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わかりやすい「ケトン体」講座~ケトン体危険は神話~

忙しい人のための要約
ケトン体は危険な物質ではなく、人体のエネルギー源であり、必要なものです。ケトアシドーシスとケトーシス(生理的なケトン体増加)は原因・過程が異なっています。糖尿病ケトアシドーシスはインスリン作用不足による全身代謝の異常により起こるものであり、ケトン体は結果として増加しているにすぎません。またケトン体は脳の栄養になることもわかっています。

 

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糖質制限ダイエット(低炭水化物ダイエット)などがテレビなどで取り上げられるようになり、ケトン体という言葉を聞くことが増えたのではないかと思います。

 

医療者であれば、ケトアシドーシスという言葉などでも馴染みが深いので、知っている人も多いと思います。

 

しかし、ケトン体ってなに?とあらためて訊かれると、あんがいパッと答えにくいもののような気がします。今回は、ケトン体をなるべくわかりやすくまとめてみました。

 

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目次

◆ケトン体とは

太郎
ケトン体ってなんっすか?
SGM
まずは辞典を見てみましょうか。

 

ケトン体[ketone body]

アセトン体ともいう。アセト酢酸、その代謝物である3-ヒドロキシ酪酸、およびそのアセトンの総称。

糖が生体に十分に供給されている時、クエン酸回路は円滑に回転するので脂肪酸の分解により生じる多量のアセチルCoAは速やかに代謝される。

しかし、飢餓あるいは糖尿病では糖の供給あるいは利用が不十分となるので、クエン酸回路の回転率は低下し、アセチルCoAはクエン酸回路だけでは処理しきれなくなる。その結果アセチルCoAは他の経路で処理されることとなる。

(生化学辞典)

太郎
なにがなんだかよくわからないっす。
SGM
もう少しわかりやすく説明しますと……

 

ケトン体 ヒドロキシ酪酸 アセト酢酸 アセトン

 

ケトン体とは、脂肪酸の分解・合成によって得られる物質の総称で、β-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンからなっています。

 

特別な物質ではなく、「脂肪酸→β酸化(脂肪酸分解)→アセチルCoA→ケトン体」という経路により、日常的に作られているものです。そして、このケトン体は人体のエネルギー源として利用されています。

太郎
ケトン体は、体のエネルギー源で安全な物質ということっすね。
SGM
そういうことですね。胎児は高ケトン状態であることがわかっています。赤ちゃんでさえも害がないほど、安全なものなんですね。

 

 

◆糖質の生理学

花子
でも、ケトン体って危険なものだって聞いたことがあるわ。
SGM
それは糖尿病ケトアシドーシスのことでしょうね。
花子
糖尿病ケトアシドーシス?
SGM
これを理解するためには、糖質やケトン体の代謝について理解しないといけないですね。まずは糖質から見ていきましょう。

 

ケトン体 解糖系

 

まず多くの人は、エネルギー源を炭水化物(糖質)から摂取しています。糖質を分解していくとグルコースというものになります。

 

このグルコースは解糖系という代謝を経て、ピルビン酸という物質になります。このピルビン酸がミトコンドリアのなかで、アセチルCoAという物質に変わり、それがTCA回路という代謝を経てエネルギーであるATPを作り出します。

花子
つまり、
糖質
→グルコース
→ピルビン酸
→アセチルCoA
→TCA回路
→ATP(エネルギー)
ってこと?
SGM
そういうことですね。糖質は白ご飯やパン、うどんやラーメンなどの麺類など主食に多く含まれていますから、多くの人は糖質を摂って、エネルギーにしているわけですね。

 

 

◆ケトン体の生理学

太郎
じゃあ、糖質をたくさん摂ればいいってことっすね。
SGM
そうでもないんです。糖質は血糖値を急激に上げることで、人体に多くの悪影響があることがわかってきているんです。
太郎
まじっすか!?
SGM
まじっす。だから、糖質制限が脚光を浴びているんですね。
太郎
なるほどっす。でも、糖質がエネルギーを作るんなら、糖質を制限しちゃうとエネルギー不足になるんじゃないっすか?
SGM
そうでもないんですね。糖質がなくても、人体には新たなエネルギー源を作れるような機能が備わっているんです。

 

 

糖質制限により糖質が不足すると、さきほどの糖質の代謝経路ではエネルギーが作れなくなります。

 

糖質が不足すると、人体は「脂肪」をエネルギー源に利用しようとします。主に脂肪の代謝に関わっているのは肝臓です。

 

ケトン体 代謝 脂肪

 

では、どのように代謝されていくのか見ていきます。

 

中性脂肪は、リパーゼ(脂肪分解酵素)によりグリセロールと脂肪酸に分解されます。

脂肪酸は肝細胞の細胞質でアシルCoAに変換され、ミトコンドリア内でβ酸化(脂肪酸分解)を受けてアセチルCoAになります。このアセチルCoAが糖質の時と同じようにTCA回路に入り、ATPを作り出します。

太郎
これで一件落着っすね。
SGM
いや、このアセチルCoAを別の物質に変えて、全身に回さないといけないんですね。
太郎
別の物質っすか?
SGM
そう。それがケトン体なんです。

 

ケトン体 脂肪酸 代謝

 

ケトン体は水溶性であるため、特別なタンパク質などの運搬物質がなくても、血液にのって全身に効率よく運ばれることができます。

 

そして、全身の細胞内に入り、そこでアセチルCoAに戻され、TCA回路で代謝されエネルギーになることができます。

SGM
ちなみに、ケトン体を作っている肝臓自体はケトン体を利用することができないんですね。
太郎
なんでっすか?
SGM
肝臓は全身に回すためのケトン体を作るための工場なので、作ったケトン体を自身で使わないようにしてるんですね。つまみ食いばかりしてたら、出来上がる料理も減ってしまうでしょ?
太郎
なるほどっす。じゃあ、肝臓はなにをエネルギーにしてるっすか?
SGM
肝臓には糖新生という機能があるんですね。
太郎
糖新生?
SGM
簡単にいえば、糖を作ることができるんですね。だから、ケトン体が使えない肝臓と赤血球はこの糖新生で作られる糖をエネルギーにしてるんですね。

 

 

◆ケトアシドーシスとケトーシス

花子
でもケトン体は人体に危険なものなんでしょ?
どうなのよ?
SGM
そんなことありませんよ。ケトン体は安全なものです。ケトン体が危険というのは、知識不足から生まれた誤解によるものだと思います。
花子
知識不足からの誤解?

 

従来、ケトン体であるβ‐ヒドロキシ酪酸とアセト酢酸は強い酸性のため、ケトン体が増加する「ケトーシス(高ケトン血症)」状態になると、血液や体液のpHが酸性に傾くといわれていました。体内のpHが酸性に傾いた状態を「アシドーシス」といいます。

 

つまり、ケトン体増加→アシドーシスという流れが定説だったのです。ゆえに、ケトン体とアシドーシスが合わさって、ケトアシドーシスという名前になったわけです。

 

しかし、近年の研究によりケトン体がアシドーシスの原因というのは誤っていることが指摘されています。ケトン体研究の第一人者である宗田哲男医師の著書より引用します。

(ケトアシドーシスの)本当の理由は、「ケトーシス」(高ケトン血症)ではなくて、「高血糖」なのです。

(中略)私のところにやってきた糖質制限の妊婦を見れば明らかなように、ケトーシス(高ケトン血症)は、糖質をとっていないときには普通のことで、そのことが問題なのではなく、「高血糖を起こしてしまう」ことだけが問題なのです。

(ケトン体が人類を救う)

 

米国の栄養学の教科書にも以下のように書かれています。

高血糖症により糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis[DKA])が生じることがあるが、これは炭水化物、タンパク質、脂肪の代謝に重度の障害を来すもので、生死にかかわるが回復可能な合併症である。DKAは常にグルコース利用のためのインスリンが不足する結果生じる。

(栄養学と食事療法大辞典)

花子
つまり、ケトン体が原因でケトアシドーシスが起こっているわけじゃなくて、高血糖がケトアシドーシスの本当の原因ってこと?
SGM
そういうことですね。ケトアシドーシスの原因は高血糖なんです。

 

宗田医師は、ケトン体はアシドーシスに関係していないため、糖尿病ケトアシドーシスではなく、糖尿病アシドーシスが正しい言葉であるとしています。本記事では、一般的に通用しているケトアシドーシスを使用しています。

花子
でも、糖尿病アシドーシスになるとケトン体は増えるから、やっぱり危険なものなんじゃないの?
SGM
いいえ。そんなことはありませんよ。
花子
なんでそう言えるの?
SGM
糖尿病によるケトアシドーシスと生理的な高ケトン体状態であるケトーシスのケトン体の生成過程を見ていけばわかりますよ。

 

 

◆ケトン体は危険なものではない

糖質制限の第一人者である江部康二医師の著書より引用します。

糖尿病ケトアシドーシスの本質的原因はケトン体の増加ではなく、インスリン作用の極端な欠乏です。

インスリン作用がひどく欠乏して人体の代謝が大きく損なわれた病態があって、その結果としてケトン体が増加しているのです。

つまりインスリン作用の極端な欠乏という前提がなければ、糖尿病ケトアシドーシスを起こすことは決してありません。

(糖質制限食パーフェクトガイド)

花子
ということは、糖尿病みたいな代謝異常によるものでなければ、ケトン体が増えても大丈夫ってこと?
SGM
その通りです。

 

糖尿病ケトアシドーシスも糖質制限などによるケトーシスも、最終的にケトン体が増えることは同じですが、それまでの過程・原因が全く違うというわけです。

 

ケトン体が危険というのは、ケトアシドーシスとケトーシスを混同しているためにおきた誤解であり、神話なのです。

 

ケトアシドーシス ケトーシス 違い

 

たとえば、煙が上がっていたとします。

 

煙だけ見ると、なにか危険な事態が起こっていると思うかもしれません。たしかに火事のような危険な場合もあります。

 

しかし、焼き芋を焼いてるだけかもしれません。この煙がケトン体ということです。火事が糖尿病ケトアシドーシス、焼き芋がケトーシス(生理的なケトン体増加)です。

 

つまり、煙(ケトン体)だけ見て危険だとか言っても無意味ということです。原因をきちんと探らないといけません。

糖尿病ケトアシドーシスとケトーシス(生理的なケトン体増加)の違いを整理するとこうなります。

 

ケトアシドーシス ケトーシス 違い

SGM
糖尿病ケトアシドーシスは、インスリン作用が極端に低下したことを原因としたアシドーシスなわけですね。

 

 

◆ケトン体は脳の栄養になる

糖質制限反対派のなかには、糖質を摂取しないと脳の栄養が不足して、疲れやすくなるからダメだという論があります。

 

古い教科書を見てみますと、こういう記載があります(古いといっても2006年)。

 

脳組織はブドウ糖が唯一のエネルギー源であり、ブドウ糖の利用が障害されると酸素消費が減少し、神経細胞の機能が抑制されると考えられる。

(臨床神経内科学)

花子
じゃあ、脳のためにも糖質もとらないといけないんだね。
SGM
それは間違ってますね。脳の栄養素は糖質だけではないことがわかっています。ケトン体も脳の栄養になるんですね。
花子
そうなの!?ケトン体ってすごいのね。

 

機能性医学の第一人者である斎藤糧三医師の著書を引用します。

これまで脳の神経細胞は糖質しか利用できないと言われていました。脳の神経細胞を養う血管には、余計なものが侵入しないように「血液脳関門(ブラッド・ブレイン・バリア、BBB)」と呼ばれる関所のような場所があります。脂肪酸はこの血液脳関門を通過できません。

(中略)現在では、β‐ヒドロキシ酪酸は血液脳関門を通過して脳の神経細胞のエネルギー源になっていることがわかっています。飢餓に近い栄養環境(厳密には糖質の枯渇)では、脳のエネルギー源の30%以上はβ‐ヒドロキシ酪酸によってまかなわれているのです。

(慢性病を根本から治す)

 

アメリカの栄養学の教科書にもこういった記載があります。

絶食への適応は、ケトンの産生に依存している。脳神経系にはグルコースが不可欠であるが、絶食中に血中ケトン濃度が上昇すると、ケトンをエネルギー源として利用する。

(栄養学と食事療法大辞典)

花子
脳の栄養は糖質だけっていうのは、古い知識なんだね。
SGM
そうです。医学は日々進歩していますから、常に新しい情報をアップデートしないといけません。以前の記事「EBMの超基礎知識」を参照にしてくださいね。

 

 

◆ケトン臭(アセトン臭)について

体内のケトン体が増えると、ケトン臭(アセトン臭)といわれる独特な臭気がするそうです。わたしは実際に嗅いだことがないので、どんなものかわかりません。

ネットや教科書には酸っぱいや果物みたいなと書かれていました。詳しい人がいたら、ぜひどんなものか教えていただけたらと思います。

太郎
どうして、そんな臭いがするっすか?
SGM
ケトン体はβ-ヒドロキシ酪酸、アセト酢酸、アセトンからなっていました。このうちのアセトンは呼気とともに排出されるんですね。

 

ケトン臭 アセトン臭

太郎
なるほどっす。アセトンが呼気に排出されるから臭いがするんっすね。
SGM
そういうことです。ケトン体が増えるとケトン臭がするのは、アセトンが呼気とともに排出されるからなんですね。
太郎
なるほどっす。
SGM
大まかにケトン体についてわかりましたか?
太郎・花子
はーい!

 

 

◆おすすめ書籍~ケトン体が人類を救う/宗田哲男~

SGM
ケトン体についておすすめの書籍はこれです!

 

 

【資料】

(1)生化学辞典第4版、今堀和友ら監修、東京化学同人、2007

(2)ケトン体が人類を救う、宗田哲男、光文社新書、2015

(3)栄養学と食事療法大辞典、キャスリーン・マハンら(香川靖雄ら)、ガイアブックス、2015

(4)糖質制限パーフェクトガイド、江部康二、東洋経済新報社、2013

(5)臨床神経内科学改訂5版、平山惠造監修、南山堂、2006

(6)慢性病を根本から治す、斎藤糧三、光文社新書、2015

(7)ブドウ糖を絶てばがん細胞は死滅する!、福田一典、彩図社、2013

 

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