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    忙しい人のための要約
    ダラススタディ(DBRTS)によれば、3週間の安静は40年分の加齢に匹敵するかもしれません。安静によるメリットはないという報告もあります。なるべく活動量を増やし、廃用を予防することが重要です。

     

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    ◆安静の悪影響

    安静といった長期臥床が身体に悪影響を与えているのは周知の事実です。安静→廃用症候群(生活不活発病)という流れですね。

     

    廃用症候群というのは、身体の不活動・不活発状態がもとで生じる二次的な障害発生を総称したものです。長期臥床により以下のような影響がでます。

     

    資料(1)より引用

     

     

    ◆ダラススタディ(DBRTS:1966年)

    安静臥床による研究は1940年ごろより出てきていますが、有名なのが1968年にSaltinらにより報告されたDBRTS(Dallas Bed Rest and Training Study)です(3)。

     

    これは19~21歳の健常な男性が対象で、3週間のベッド上安静臥床を行い、臥床前後で心肺機能を調査したものです。

     

    結果は以下のようになりました。

    ・ 最大酸素摂取量:平均28%低下(最も低下した人は48%)

    ・ 一回拍出量:平均104mlから74mlへ低下

     

    資料(2)より引用

     

    この3週間の臥床実験のあとに約8週間の運動を行い、心肺機能がどのように改善するかも報告しています。

     

    最大酸素摂取量(持久力・体力の指標)が臥床前のレベルに戻るには、最も早くい人で8日間、もっとも遅い人で43日間かかりました。

     

    若い健康な男性でも、安静の機能低下から回復するのに最大約1か月強かかることを考えると、高齢者の安静がハイリスクなのがわかりますね。

     

     

    ◆安静は加齢よりも危ない(1996年)

    アメリカのすごいところは、1966年に研究した5人を30年後に再結集させて、彼らの心肺機能を調査したのです。

     

    これらはMcGuireらによって報告されています(4・5)。この研究では、まず5人の身体機能を測定。そして6か月の運動を行わさせ、30年間の加齢による変化と運動の改善による効果を評価しています。

     

    結果は以下のようになりました。

     

    資料(4)より作成

     

    30年間の経過により、最大酸素摂取量はやや低下していましたが、それは若い時の20日間の安静ほどは低下していませんでした。

     

    また、6か月の運動により30年前と同じくらいにまで、改善が認められました。

     

    つまり、安静は加齢の機能低下よりも危ないということです。

     

    20日のベッド上臥床は、30年間という歳月を飛び越えてしまうほど、心肺機能を低下させてしまうのです。

     

    しかし、その低下した機能も、運動によって30年前の心肺機能まで改善することもわかりました。

     

     

    ◆3週間の安静は40歳の加齢と同じ(2006年)

    驚くべきことに、さきほどの1996年の再調査から10年後の2006年に、彼らを再々結集させ調査しました(6)。アメリカ人はすごいことをするものです。

     

    資料(6)より引用

     

    結果としては、50歳(1996年)から60歳(2006年)の間に大きく心肺機能が低下しており、2006年時の心肺機能は20歳の安静臥床後とほぼ同程度であったとしています。

     

    つまり、3週間の安静は、40年間という歳月(加齢)の機能低下とほぼ同じ効果(副作用)があるということです。

     

     

    ◆安静は麻薬、運動は万能薬

    和歌山県立医科大学の田島文博医師は、「安静は麻薬」であるといっています。これは寝ていると気持ちいいが、その間に身体は蝕まれているということです。たいして、「運動は万能薬」であるといっています。

     

    ダラススタディは対象者が少なく、けっして信頼性が高いものではありません。

     

    しかし、生理学的に考えても過度な安静にメリットはないでしょう。それらを調査した報告もあります。

     

     

    ◆安静にメリットはない

    1999年、Allenらが39の研究をレビューした報告によると、安静臥床によってなんらかの利益を認めたという研究はひとつもないとしています(7)。タイトルからして、安静は有害な治療であるといっています。

     

    座りすぎでも悪影響があることは以前に述べました(参照:『座りすぎが病を生む!座りすぎのリスクと対策について』)。

     

    無用の安静(廃用)には気をつけましょう!

     

    【資料】

    (1)美津島隆:用語としての廃用症候群.Mon Book Med Rehabil,72,1-4,2006.

    (2)中村健:臥床による影響.Mon Book Med Rehabil,72,19-25,2006.

    (3)Response to exercise after bed rest and after training.[PMID:5696236]

    (4)A 30-year follow-up of the Dallas Bedrest and Training Study: I. Effect of age on the cardiovascular response to exercise.[PMID:11560849]

    (5)A 30-year follow-up of the Dallas Bedrest and Training Study: II. Effect of age on cardiovascular adaptation to exercise training.[PMID:11560850]

    (6)A forty-year follow-up of the Dallas Bed Rest and Training study: the effect of age on the cardiovascular response to exercise in men.[PMID:19196908]

    (7)Bed rest: a potentially harmful treatment needing more careful evaluation.[PMID:10520630]

     

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