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急性腰痛と危険因子ガイド~慢性化させる治療家の特徴~

忙しい人のための要約
腰痛患者を慢性化させる治療者の特徴は、①構造異常モデルに固執している、②自己管理のアドバイスができない、③機能回復の介入を行わない、④壊れた部品仮説を信じこませる、の4つです。注意しましょう。

 

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◆はじめに

日本人の30~50%は腰痛を訴えており、日本人が訴えている症状のなかで、つねに上位にあります(参照:腰痛の基礎知識(定義・疫学))。

 

ニュージーランド事故補償公団から出されている『急性腰痛と危険因子ガイド』(以下、ガイド)には、腰痛を慢性化させる治療家の特徴が書かれています。

 

今回は、そのことについて書いていきたいと思います。

 

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目次

◆慢性化させる治療者の4つの特徴

慢性化させる治療家の特徴は、以下のようになっています。

 

これからひとつずつ見ていきたいと思います。

 

1.構造異常モデルの治療をしている

痛みに対する視野の狭い医学モデルに固執し、長期的治療プランもないまま一時的な鎮痛処置に重点を置く。

『急性腰痛と危険因子ガイド』

 

ガイドには「痛みに対する視野の狭い医学モデルに固執」とあります。視野の狭い医学モデルとは、生物医学モデル(構造異常医学)といえます。

 

生物医学モデル(構造異常医学)とは、痛みの原因が特定の原因、たとえば「筋肉や骨といったもの(器質的構造)の異常だけ」という考えのことです。

 

しかし、1970年代には新しい考えが提唱されており、それが「生物・心理・社会的医学モデル」というものです。

 

慢性の痛みには、心理的・社会的な問題も複雑にからみあっていて、ただ構造(生物のなかでも小さな領域)だけではないということですね。

 

これは腰痛にかぎったことではないと思います。人間は生きていますから、構造だけで説明できないことが多くあります。そういった構造以外の部分も、できる範囲で介入していくのが大切です。

 

資料(2)参照作成

 

あとガイドには、「一次的な鎮痛処置に重点を置く」ことがよろしくないとされています。

 

長期的な治療のなかで、一時的な処置をすることは問題ないとおもいます。しかし、姑息(場当たり的)な対処になってしまうのが、よろしくないということでしょう。

 

 

2.自己管理のアドバイスができない

セルフケアの意欲を失わせ、自己管理に関する指導ができない。

『急性腰痛と危険因子ガイド』

 

アドバイスについて簡単に書いておきます。

 

①安心と勇気をあたえる

激しい痛みのある患者は、腰痛の悪化や慢性化を恐れている場合がある。医療従事者が説明する際は、確信に満ちた態度で患者を安心させる必要があり、不安をあおるようなレッテル(病名など)を用いるべきではない。

患者にとって、腰痛の予後はきわめて良好だと告げられることは重要であり、実際にほとんどの患者は完全に回復する。

『急性腰痛と危険因子ガイド』

 

まず、患者さんは急性腰痛などになると、精神的に落ちこみますわたしの母親も急性腰痛になったとき、それは言葉にできないくらい落ち込んでました。

 

「もしかしたら、腰痛は治らないんじゃないのか、変な病気なんじゃないのか」といった不安と恐怖などを感じるんですね。

 

まずは、それを取り払い、安心と勇気を与えることが大切です。

 

急性腰痛に関しては、90%が6週間以内に自然治癒するともいわれてますから、そういうことをきちんと説明するのも大切ですよね(3)。

 

もちろん、それが安全な腰痛(グリーンライト)であることを、しっかりと評価したうえでのことです(参照:腰痛の基礎知識~原因(フラッグ)について~)。

 

 

②安静を避けさせる

安静は回復や職場復帰を遅らせることが報告されています(4)。

 

 

資料(4)より作成

 

安静の害については、『3週間の安静は40年分の加齢と同じ 』を参照にしてください。

 

また、安静により、骨自体への負荷が増加していることが示唆されています。過度な安静はよろしくありませんね(参照:腰痛が安静で改善しないメカニズム)。

 

特別な場合をのぞいて、安静にメリットはありません。安易な安静はさけたほうがいいですね。

 

 

③自分で治す意識をもたせる

重要なのは、患者の自主性と自己管理を促し、過度な医療化を避けることである。そのためには、明確な到達目標とそこへ至るまでの道のりについて患者と話し合い、自らの力で歩んで行けるようにプランを立てる必要がある。

『急性腰痛と危険因子ガイド』

 

リハビリテーションには、患者自身の意思が非常に重要になってきます。これは、リハビリテーションの父と呼ばれるラスク博士も言っています(参照:リハビリテーションの父 ハワード・ラスク博士)。

 

1980年代後半ころからインフォームド・コンセント(説明と同意)の概念がもちいられるようになりました。

 

インフォームド・コンセントというのは、「医療者が好き勝手に患者さんの治療をしてはならない。きちんとどのように治療するかを説明し、同意を得ましょう(もっと正確にいうと、医療者が病気や検査や治療についての正しい情報を患者さんに提供し、患者さんがこれらを正しく理解したうえで、自身が受ける医療の内容を決定する過程)」ということです。

 

 

今からみればあたりまえのことなんですが、当時の医療界ではパターナリズムがメインで、おざなりなっていたようです。

 

しかし、近年ではそれがさらに発展して、シェアードディシジョンメイキング(SDM)という考えかたにシフトしています。

 

SDMは、医療者が一方的に治療方針を決めるのではなく、患者と医療者がともに治療を決定する方法です。

 

 

患者の参加なき医療は、古い医療なんですね。患者さんにも自分から治療をどうしていきたいかを決めるように、うながしていくことも大切ですね。

 

 

④ストレスの対処法を伝える

ストレスというのは、ハンス・セリエが発見した概念です。

 

セリエは、ストレス自体は悪いモノではないと考えていました。情動的なストレスが長引くことにより、そのストレスにたいして前向きに対処できないときに生じる苦痛こそが有害であると考えていたのです。

 

たしかに、ノンストレスな人生なんてありえません。生きているだけでも、ストレスなのですから。そういう意味では、ストレスをいかように対処することができるか、というのが重要になってくるのは自明ですね。

 

ストレスによって、とくにつぎの3つの異常が生じるといわれています(6)。

①神経伝達物質バランスの異常

②脳の記憶に関する機能の妨害

③ホルモンバランスの異常

これらは体全体に波及するものばかりですね。ストレスの対処はかかせません。

 

ストレス解消に関しては以下の本がおすすめです。

 

エビデンスにもとづくストレス解消法を100個ものせてくれています。また、各方法を「手軽さ・即効性・効率の高さ・持続時間・科学的な信頼度」という5つのポイントで評価してくれているので、自分に適した方法を探しやすくなっています。

 

 

3.機能回復の介入を行わない

患者を身体障害者と決めつけ、機能回復へ向けた介入を行なわない。

『急性腰痛と危険因子ガイド』

 

腰痛をはじめ、多くの疾患には機能低下が根底にあるとおもいます。

 

それは、筋骨格系の機能低下のみではなく、自律神経や脳、ホルモン、内臓機能など多岐にわたります。その根本にあるのが、ホメオスタシスでしょう。

 

ホメオスタシスというのは、恒常性のことで、自然治癒力などともよばれています。環境が変わっても、体内を一定に維持できるような緻密なシステムの総称です。

 

たとえば、変形性膝関節症(膝OA)は高齢者によくみられる疾患です。しかし、すべての高齢者が膝OAになっているわけではありません。

 

そこには代謝異常(糖尿病など)といった、ホメオスタシスを阻害するなんらかの因子があると考えられます。整形疾患に代謝異常がつよく関係していることは、『リハビリ栄養を診れない理学療法士は時代遅れになる』・『肩関節周囲炎(五十肩)患者の糖尿病を確認してますか?』などに書いています。

 

しっかりと多角的な機能回復をおこなうことは、大切ですね。

 

 

4.壊れた部品仮説を信じ込ませる

過剰な検査を行ない、「壊れた部品仮説」を信じ込ませようとする。

『急性腰痛と危険因子ガイド』

 

これは、骨の変形やヘルニアといった異常のせいで、腰痛がおきてますよということを信じ込ませてはダメということです。

 

これは、最初に述べた構造異常モデルに共通するところがありますね。ヘルニアや骨の変形が、腰痛に無関係であることはよく知られていると思います。

 

そうなの?と思った人は、以下の本をオススメします。

 

 

人間の体は機械ではありません。各部位と各部位が、非常に複雑に絡みあっています。

 

腰痛だからといって、腰に原因があるとはかぎりません。さまざまな代償の結果として、腰に症状が出現しているだけかもしれません。

 

変形がある→だから治らない、ということを信じ込ませてしまうと、患者さんはその迷路から脱出することがむずかしくなります。

 

「痛いのよね」という患者さんに、

「骨が変形してるから仕方ないですよ」

「ヘルニアがありますからね」

と安易に言ってしまう治療者は、患者さんを知らぬうちに、慢性化させてしまっている可能性があります。

 

 

◆腰痛以外にも応用できる

いままで挙げてきた4つの特徴は、腰痛以外の疾患にも応用できると思います。

 

大切なのは、「一部に執着するな」ということだと思います。

 

膝が痛い→膝が悪い、肩が痛い→肩が悪い、と考えがちです。もちろん、痛い部位になにかしらの異常が生じているのはありますが、それだけではないんですよね。

 

メカニカルストレスだけではなく、不安や怒りといった感情のメンタルストレスのせいかもしれないし、その裏には内向的な性格や職場の人間関係などが絡んでいる可能性もあります。

 

一部にとらわれず、全体をみながら、患者さんを慢性化させぬように心がけたいですね。

 

慢性疼痛に関しては、以下の本がわかりやすくておすすめです。

 

【資料】

(1)急性腰痛と危険因子ガイド、ニュージーランド事故補償公団、春秋社、2010

(2)痛覚のふしぎ、伊藤誠二、講談社、2017

(3)Back pain and sciatica.[PMID:2961994]

(4)The treatment of acute low back pain-bed rest, exercises, or ordinary activity?[PMID:7823996]

(5)PT・OT・STのための診療ガイドライン活用法、中山健夫監修、医歯薬出版、2017

(6)革命アンチエイジング、ロナルド・クラッツら・岩本俊彦監訳、西村書店、2010

 

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