢者に関しての指摘ですが、若年者についてもおなじようにいえると思います。

     

    経験や年齢をかさねても、人格者になることはほぼありません。もともとの性格のまま、経験や年齢が積みかさなるだけなんです。

     

    例示したような、学生にたいして非道なことをおこなう人間が、経験年数が2年増えたからといって、更生するとは思えません。

     

    下劣な指導者は、経験年数が増えても下劣なままでしょう。

     

     

     

    ◆お粗末な研修案

     

    そして、案につけ加えられた必須の研修への意見も、お粗末だと思いました。

     

    2日程度で良いので、評価・総合実習の指導者には、教育心理や人権、実習指導方法に関する研修を課すべき。

     

    こんなのは時間のムダなのでやめましょう。

     

    2日間、下劣な人間性をもっている指導者に、「学生にも人権がありまして、それを蹂躙することは…」なんて言っても、なんの効果もありません。

     

    変わると思っているのなら、人間をなめているとしか言いようがありません。人間はそんな簡単に変わりませんし、変われるものでもありません。

     

    そう考えると、たまたま下劣な指導者にあたってしまった学生が不憫でなりません。

     

    学校に相談したらいいよ、なんていう人もいますが、学校は学生を助けてはくれないことが多いとおもいます。

     

    なぜなら、養成施設が爆発的に増えて、実習先を探すのにも一苦労という養成施設が多いからです。

     

    資料(2)より引用

     

    もし、文句を言えば、つぎから実習をうけいれてくれなくなる可能性があります。そうなると、必然的に学生を責めることになります。

     

    「態度が悪いんじゃないか?」

    「もっとバイザーとコミュニケーションとって」

    「実習は厳しいもんだ」

     

    こうやって、四面楚歌、逃げ場がなくなり、学生は身も心も壊してしまうんですね。

     

     

     

    ◆提案:協会・県士会(第三者機関)に駆けこみ寺を作る

     

    ゆえに、わたしは協会や県士会といった第三者機関に駆けこみ寺をつくるのがいいと思うわけです。

     

    指導者も学校も助けてくれないなら、理学療法士協会や県士会が助ければいい。学生は未来の理学療法士を支えてくれる宝ですからね。

     

    電話でもメールでもいいから、とにかく助けが必要になったら、そこに連絡する。第三者がはいれば、学校も保身的な対応が難しくなります。

     

     

    また、タイミングがよく、改正案では実習施設についても触れられています。

     

    (現行)

    実習施設のうち少なくとも1か所は養成施設に近接していることが望ましいこと。

     

    (案)

    養成施設は、自ら実習施設を置くことが望ましい。実習施設を置かない場合にあっては、契約により他の施設を確保しなければならない。そのうち少なくとも1か所の実習施設は養成施設に近接していること。

     

    駆けこみ寺に連絡したら、その施設で実習をつづけるのは難しくなると思うので、自らの実習施設(または契約施設)で残りの実習期間をすごしたらいいと思います。

     

    ほかの施設だとなかなか、患者さんの協力が得にくかったり、期間的にも難しかったりしますからね。

     

    また、告発された指導者に関しては、きちんと調査を実施します。そして、問題があったと認められれば、指導者に就くことは禁止です。ほかの学生がきたときも、見学などをふくめて、交流を禁止にすべきです。

     

     

    ◆おわりに

     

    以上、理学療法士・作業療法士のブラックな臨床実習の事例を見てきて、学生をまもるための提案をさせてもらいました。

     

    ほかにも、いろいろ手はあると思います。それにしても、現行の検討会で決まっていることは、ほぼ無意味に近いように思えます。

     

     

    指導者にもとめるべきは、技術ではなく、学生が実習を無事におえることができるような人柄・性格でしょう。

     

    技術が不必要というわけではありませんが、技術ばかりをもとめている検討会の方針には、やや首をかしげてしまいます。

     

    みなさんはどう思われますでしょうか?

     

    【資料】

    (1)「心の専門家」はいらない、小沢牧子、洋泉社、2002

    (2)第1回 理学療法士・作業療法士学校養成施設カリキュラム等改善検討会(資料)

     

    スポンサーリンク

     

     

    Pocket
    LINEで送る